本を読んだら何か一つアクションを起こす
――現在は、海外で生活されているということもありますけれども、電子書籍を利用されていますか?
三宅裕之氏: 海外へ移る際、日本の家を引き払う時に、蔵書の電子化をしました。非常に便利だと思います。日本は住居コストが高いので、自宅に本をたくさん所有しているということは、コストが高くなることとイコールだと私は考えているんです。それをデータ化してしまえば、それだけのスペースがいらなくなるわけですから、非常に意味があります。
特に私みたいな海外に住んでいる者に関しては、自分の書籍が、特に自分でアンダーラインを引いたものや書き込みをしたものをまるまる全部スキャンしてもらえるのはありがたいです。今、中国に住んでいますが、Kindle自体のコンテンツが、まだ中国ではダウンロードできません。ですからダウンロードは日本に帰った時にして、Kindleに入れてしまえば、どこでも読めるので、そういう利用の仕方をしています。
――本の書き手としては、読者に対して、紙で読んでほしいとか、あるいは電子書籍で読んでほしいとか、何か特別な感情はありますか?
三宅裕之氏: 書き手の立場から読者に希望することは特にないですね。本は、どんな形態で読んでもいいと思っています。私自身は本を読む時に「ワンブック、ワンアクション」を大事にしていて、一つの本を読んだら何か一つ新しい行動をするよう心がけています。本を読む上でそれさえできればいいと思っていますので、書く時にも、読者が行動を起こしやすいような本を書いて、何か一つでも新しい行動につなげていただけたらうれしいなと思います。
――「ワンブック、ワンアクション」を心がければ、読んだ内容を行動に落とし込み、自分のものにできるということでしょうか?
三宅裕之氏: そうです。例えば、本を読んで書き込みをしたりすることがありますが、そこに何を書き込むべきかいうと、自分がその本を読んで「これをやろう」というアクションをぜひ書き込んでほしいと思います。私自身実際、書籍版で買った本に関しては、いつもそれをやっています。本の背表紙のところには自分がその本によって気づいたアクションを書くべきだと思っています。電子書籍で買ったものについても、同じようにメモ帳なりiPhoneなりに、その本を読んだ結果ひらめいたアクションを書いておくことをお勧めします。
――私が三宅さんの本を拝読した時、座る椅子を4つもって、4つの視点を持つことが大切だと書いてあったような気がするのですが、どういった内容でしたでしょうか?
三宅裕之氏: 自分自身を客観的に見る時や、問題解決の時でもいいのですが、立場を変えて物事を見ると、視野が広がって可能性が広がります。イメージを整理する際に、自分自身の立場から見る、相手の立場から見る、それ以外の第三者の立場から見る、さらに、そのすべてを含んだ全体の立場から見る、という4つを意識することで、物事が見えやすくなったり、行動が明確になったりします。
本を読んで起こすアクションは、どんなに小さいことでもいいですし、その本と直接関係ないことでもいいと思います。その本を読んだことがきっかけになって自分の中に新しいアクションが生まれて、それで人生が変わっていくということはよくあることだと思います。そういうふうに、私の本に限らず、本を読むことによって、読んだ方がどんな小さな行動でも新しい行動を起こすことができたらいいなと思います。
――三宅さんの本は、そんなふうに読者にいろんなきっかけを感じさせ、与えてくれると思いますが、本を執筆する時に、どんなことを心がけていらっしゃいますか?
三宅裕之氏: やはり読者が行動を起こしやすいように、具体的な行動のハードルを下げ、具体的な行動をよりわかりやすくするということを心がけています。考え方だけを述べる本って世の中にたくさんあると思いますが、そういう本では、読者が「考え方はわかったけども、結局行動できなかった」というパターンになることも多いかもしれませんので、私の本では、具体的にはこんな行動がありますよというものを、読んだ人にとってのハードルが極力下がるように、なおかつ、それを誰もができるようなわかりやすい形で示すように書くことを心がけています。例えば『毎朝1分で人生は変わる』という本にも書きましたが、実際にその場で1分あればできるような行動を、できるかぎり具体的に挙げるということが、読者が行動しやすくするために大事だと思いますね。
――これまで一貫してコミュニケーションをテーマにして、いろいろなものを統合して伝えられてきた三宅さんですが、今後の活動については、どのような展望を描いていらっしゃいますか?
三宅裕之氏: 中国においては、コミュニケーション教育というものと健康教育というものを融合したものを広めていきたいと思っています。個人の持っている能力がより引き出せるようなコンテンツを中国でもつくりたいのです。また、それを広める一方で、新たに中国にある中医学を学んでいくこともして、アウトプットとインプットの両方をやっていければと思います。そんな活動を通じて、コミュニケーションと健康とか、心身のホリスティックなアプローチをアジア発のコンテンツとして統合して、発信していきたいですね。中国の先にはシンガポールに行こうと思っていますが、5年から10年ぐらいのスパンで、アジア発のコンテンツで英語圏に広めていくことを目標にしていきます。
(聞き手:沖中幸太郎)
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