行動のきっかけは、悩みの中から見つけ出す
世の中は「自分を変える」「経営が変わる」といったノウハウにあふれています。しかし、そのノウハウを実践し、継続しなければ有益な成果には結びつきません。多くの人の心にある知識と実践の間の越え難い「壁」に着目するのが、「習慣化コンサルタント」の古川武士さんです。良い習慣を身に付けるための企業研修やセミナー、本の執筆などへかける想い、習慣化を自身のブランドとした経緯等をお聞きし、ビジネスパーソンが「壁」を越えるためのヒントを探りました。
キャリアのスタートはIT業界
――早速ですが、近況と業務のご紹介をいただけますでしょうか?
古川武士氏: 僕のミッションは、「続ける」ということを、世の中のみんなができるようにすることです。やることは分かっているし、成功法則の本もいくらでもあるが続かない、ということがネックになっていて、例えば企業研修でコミュニケーションの研修をやったはいいけど、職場に戻るといつもの毎日に戻ってしまう。そういった人たちに最適なソリューションを提供することは社会的にも意味があると思っています。今まで、そういうものを専門にやっているという人がいなくて、習慣化コンサルタントを名乗ってみると「習慣化って大切ですよね」と皆が共感してくれます。良い習慣を発信している方はたくさんいらっしゃいますが、それをどうすれば続けられるのかということだけにフォーカスすれば、1つの方向ができると思っています。
――古川さんご自身のキャリア形成についてお聞きします。元々はIT業界にいらっしゃったそうですね。
古川武士氏: 僕は大阪出身で、社会人になってから配属で東京に出てきました。就職したのは2000年の就職氷河期で、大企業に入りたかったのですが、なかなか決まらず、CSKフィールドサービスというITの会社の内定をようやく勝ち取りました。PCの保守などのサービスをしている会社で、頑張ろうと思っていたのですが、そこからが問題でした。採用してくれた社長は、倒産した三洋証券系出身で、積極採用される経営をされており、その年も100名の会社で20名採用していたのですが、その社長が急死されたんです。8月ぐらいに内定をもらい、10月に内定式をしたのですが、新社長が、社内で抱えられるのはせいぜい7、8名ぐらいだろうということで、入社する2ヶ月前の2月に出向してくれと言われました。
――出向先はどのような職場だったのでしょうか?
古川武士氏: PCの技術系の人たちはグループ会社の中でも上のレベルのサービスをやっている会社に出向したりしたので、それはそれでハッピーだったのですが、僕は営業だったので、すぐ何かできるわけじゃない。グループ会社にパソコンショップのTゾーンという会社があり、秋葉原でパソコンの店頭販売をやることになり、「えっ?それは話が…」といった感じでした。
秋葉原には色々な店舗があったのですけが、人事に5人くらい連れられて、「あなたはこっち」と、ドナドナのような感じで売られていくわけです(笑)。本店のようにPCの本体やソフトウェアを売るのならばなんとかなるのですが、僕の番になると、自分でPCを組み立てるパーツショップのような店舗に連れて行かれました。店ではマザーボードを買いに来る人から強烈な質問がたくさんくるのですが、僕は、当時はパソコンのことを全く知らず、何を言っているかすら分からない。しょうがないから表で「いらっしゃいませ」、「ありがとうございました」を8時間やるところからスタートしました。
販売員、営業として才能が開花
――その時はどのような気持ちでしたか?
古川武士氏: 小さい会社だけど、営業で頑張っていこうと思っていたのが全部壊れて、絶望感はありました。業績が赤字だから出向解除は未定、つまり無期限だったので、どうなるか分からないというのが一番辛かったです。ただ、2週間ぐらい研修期間があって、パーツショップはさすがに苦しいだろうということで、本店のフロアの担当になりました。そうすると、「パソコンを知りませんので教えてください」のような普通の人が来るので、毎日売っていると詳しくなり、楽しくなりました。フロアには、キャンペーンガールの女性がいたりしましたので、単純にテンションが上がるみたいなところもありました(笑)。売り上げ競争などもあり、棒グラフが貼り出さるので、その月から頑張って50人の中で2ヶ月連続ナンバー1でした。
――販売員として、何か光るものがあったのですね。
古川武士氏: 少なくとも燃えるものはありました。負けたくないという気持ちが芽生えて、お昼ご飯を抜いてでも売っていましたので、自分には営業魂のようなものがあるというのは自覚しました。10ヶ月ぐらいした時に本社に戻るという話になり、1年目の末ぐらいに戻りました。そこから新規開拓の営業、テレアポなどをやっていましたが、僕は何にもないところから作っていくのが大好きなので、今までつながりのないところから新しいお客さんを持ってくるという仕事はやはり肌に合っていました。中小企業だったので、自分がとってきたお客さんで会社の業績が変わるという喜びもある。営業マンになって1年後に、大きな契約がとれて、とても喜ばれて、充実していました。
大企業へ転職、組織の中で葛藤
――将来が開けてきた感覚がありましたか?
古川武士氏: それが、1年目は充実感があったものの、2年目になった時に、燃え尽き症候群と言うか、つまらなくなってしまったんです。エネルギーを出している時は突出して結果も出るし、1年目が終わった時も目標の230%ぐらい出して、売り上げも10年目や20年目の先輩もいる20人の営業マンの中で、2番目ぐらいだったんです。でも、次の目標を見つけられず、燃えるものがなかった。
ITの会社は、元請けがあって、末端でPCのサポートや保守などを請けるような構造があるんです。ゼネコンと電気屋さんや水道屋さんのような関係です。で、その末端をやっていたわけですが、ゼネコン的な仕事もやってみたくなって、NEC、富士通や日立など、主たるシステムを握っているところに劣等感もあったのと、学生のころから大企業に入りたいという憧れも元々ありましたので、転職活動を始めました。自分の市場価値はどんなものかなと試したくなって、リクルートエージェントなどに登録したら、求人票をドバッと持って来られて、「いいのと悪いのとを分けてみてください」、「通らないかもしれませんけど送ってみますか?」などと言われて送ってみたら、返ってきた中に大企業である日立製作所があり内定をいただきました。
――会社を辞めることに、どういった迷いがありましたか?
古川武士氏: 自分の中の、就職活動の時に果たせなかった思いと、もっと大きな仕事がしたいという思いとが重なり、でも、中小企業でやっている方が自分らしさが出ると思ったのと、取締役の人からもかわいがってもらっていたこともあり悩みました。でも元々の憧れと、いきなり出向させられたというのもあって、見返してやろうという反骨精神みたいなものもあり、次のステージに行くことにしました。
「雇われない生き方」への目覚め
――日立製作所に勤められてから、独立されるまでの経緯をお聞かせください。
古川武士氏: 3年間日立にいて、大きな仕事をやらせてもらったんですが、大企業ですから組織営業のような感じで、物事が決まらないのです。40億のシステムを一人の責任ではできなくて、意思決定に上司の上司の上司まで絡む。しかもお客さんとのつき合いも30年など歴史があったりして、前の会社で何もないところから自分でとってくる充実感を味わってきたものからすると、伝統歌舞伎の世界に入ったような感じだったのです。
前の会社では、野生みたいなものを出せたんですけど、日立にいる時は組織の中でがんじがらめでした。結果も出てはいたのですが、心がさびていく気持ちもあって、違うなと思いました。採ってくれた部長も期待してくれていて、なかなか踏ん切りが付かなかったのですが、これ以上は人生が無駄になるような臨界点に達してしまいました。野生がうずく瞬間をもう一度味わいたいと思って、最初はベンチャーに転職しようと思ったんですが、サイバーエージェントの藤田さんが書いた『渋谷ではたらく社長の告白』を読んで、自分にも起業ができるのではないかと思いました。
――藤田社長の本からはどのような示唆を得たのでしょうか?
古川武士氏: 起業は、初めからちゃんとしないと無理だという感じがあったんですけど、探りながらサバイバルするのがネットの世界で、何もできあがっていなくても起業できるんだなというのが分かって、それなら独立すればいいと思ったんです。雇われない生き方の方が、自分には絶対にいいと思って、転職ではなく独立しようと思いました。
――不安はありませんでしたか?
古川武士氏: ようやくこれで自分のやりたい道や方向性が、しっくり来たという感じで不安はなかったです。学生時代から起業したいという気持ちがあって、社会人1年目の時にも大前研一さんのアタッカーズビジネススクールに通っていたりもしていました。その小さい芽がその時ムクムク育ってきた。当時、ちょうどコーチングがブームで、本を読んでみたら、人を動機付けるなど、目標達成に導くということは自分に合っているし、しかも個人で、自宅起業でできるのでリスクも少ない。よし決めたと会社を辞め、コーチングスクールに通って独立しました。
「がむしゃらさ」でスタートダッシュに成功
――起業したばかりの時はどういった状況でしたか?
古川武士氏: その時はブランドが決まっておらず、いかだで船出はできたという感じです。貯金も70万くらいしかなく、それまで寮に住んでいたので、5万円ぐらいのアパートを探しました。苦しくなったらマックでバイトをすればいいやと思っていました。
――事業が軌道に乗ってきたと感じられたきっかけはありましたか?
古川武士氏: 起業当初は、月に2万円のクライアントが1名で、2ヶ月目ぐらいになると、やはりお金がなくなる。そういう時は、自分の中のたがが外れると言うか、発想や行動の軸も変わります。もっともっと行かなくてはと、起業家のプレゼンなどがあれば、前に出ていくようになって、ある企業から一次面接の面接官を代行してくれないかと言われたのです。後に一緒に本を書いたジェイソン・ダーキーという研修会社の社長との出会いがありました。僕が参加したプレゼン大会で彼もプレゼンをしていて、「うちの研修を一緒にやってくれないか」と声をかけられたんです。
――現在のお仕事にもつながる企業研修を始められたんですね。
古川武士氏: でも、当時は研修講師をしたことがなかったので、スキルもない。彼に「全く丸腰ですよ」と話をしたら、「いいんだ」と。彼が求めていたのは、プロの研修講師ではなくて、手あかがついていないまっさらな人、つまり彼のスキルを丸コピーできる人だったのです。
研修という仕事がそこで始まりました。コーチングのクライアントも、起業家1000人にブログ経由で、「無料でいいから請けさせて欲しい」と書いたら、100人ぐらいからメールがきて実際に70人ぐらいにコーチングをした結果、20人ぐらいクライアントがつきました。採用面接の仕事も始まり、意外にお金の苦労はなく、今までの8年を見ても非常に安定してやっています。
――当時を振り返って、なぜ起業当初に数々の受注ができたのだと思われますか?
古川武士氏: プロの講師だとそうではないのかもしれませんが、僕はがむしゃらに教えていたので、むしろクライアントが、僕を育てたいと思ったのかもしれません。もちろん研修でも結果も残してその相乗効果で、どんどん仕事を任せていただいたという感じでした。それが起業してからの第1ステージですね。
「職業アイデンティティ」で再び葛藤
――順風満帆な滑り出しでしたね。
古川武士氏: でも次のステージで困りました。お金は不自由しない、研修コーチは楽しいし、自由なライフスタイルも手に入った。ところが「自分って何なの?」という職業アイデンティティみたいなものが出てきたのです。「日立製作所の古川です」と言えば、アイデンティティは保たれますが、独立するとそうではない。「僕はコーチです」と言っても、コーチは世の中にたくさんいまして、「何のコーチですか?」と聞かれた時に、明確に答えられない自分がいる。コーチングは、申し込んでくれた人たちが自分で答えを見つけていく手伝いをしていくことなので、テーマも違えば対処法も違うので、なかなかセールスとして伝わらないのです。安定が手に入ると、次の段階として世の中にどう貢献したいのかとか、自分のミッションとは何なのかというようなことを考えるようになりました。
――「習慣化」のブランドを見つけるためには苦労がございましたか?
古川武士氏: 「セールスコーチ」や、ベンチャー企業向けのモチベーションコーチなど色々と考えました。でも、ベンチャーにモチベーションがなかったらそもそもダメですし(笑)、セールスマンにはコーチングの費用を払うお金などないのです。「朝礼コーチ」なども考えたんですが、2年ぐらい試行錯誤をしていました。
自分のブランドを作るには3つの輪が重なることが必要です。1つは求められていること、もう1つは世の中にお金を払う人がいて、もうかること。そして自分のやりたいこと。この3つの輪にはまるテーマに悩んでいたのですが、ある時、脳の中で臨界点が来て、ウォーキングしている時に、「そうだ、本を書こう」と直感が湧いたんです。それを自分の当時のコーチに話をした時に「習慣化」というアイデアが出てきたんです。でも、「習慣化っていいですよね」などと言いながら、他のテーマで書こうかという話もしていたので、すぐにそれだ!と100%ピンときていたわけではないと思います。でも外から見てコーチが、「習慣化って面白いよ」と言ってくれたので、自分の中でドスンと落ちた感覚がありました。
「実践」までの障壁を徹底的に取り除く
――そこでデビュー作の『 30日で人生を変える 「続ける」習慣』が完成したわけですね。
古川武士氏: 本を書くために習慣化のメソッドを作り検証して、自分のクライアントの研修などで試していると、継続できたという良いリアクションがありました。続けることを通じて、人生を変える、結果を残していくということにつながっていくんじゃないかなと思って書きました。そして個人のブランドとして「習慣化コンサルタント」としてやっていこうと思うようになりました。最初の本は4万部ぐらい売れているんですが、ブランドの軸が決まると、次から次に出版の依頼も、メディアの取材も来るし、自分が発信したいことも発信できる。自分のアイデンティティも確立していきました。
――「臨界点」という言葉もありましたが、独立の際も本を書く際も、たまっているものが一気に噴出する瞬間があるのですね。
古川武士氏: もやもやする時間は無駄ではなくて、実はエネルギーがたまっている状態で、どこかでパン!と解決策が見つかる瞬間がある。悩みがなく、考えるのを止めたら、エネルギーも湧きません。「ししおどし」のように水がたまっている時は何も変化が起きていないけど、実はカコーン!となるためのエネルギーをためている段階なのです。
――古川さんが本を書かれる際に、最もこだわっていることはどういったことでしょうか?
古川武士氏: 僕が大切にしているのは、とにかく「実践すること」です。実践をしないと、知的好奇心を満たしただけに終わってしまうので、実践するまでの障壁を徹底的に取り除くというのが僕のポリシーです。例えば、ワークシートを自分で作るのが面倒くさいからやらない人が多いので、僕の本では全部ダウンロードできるようにしています。今度の本では、1時間ぐらいの音声も無料でダウンロードできるようにして、それを毎日聴いてモチベーションを上げられるようにしています。
二項対立を超えた「電子書籍2.0」へ
――書籍や音声のダウンロードなど電子メディアも活用されているとのことですが、電子書籍についてはどのようにお考えでしょうか?
古川武士氏: 僕は iPadの中に、本を山ほど入れているんです。紙の本が100冊ぐらいたまったらスキャンしてもらっています。僕は本棚に入れた本は読み返さないんですが、iPadだったら時間がある時に見られます。Evernoteも使っていて、アイデアが湧いた瞬間に書き込んだり、新聞記事も写真を撮って、ライブラリーに入れています。そうすると知識がパソコンで集約できて、アイデアがアイデアを呼ぶ。iPadも含めて、本棚を持ち歩いている感じです。それに、紙の本だと読み始めると全部読みたくなり、それがブレーキになることもあります。だから僕は紙で読んで電子化して振り返るという使い方です。今までの習慣もあり、初めに読むのは紙で読みたいというのはあります。電子書籍をゼロから読んだことはないので、どこまでいいのかはよく分からないです。
――電子書籍の今後の可能性についてはどう思われますか?
古川武士氏: 電子書籍は今までに紙でできなかったことが実現できるのが付加価値だと思います。ウェブが出たてのころは単にホームページを見ていましたが、今はFacebookなどの世界に発展していき、ウェブ2.0のような感じになっています。そういう意味で言うと、今は電子書籍1.0ぐらいのレベルだと思うのです。まだ平面的にしか使われていないから、「紙か電子か」みたいな話になっていて、「ネットかリアルか」のような次元の話です。今はあまりそんなことを言う人もいなくなりましたよね。SNSがあるからこそ、1回しか会っていない知り合いとも仲良くつながれるというように、リアルとネットは、すでに融合しているわけです。
だから、紙は紙で存在価値はあるし、書店での本との出会いはあると思うので、それはそれで残るんでしょうが、もし電子書籍2.0みたいなのがあるとしたら、例えば、自分が欲しいテーマや情報やニーズを書くと、あらゆる蔵書の中から引っ張ってきて、つなぎ合わせてくれて、完成されたものを提供してくれるとか、そんなことは紙の本ではできないわけです。本は、まだ1冊というレベルでラベリングしているけど、本をパーツとして情報単位で集約できるようになる。著者に入ってくる印税も検索された一部だけになるかもしれません。いずれにしても、その時はたぶん紙か電子化みたいな世界を超えている気がするんですよ。
――電子書籍が単に紙の代わりになっては新しさがないということですね。
古川武士氏: 今のパラダイムは紙か電子化の2つに1つのレベルなんですが、今の延長線上で考えない方が、進化という意味ではいいと思います。物理的なところで見ていくというのは重要だし、そこで知の発見もあるのだけれど、電子書籍にしかない可能性もある。今の硬直的なバージョン1.0というレベルではない世界が広がって、もっと便利なものになって欲しいです。
本作りに一層知恵が求められる時代に
――最近読んだ本で印象に残っているものはありますか?
古川武士氏: 守屋洋さんが訳している『菜根譚』という中国の古典です。最近僕は、人間の考え方や軸のようなものは、どこに求めればいいのかと考えています。宗教のある国なら聖書やコーランなどありますが、日本の経営者、例えば稲盛和夫さんなんかを見ていると、どうもルーツが中国古典のようなのです。守屋洋さんの講演では、中国古典の最初のスタートラインは、論語は少し難しいので、『菜根譚』を読みなさいとおっしゃっていました。300年くらい前の人が書いた本で、比較的新しいものです。しかも論語や儒教の考え方や仏教など、色々な変遷を経た古典なので、「日本人がよりどころにしてもいいな」と染み渡るんです。それに守屋さんの本質の深みを移植しているわけだからなおいい。優しい言葉で書く必要はあるのですが、やはり守屋さんのような、古典に造詣の深い人がやらないとダメだと思います。
――古典が題材であっても、それを現代によみがえらせるには本作りをしっかりしなければなりませんね。
古川武士氏: そうですね。「この時代だからニーチェの言葉」などというのは、出版社の智恵で、そして編集者もしっかりしていなければ、本はダメだと思います。企画して本を出したとしても、編集者のノウハウや、経験などマーケティング的な発想と融合して出てきているわけで、個人で出すと、ノーメークで出ていくようなものです。「てにをは」を直すレベルなら誰でもできるけれど、何が求められるというのが分かっていて、かつそれを流通させるのは出版社の強みです。バイングパワーだけを言うのであれば、市場は小さくなっていく可能性はあるのですが、企画力やマーケティング力というのはなくならない。むしろますます重要になってくると思います。
――最後に、今後の展望をお聞かせください。
古川武士氏: 今考えていることは2つあって、本のテーマと、直接人と関わる活動です。活動としては、良い習慣が続かない人たちに来てもらって、ネックを解消する習慣化のフォローアップコミュニティを月に1回開催します。基本はしていても、変なところでつまっている人たちも結構いるので、月に1回読者の方たちや、メルマガの会員さんに来てもらえるような場を6月に作る予定です。
本のテーマとしては、悪い習慣を一掃する「やめる習慣」というのを書こうと思っています。前は良い習慣を始めるというテーマが強かったのですが、禁煙やダイエットは、成功率があまり高くないのです。なぜだろうと思ったら、新しいものを始めるのと、今あるものを止めるのとでは、少し違うんです。続けることは億劫さと戦うという感じですが、止めるのは、食べたいという衝動や、タバコを吸うことを我慢しなければいけない。悪い習慣を手放すというメソッドは別に考えなければと考えていて、悪い流れに入っているものを良い流れにもっていくためには、どうすればいいのかというのを、次の本のテーマにしようと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 古川武士 』