長嶺超輝

Profile

1975年長崎県生まれ。 九州大学法学部卒業。数回の司法試験不合格を経て、2004年に上京。法律分野を得意とするライターとして執筆活動を始める。 2005年の第20回最高裁判所裁判官国民審査から、審査対象となる裁判官のプロフィールや判決実績をまとめて、インターネット上のサイトに公表している。 2007年に発表したデビュー著書『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎)が、30万部を超えるベストセラーとなる。 近著に『恋の六法全書 ガールズトークは“罪”ですか?』(阪急コミュニケーションズ)、『47都道府県これマジ!?条例集』(幻冬舎)など。

Book Information

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ツテもコネもなかったけれど、自信だけはあった。


――司法試験を断念した後、上京してライターになろうと思われたのはどのようなきっかけだったのでしょうか?


長嶺超輝氏: もし弁護士になったとしても、一般読者向けに法律に関する本を出したいとは思っていたんです。結局、弁護士資格は取れなかったけれど「今まで、ひたすら司法試験という悪魔に魂を売ってきたぶん、これからは好きなことをやろう」ということで、29歳でなんのあてもなく上京したんです。司法試験に関しては、自信を完全に喪失していたのに、原稿を書くことに関して、なぜか自信だけはありました。

――そのわずか2、3年後に『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)がベストセラーになりましたね。


長嶺超輝氏: ほとんど家出同然の上京だったので、保証人がいらない板橋区のゲストハウスに住んでいました。本来は、日本に旅行中の外国人が格安で一時滞在する宿泊施設なんですが、結局は3年近く居座っていましたね(笑)。企画の売り込みはずっとやっていましたが、企画書を郵送してもまったく反応がなく、出版社や編集プロダクションのライター募集に応募しても、こちらの実績が皆無なので、けんもほろろに断られていましたね。100円ショップやコンビニ、ホームセンターのレジ打ちのアルバイトで食いつないでいました。転機は2005年の郵政解散の際、最高裁の国民審査に関する判断資料となるデータを私が公表したときです。ネット上で結構なアクセス数があって、朝日新聞の夕刊にも取り上げていただきました。それがきっかけで、幻冬舎の編集の方が「面白いことやっていますね、少し話をしませんか」と声をかけてくださって、話をしていくうちに、新書を書いてみないか、という話になったのです。

――お声がかかった時は、どのようなお気持ちでしたか?


長嶺超輝氏: 当然うれしかったのですが、企画案を送るたびに「ちょっと違いますね」という返事が返ってくる、そういったやり取りを半年くらい続けました。これから裁判員制度が始まるという時期だったので、刑事裁判で一連の流れを、一般の人向けに説明する本の企画を練っていたんです。ただ、書くべきテーマがなかなか固まらない。こんな調子が続いたら、新書を出す話も、なし崩しで無くなってしまうんじゃないか、という焦りもありましたね。ですが、そのうち、刑事裁判の流れの終盤にある手続き、裁判官が判決を言い渡す際に、被告人に対して将来の助言をする「訓戒」に注目するようになりました。訓戒の具体例をリサーチするため、過去の新聞記事を調べていたら、裁判官の興味深い発言がたくさん見つかったんですよね。ブログで試しに紹介してみると大きな反響があったので、「裁判官の訓戒だけに焦点を絞って1冊にしませんか」という提案をしてみました。裁判官の言葉を通じていろいろな法制度の背景も知ることができますし、検察側か弁護側、どちらの味方に振れるかわからない。その言葉には独自の世界観があるなと私は感じました。

デビュー作の新書がいきなり30万部超のベストセラーに。


――ベストセラーになった時はいかがでしたか?


長嶺超輝氏: この原稿は面白い、という絶対的な自信はありましたが、ビジネス面での不安はいっぱいでした。「どうしてこんなに売れているのかな」と。しかも、書籍の売れ行きは著者のあずかり知らないところ、肌感覚のない領域でうごめいていて、売り上げ部数の数字ばかりが増えていくので、ちょっと恐ろしいなというのが正直な気持ちでした。本を出して数日後、100円ショップでのアルバイト中に、休憩室でおにぎり弁当を食べているとき「3万部の増刷が決まりました」と、びっくりする報告の電話がかかってきたので、「さすがにもういいかな」と、その日のうちにアルバイトを辞めようと決めて、執筆や取材対応に専念することにしました。感想のメールも全国からたくさん頂きましたし、しばらくは書店で売り切れ続出で、「どこで売っとると?」って、九州の友人や親戚から電話がかかってくるんですが、著者に配本の権限はありませんしね(笑)。大学のゼミの恩師もすごく喜んでくださいまして、東京で定年退官のパーティを開いた際には、『爆笑お言葉集』を大量に買い取って、参加したゼミOB・OGに1冊ずつ配るという粋な計らいをしてくださいました。

――それからいろいろなご本を出版されていますが、長嶺さんはどのような思いで執筆されていますか?


長嶺超輝氏: 司法試験に本気で取り組んだことのあるフリーライターは、まずいないんじゃないかと思います。法律というジャンルの上澄みをすくって書けるライターならいるかもしれませんが、本来は難解な内容をシンプルに説明するには、どうしても絶対的な習得量が必要です。私がどんなに努力しても司法試験に合格できなかったのは、客観的には挫折なのでしょうが、その挫折をアドバンテージとして利用させていただきまして、「法律って、意外と面白いんだよ」ということを、皆さんに知っていただきたいと思います。読み物を通じて、ひとりでも多くの皆さんに、もし「世の中って、捨てたものじゃないな」と思いなおしてもらえるなら、ライター冥利に尽きますね。

著書一覧『 長嶺超輝

この著者のタグ: 『ライター』 『法律』 『フリーランス』 『きっかけ』 『エージェント』 『司法試験』

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