考えながら作品世界を見て、登場人物の声を聞く。
――それから数々の作品を書かれるわけですが、どのようなお気持ちで毎回書かれていますか?
近藤史恵氏: 私はどちらかと言うと、書いて、考えながら世界を見ていくといった感じのスタンスです。書いてみないとその登場人物がどんな人なのかよく分からないので、書きながら自分がその本を読んでいるような気持ちで書いていきます。「こういう着地点にする、こういう理由があってこういう話にする」という基本的なプロットは決めていますが、思ったようにキャラクターが動かないことも、もちろんあります。そういう時には「このキャラクターはこういう人じゃない」と思ったりもしますので、自分の書いている小説ではありますが、一緒になって読んでいるといった感覚が大きいです。
――そうなると、自分の作品に対して厳しい視点もお持ちなのではありませんか?
近藤史恵氏: 「これは面白くない」と、しょっちゅう思います。見えてない部分と見えている部分があって、「ここは少し無理があるのではないか」、「いくら考えてもこの方向以外は見つからないけれど、もっとうまくできたんじゃないのかな」などと思うこともよくあります。
大絶賛よりちょっとクールな付き合いの方がいい。
――編集者さんとのやり取りは、どのような感じでしょうか?
近藤史恵氏: こちらに来ていただいて会うことや、私が向こうに行った時に会うこともありますが、距離があるので基本的にやはりメールや電話が多いです。皆さんがモチベーションを一生懸命上げてくださるので、それに助けられています。
――近藤さんにとってどのような編集者が理想でしょうか?
近藤史恵氏: 情熱的な人よりも、ちょっとクールな人の方がやりやすい気がします。毎回「ここが素晴らしい」と言われるより、普段ほめない人にたまにほめてもらえると、「ああ、本当に良いんだな」と思えます(笑)。極めてビジネスライクにと言うか、こそっとほめてくださるような人がいいです。ほめられすぎるとむずがゆいと言うか、恐縮してしまいます。原稿の直しに関しては、私は激しく言われたことはあまりないですが、エッセイで、「こういうシーンを入れてください」など明確に指定されたりすると、「あまりこういう人とは仕事したくないな」と思ってしまいます。
執筆は自宅で、資料集めにはAmazonや楽天も活用。
――執筆はどちらでされますか?
近藤史恵氏: 自宅の普通の和室で、20年くらい使っているちゃぶ台の上にパソコンを置いて、部屋の一番奥のふすまの前に座って書いています(笑)。最初は違う場所に置いていたのですが、落ち着く場所を求めていったらそこになりました。
――本もたくさん持っていらっしゃいますか?
近藤史恵氏: うちは結構広いのですが、ほとんど本棚と言うか、部屋の大部分は本を収納するためにあるといった状態です。本は収納場所に困ります。実家からの引っ越しで、家電製品もなく、1部屋分の荷物なのに4トントラックが来たこともあります(笑)。
――本はどこで購入されますか?
近藤史恵氏: この近くの少し大きめの本屋さんで買うことが一番多いです。家で書いていると楽天やAmazonなども便利なので利用します。特に時代小説になると資料をたくさん読まなくてはいけないので、中身も見ずに、似たような本を検索して何冊か買うこともあります。ただ積み重ねで、そこさえ押さえていたら大体は分かるような決まった資料というのがいくつかあるので、毎回全部を読むわけではありません。
――近藤さんの書かれるものは、ジャンルがそれぞれ全く別ものですね。どのような発想でアイデアを作品に落とし込まれるのでしょうか?
近藤史恵氏: 私は、自分の本を読むように書いているので、「自分はこういう本が読みたい」、「こういうのが書きたい」ということが一番のモチベーションになっています。だから、自分の好きなジャンルで、こういうのが読みたいなという理由でいろいろと書いています。
著書一覧『 近藤史恵 』