読みやすいけれど、奥行きのある本に
――花輪さんの本は電子書籍にもなっていますね。
花輪陽子氏: 2冊電子書籍になっています。電子書籍になったことによって、本屋さんに行かない人がKindleで買ったり、違う出会いができるようになると期待しています。電子書籍は最初は抵抗があるかもしれないですが、便利なので、1回使ってみるとヘビーユーザーになる方もいっぱいいると思います。普段忙しくて本屋に行けない方にとって、本との出会いの場になると思います。
――執筆では、読者にどのようなことを伝えたいと思われていますか?
花輪陽子氏: テーマに関しては出版社から依頼があったものを書くことが多いのですが、お金の情報だけだとネットなど色々なところで読めるので、哲学や他の情報も含めて書いています。これからの私の課題でもあるんですが、もっと重厚感があるような、読みやすいけれども深い内容にしていきたいと思っています。お金というテーマは、本当に人間の本質を表すようなものです。もっと色んなことを勉強して、奥行きのある本を書いていきたいです。
――本を執筆される時には、どのようなことに留意されて書かれていますか?
花輪陽子氏: 執筆する時に、どんな料理を食べたいかというのが個人個人で違うので、雑誌などの媒体で、読者層がある程度分かっている時は、意識して書き分けています。特に、女性向けに書く時と男性向けに書く時ですね。今、日経電子版で連載をしていますが、忙しいサラリーパーソンは、パッと見て分かるようなものが欲しいと思うので、最初に結論から書いていって逆三角形になるようにしているのと、図版だけ見れば、全部読めなくても分かるような内容にすることを意識しています。女性ですと、もうちょっとフワッとしたところから入っていきます。イラストレーターの藤井昌子さんが素晴らしいイラストや漫画を書いてくださっていますが、やはり漫画があると難しいお金のこともとっつきやすくなる。藤井さんは、出版社の方が紹介してくださったんですけど、それ以降は個人的にイラストをお願いもしているんですよ。
お金の問題を通して、精神的なケアを
花輪陽子氏: ライフプランにも女性特有のものがあります。私がちょうど今年35歳になるんですけれど、団塊ジュニアやもう少し下の世代の35歳前後の女性は、仕事と出産のタイミングで、板挟みになっている方がすごく多い。妊活や不妊治療には、お金の問題もすごく絡んできます。医療保険や、子どもの教育費のことも関係してきます。今後は例えば婦人科の先生と対談したり、共著を書くなど、そういった現代的なテーマとお金を絡めるものが書きたいと思っています。
――そのほかに、ご著書の構想や、活動の展望があればお聞かせください。
花輪陽子氏: 実用系の本も書いていきたいと思うんですが、そこから少しだけずらしていきたいなと。例えば、若い人を中心として、貯金をしてこなかったという過去に対する後悔や、若い人が高齢になった時に年金や医療がどうなるかというような、未来の不安に押しつぶされて、今一生懸命生きるのが難しくなっている方がすごく多い。これは実用的な問題だけでなく、精神的なケアも必要なのかなと思います。お金の問題で、人生を転がり落ちていくような人もいるので、お金の向き合い方や本質的なものも書いていきたいと思っています。
今、特に若い人とかが社会の閉塞感を感じています。自民党政権になって株価が上がったりして、大企業の人とかは結構潤っているのかもしれないんですけど、恩恵を受けない人もいて、ますます格差が開いて、苦しむ人が多くなる。そういった人の苦しみを和らげてあげることができたらいいなと思いますね。
あとは、事実をそのまま書くよりも、小説とか漫画になっていた方がよく分かる。ドストエフスキーの作品も、お金について事細かく書いてあるので、お金にもてあそばれる人や、当時の生活感がよく分かってきました。物語の方がその登場人物のセリフや行動に、自分の生き方を見い出していけるので、『夢をかなえるゾウ』とか、『もしドラ』とかのように、小説などで表現することも、今は願望ですけど将来的にできればいいなと思います。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 花輪陽子 』