久恒啓一

Profile

1950年、大分県中津市生まれ。九州大学法学部を卒業後、日本航空株式会社入社。ロンドン空港支店、客室本部労務担当等を経て、本社広報課長、サービス委員会事務局次長を歴任。ビジネスマン時代から「知的生産の技術」研究会(現在はNPO法人)に所属し著作活動も展開。日本航空を早期退職し、1997年4月新設の宮城大学教授に就任。2008年度、多摩大学経営情報学部教授。2012年度より経営情報学部長。主な著書に『図で考える人は仕事ができる』(日本経済新聞出版社)、『遅咲き偉人伝』『30代からの人生戦略は「図」で考える!』(PHP研究所)など。

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WEB時代は「自分史」の時代


――WEBサイトをはじめ、ネットメディアを活用し言論活動をされていますね。


久恒啓一氏: 本を読んで、いいなと思ったら、ブログに書いています。本を読むだけではだめで、ブログに書くといった表現をするとか、図解にすることで自分の中に定着します。そういうことをしない限り、読んだだけで終わってしまう。ブログは2002年の9月に書き始めて、もうすぐ10年です。私は、2万3000日位生きていますが、その内3000日書いている。ずっと書き続けると、4万日中で1万日位にはなるかもしれませんね。私のメルマガは900号になっていて、タイトルが昔は『ビジネスマン教授日記』だったのですが、それを変えて、『久恒啓一の学びの軌跡』にしました。私が何を学んだかということを書いているのですが、これは自分の人生をグリップできるかどうかってことなのであって、自分にとっても精神衛生上良いんです。
今はブログやツイッターに書けるので、良い時代だと思います。江戸東京博物館で自分史フェスティバルがあった時に基調講演をしたのですが、「自分史を書くということは、生き方の改善運動になる」といった内容を話しました。私がやっていることも自分史を積み重ねているようなものです。音楽や絵、あるいは映像でも、IT時代においてはそういうことが容易にできるのです。高齢者については、ITの入り口さえ突破できれば、内容はご自分の中にあるから自分史が書けるはずです。若い人は、自分史のようなものを書いている人もいますが、内容が薄いというか、内容の豊かさが全く違います。

――ITについては、もともと興味を持たれていたのでしょうか?


久恒啓一氏: もともとネットは苦手でした。本についても同じように思っていますが、ITに関しても、良いもの、新しいものを知るためには、目利きの友人を持たなければいけません。同世代の人のほうが趣味が合うのは確かですが、若い人からどういう情報を受け取るかということも重要です。例えば27才のイケダハヤトさんは学生が紹介してくれて、面白いなと思って、彼のブログを読んでウェブの世界のことを色々と知りました。また、データセクションという会社を立ち上げた橋本大也さんとも会って「本物だ」と感じたので、彼のブログで薦めている本を買っています。こういったように、年齢の離れた人とどうやって付き合うかということが非常に重要なのです。偉い人がだめになってしまうのは、面白い若者がいても秘書が無視してしまい、新しい業界のことがどんどん分からなくなってしまうからだと私は思っています。

自分自身の編集者、プロデューサーに


――電子書籍が登場していますが、どのようにお感じになっていますか?


久恒啓一氏: 電子化の時代は、図をもっと活用した方が良いと思います。文章をこんなにたくさん書く必要があるのか、ということも考えなければならない。ポイントは、自分の考えを世の中に広めることが重要であって、書くことが重要なのではないということです。自分にしか書けないものは自分でやるけれど、それ以外はライターと組んでやってもいいし、レベルにもあまりこだわりません。

――すでに電子書籍も何冊かお出しになっていますね。


久恒啓一氏: 電子書籍も良い、悪いじゃなくてそういう流れだからやってみようと思いました。新しい人と仕事をすることは面白いです。本を100冊以上書いていると、編集者も年をとるし、いつの間にかいなくなってしまうこともあります。こうやって話をすることで、ブックスキャンだったらブックスキャンはどういうことをやっているのか、ということを覚えられる。そういうことが、私の情報になっていくので、非常に良いというわけです。

――電子書籍の登場で編集者に求められるものも変わってくると思いますか?


久恒啓一氏: 従来の編集者は皆、電子書籍データをどう扱うかで困っています。ほとんどの会社がIT化に遅れて、編集者が使いものにならなくなってきているのか、出版社から編集者の育て方について相談を受けることがあります。その話をうけて、「編集者をIT化するのは時間がかかり過ぎるからやめなさい。それよりも技術者はIT環境を全部分かっているので、技術者に編集技術を覚えさせて編集者にした方が早い」ということを私は提案しています。
私は、自分の著書をすべて自炊したのですが、それを組み合わせて、検索すると自分のキーワードが出てきます。それを見ながら考えれば、また新しい本ができあがっていく。私の持っている資源を組み直すことで、自分自身の編集者、プロデューサーをしているような感じです。電子化にはいろいろな議論がありますが、新しいことだから、色々やっているうちに失敗もあると思いますが、それも経験になって、新しいものが出てくるのだと思います。

――最後に、今後の展望などをお聞かせください。


久恒啓一氏: 常に仕事をし続けなければ、仕事ができません。休んではだめですね。本を作ったり、常にプロジェクトをやったりしていると、また違う課題が出てくるといったように、何かをすることで新しい地平が見えてくるから、次の仕事が見えてくる。その点に関しては迷いがないのですが、今までは色々なことに取り組み続け、その結果仕事がどんどん増えたので、これからは少し選んで、本当に良い本を出していきたいと思っています。
今は、外務省の人に日本の勤勉な教育を推進したらどうかということを言っています。中国、韓国、台湾などアジアでは、私の翻訳がもう20冊位出ていますが、日本人とは何かということをアジア各国で講演して回る可能性もあるのではないかと思っています。よく「日本の良さを伝える」といいますが、その時に何を伝えるかというと、「文化」も良いけど、やはり「生き方」なのではないかと私は思っています。だから日本人としての生き方を抽出して、日本人を覚醒させるのと同時に、それを輸出するということもあり得るのではないかと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 久恒啓一

この著者のタグ: 『大学教授』 『コミュニケーション』 『研究』 『教育』 『偉人』 『図解』

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