長嶋修

Profile

1967年、東京生まれ。1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社・さくら事務所を設立、現会長。業界の第一人者として不動産購入のノウハウにとどまらず、業界・政策提言にも言及するなど精力的に活動。TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動等でも活躍中。著書に『絶対に公開しないマンション購入術○と✕』(エクスナレッジ)、『絶対に公開しない一戸建て選び』『絶対に後悔しない中古住宅選び』(日本実業出版社)、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな! 知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)などがある。

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次の世代へバトンを渡す


――ご自身が生きていく上で大切にされていることはなんでしょうか?


長嶋修氏: 私は常に、自分に対して納得はしていますが満足はしてない。ですから、次から次へとやることが出てきます。それが、人間の良さ、成長力だと思います。成長する意思さえあれば、人間の本来の能力には、あまり差はないと思うんです。

――やる気持ちがあるか、ないかですか?


長嶋修氏: 私には、昔から理想としている社会があります。お金がなくても世の中が完璧に回っているっていう、そういう星がどこかの宇宙にあるとするじゃないですか。肉屋に行けば肉がただでもらえ、水も無料、電車も乗り放題。それがなぜできるのかといえば、私の場合は不動産の世界で貢献しているからです。完璧な社会はお金の要らない社会です。でも、それはできないので、お金をモノやサービスの交換手段としています。ですがお金には貯蔵機能や金利があるので、お金を貯める人が出てきて、最終的にはお金そのものに価値があるような錯覚に陥る。
そういう世界にするためには、段階が必要ですよね。マルクスの資本論でも、彼の言っていることがいきなり実現するとは書いておらず、段階があると言っています。

――資本主義の最終形態として「お金の要らない社会」にいきつけば、上手くいくとお考えですか?


長嶋修氏: 人間の欲望を利用しつつ、物心共に豊かになっていくのが資本主義経済だから。ある程度世界中に富が行き渡るまでは、資本主義の基本は続くでしょう。ある程度満足してくると、お金がなくても回る仕組みってどうだろうかと考える人が出てくると思います。昔で言えば、武者小路実篤なんかは理想的な社会を作ろうと、自分達で自給自足の新しい村を作りましたし、同じ考えの文学者や社会学者が時々いるんです。ですが、やはり日本全体、世界全体が同じく理想的な社会でないと失敗します。
自分が生きている内に理想社会は訪れないと思いますが、先人から引き継いできたバトンですから、次の人になるべく良い形で引き継ぎたい。それが、正しいか正しくないか分かりませんが、ある意味宗教みたいなもので、何を信じて生きるかが大切だと思います。今のこの世の中で本質的だと思えることを求めて生きるのが、より良い生き方なんだろうと思うんです。

――最後に、今後の展望をお聞かせいただけますか?


長嶋修氏: 来年から新しい事業を2つ始めます。1つは新興国投資です。世界もある程度豊かにならないといけないというのがありますが、いきなりアフリカのような地域を育てていくのは大変ですので、タイ、マレーシア、フィリピンなどのエマージング市場、アジアに着目しました。今、彼らは住宅、不動産が欲しくてしかたがない。所得がもう少し増えれば、誰でも買えるという段階です。経済成長も凄まじいですが、まだまだ色々な意味での投資が足りません。一方で、日本はお金が有り余っている。このお金を投資すれば、互いの国にとって良いということで、今、会社を作っています。
もう1つは原発の話です。原発賛成派は、「合理的に考えれば火力よりも良い」と数字や理屈だけで言う。一方、反対派は感情論だけ。どちらも、もっともなんですが、これを統合できる概念や方法がないかということで、私はドイツに行ってきました。ドイツは2000年代前半から脱原発を打ち出して、きれいごとではなく、国家戦略として取り組んでいるのです。他の国からエネルギーを輸入し且つ、赤字を出し続ける状況は持続可能な国家戦略として良くない。現在、ロシアやアメリカから輸入しているエネルギーを段階的にゼロにし、自国の再生可能エネルギーでまかなうことを目指し取り組んでいます。そのために、住宅の省エネ性能を高め、風力や太陽光などでどこまでやれるか実証し、2050年には再生可能エネルギーで80パーセントをまかなうことを目標に進めています。視察に行くと幾つかの街は完全に自給できているところがあるんです。「日本も、考え方と方法を変えればできる」と、再生可能エネルギーを普及する事業を来年から立ち上げます。

(聞き手:沖中幸太郎)

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この著者のタグ: 『経済』 『考え方』 『働き方』 『原動力』 『投資』 『不動産』 『独立』

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