紺野登

Profile

早稲田大学理工学部建築学科卒業。株式会社博報堂マーケティング・ディレクターを経て、現在KIRO株式会社。博士(経営情報学)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科特別招聘教授、)京都工芸繊維大学新世代オフィス研究センター(NEO)特任教授)、東京大学i.schoolエグゼクティブ・フェロー。一般社団法人 Japan Innovation Network(JIN)代表理事。日建設計顧問。組織や社会の知識生態学をテーマに、フューチャーセンター、「目的工学」など、イノベーションに関わる考え方についての研究、普及などの実務にかかわる。

Book Information

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紙でも電子でもないネクストペーパーの登場がカギ


――電子ブックは活用していますか?


紺野登氏: iPadはKindleを積んでいますから活用しています。自分の本を常に持ち、また仕事に使う本も入れています。仕事に使う本というのは、本のようでいて情報そのものなので、パッケージされた情報としてここに積み込んでいるというのが多いです。それからごく希に、自分にとって必要な本も入っています。Kindleで自分のために読む本は、古典などが多く、『源氏物語』なども入っています。今見ると『孫子』や『断腸亭日乗』、『老人と海』など、いわゆる昔読んだ古典物を、自分で反芻するためにダウンロードしていますね。他には、英語版の『源氏物語』も入っていますね。



――電子ブックに対する抵抗感はなかったですか?


紺野登氏: コンピュータのモニターで読むと目が痛くなるのですが、Kindleはそうでもないんですよ。ただ、昔読んだことのある本ではなく、全く新しい文学作品をコレで読めと言われると、ちょっと辛いです。

――どこか、紙対電子みたいな捉えられ方もされてしまいがちですが、そのことについてどう思われますか?


紺野登氏: 紙対電子というのは本当どうでもいいのではないでしょうか。本というのは構造を持っているわけです。この構造を、未来永劫、人類のために維持していけるかが、実は本の一番大きな使命。本は、素晴らしい紙の発明ですが、これよりもっといいものがあれば、その目的のためには手段を選ばずということになるわけです。
グーテンベルグの前は巻物や羊皮紙、羊皮紙の前はパピルス、その前は石や粘土だったりするわけですから、媒体は変わるんです。でも、本の構造、知識の構造を、未来永劫、社会的記憶、知の生態系「ナレッジエコロジー」として維持することが大事。つまり、アーカイブ(記憶、メモリー)が一番大事な本の役割です。ですから、電子化されても別に大きな問題はないと思います。

――紺野さんにとって「本」とはなんでしょうか?


紺野登氏: 本は、僕にとっての「知識」です。雑知識もあれば、単なる情報もある。Kindleは今、500万点ほど読めますが、点数に関係なく、色々なものが楽しめるのはいい時代だと思います。
一方で、なんのために本を読むかといえば、人類の知識を継承しているプロセスがある。もし我々が本を読むのをやめたら、人類は知識の断絶を経験するわけです。ですから、おもしろおかしくしてもなんでもいいから、よい知識を伝搬させること、そしてその方法が大事なわけです。

――現代では需要が低いコンテンツだとしても、電子書籍であれば残っていくことができるのでしょうか?


紺野登氏: 1冊しか読まれない本もKindle版では出ますよね。一番大事なことは、あらゆる雑多なレベルのものがある中で、次の世代に本当に重要な知識をアーカイブとして記憶として伝えることです。今の時代は電子を使いながら、それが生きながらえているんだと思うんです。基本的には紙の本は死なない。これを越えようと思っても、今の電子出版は赤ん坊レベルなので、あくまで、Kindleのようなものも限定された使い方に限られる。
例えば、どうしても100冊の本についてレビューしなければいけないという時には、Kindleにつんでいった方がいいと思います。人に何かを伝えたり、プレゼンテーションしたりするのにも便利ですが、自分が何かを考えるということになると、紙の本の方が構造をもっているのでいいかなと思います。
電子本は部分的に強い便利さがある。でも、便利だからといって紙がなくなるということではない。紙が持っている面白さ、魅力がもっと際だつようなものが出てきて、全く違う素材で紙の本ができるというのが1つのゴールかなとも思います。要するにネクストペーパーです。電子ペーパーもありますが、まだ足りない。そういうものが出てきて、初めて次に行くんじゃないでしょうか。



――最後に今後の抱負をお聞かせ下さい。


紺野登氏: 何かのランキングで、日本の読み書き能力は世界ナンバー1だと言っていました。相当のレベルで日本には知的集積があるわけです。ですからその能力を、もっとクリエイティブなものに持ってきたいというのがあります。日本人がもっと深い本を読めるようにしたいので、難しい本を読めるような方法論を模索するべきだと思います。
あとは、日本にはいいものがたくさんあるので、それを海外に出して行くための方法論を考えていきたいと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 紺野登

この著者のタグ: 『大学教授』 『デザイン』 『コンサルティング』 『アドバイス』 『コンピュータ』 『イノベーション』 『独立』 『アーカイブ』 『知識』

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