熱意のぶつかり合いが 良いものを生み出す
フェリス女学院大学文学部コミュニケーション学科の教授を務める高田明典さん。作品構造分析という手法を用いて、様々な文化現象を物語論と記号論、構造主義の面から探求しています。昨今研究者の倫理が問われる中、「世の中のために伝えたい」という気持ちを抱き続ける高田先生の歩んだ道とは――。
分析により、主たる概念をたどっていく
――先生の「作品構造分析ゼミ」ではどのようなことをされているのでしょうか。
高田明典氏: 物語構造分析という手法に基づいて色々やってきています。「シーン分析」という方法を使ったりして、物語の中に存在している構造を明らかにしていこうというのがゼミのテーマとなっています。文化人類学の中では、昔、クロード・レヴィ=ストロースなどがやっていた神話分析や民話分析を基にしたものを、このゼミ用に新たに作り直して、コミックや映画、小説といったものを分析します。その主たる意味の概念をたどっていこうというのが基本的なやり方となっています。
――分析の対象となる作品は様々なのですね。
高田明典氏: ファッションをやったり、流行現象やゲームをやったり、コミックや小説をやったり色々です。今年の卒業論文ではコミックが多いかな。『進撃の巨人』や『ワンピース』、口コミサイトのテキスト分析も多いです。レビューをたくさんとってきて、それを構造分析、潜在意味分析の分析ツールにかけるのです。そうすると様々な構造が出てきて、それをさらに細かく分析していきます。どういう単語が多く使われているかとか、どういう単語とどういう単語が近接して使われているかということによって、その口コミサイトが何を問題にしているのか、あるいは何を不満に思っているのか、そして何に着目しているのかということがわかったりするのです。
――曖昧なものでしか捉えられなかったようなものが数値化されるのは面白そうですね。
高田明典氏: でもノイズなどもあるので、きちんと数値化するのが難しい部分でもあります。ただ、口コミサイトのレビューって、少ないものでも3000~4000、多いものだと5万~10万ぐらい。文字数にすると4〜50万文字と膨大な数になります。今まで人力では分析できなかったものが、コンピューター技術が進歩して、比較的簡単にできるようになりましたね。
――「数字を扱う」文学部なんですね。
高田明典氏: 文学部とはいえ社会学に近いかもしれませんね。社会学系の教員が大半で、社会調査や統計調査、分析をしています。
――活気のあるゼミの姿が浮かんできました。
高田明典氏: うちのゼミは厳しいので、みんなよく勉強します。ここにあるのは本を1冊読ませてノートを取らせる読書ノートです。1年生のうちから、リーディングアサインメント(受講するにあたって、読んでおかなければいけない参考資料)があります。「文献・情報の集め方」という授業では、最終的には文献のリストを作らせます。これは東海大学出版会の『道徳についての思考』ですが、これを読んで読書ノートを書く。いくつかの論文と文献のノートを作り、そのリストを作成するのがこの授業の最後の課題です。授業は120人履修です。私の場合は、15回授業で、だいたい11本、レポートを出させます。
――その添削は、先生が…。
高田明典氏: はい。全部1人で添削して返します。毎週、かなり粘着系の添削をして返すのですが(笑)、今年は100人の授業が2つあるので、毎週200通。初めの頃にがっちり添削して返すと、学生の方も身が引き締まるというか、「先生はしっかり読んでいるし、ちゃんとやらなきゃだめだ」という風に思うのではないでしょうか。
行き帰りの通勤時間が長いので、その時にレポートを添削しています。「他の課題がいっぱい出てたので」とか、「先週、遊びに行っていたので」とかとんでもない理由を言ってくる学生も中にはいます。でも、どんな理由があろうがだめ。だからこちらも「今週は学会の発表があったので、レポートの添削の返却は来週ね」というのはできない。だから死ぬ気で週末に添削します。1枚の添削に、3分くらいかかるので、120人全員が出してくると、だいたい6時間。最近は慣れてきましたが、2本授業があるので、合計で毎週10時間~12時間ぐらい、添削に時間を費やしています(笑)。