井本邦昭

Profile

1944年、山口県生まれ。整体指導者であった父・良夫氏より5歳の時から整体の手ほどきを受ける。その後、 ヨーロッパで鍼灸を指導する一方で、スイス、ドイツにおいて西洋医学を学ぶ。帰国後から現在に至るまで、東京および山口にて整体指導を続けている。また、 後継者育成のため、2004年8月にそれまでの原宿教室、音羽教室を統合し、井本整体東京本部(東京・千駄ヶ谷)を設立。生徒指導のため山口・東京間を毎週往復する日々を送っている。 著書に40万部を超える『弱った体がよみがえる人体力学』(高橋書店)、最新刊として人体力学で『疲れない体』になる!(王様文庫)など多数。

Book Information

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「絶対に治すんだ」という意地


――整体を続けられる、想いの源は何でしょうか。


井本邦昭氏: 若い時など「治らない」と言われると意地になって「治してやろう」という気になっていましたが、我々が求めているものは治してやろうではなく、相手の自発性が発揮されることが本来の整体操法なのです。このような事がありました。ここの生徒のお姉さんがすい臓がんになったのですが、まだ、入門して日が浅く技術はない。でも何とかしたいということで、蒸しタオルだけを行いましたら、そのすい臓がんが治ってしまったということがありました。本来すい臓がんなどは「当時がんになると99%、治らない」と言われていました。もって三ヶ月と言われた命が蒸しタオルを必死に行うことで救われた。今までの常識で捉えていては救えなかった命を、整体によって自らの力で治す方向に持っていける。これは一人の生徒の実例なのですが、このように世の中の一人一人が整体の道を目指している話を聞いたり、実行に移されることが私の原動力かもしれません。

――整体の可能性を感じますね。


井本邦昭氏: そうですね。救急的なことも、どんどん教えていこうと思いました。開いているものは開けばいい。骨が外れているものは外せばいい。外れたものを外すというのはおかしいと言われるかもしれませんが、外れたものをきちんと外すと自然に元に戻る様になっている。このような技術は親父からの教えがベースになっていつのまにか色々な事を覚えていたのです。つまり薬でも何でも、自分自身の体の中で作ったものを、引き出して使うということなのです。

常識を疑う。違う角度で考える



井本邦昭氏: ある時、大口を開けたら、顎が外れたという人がいました。そういった時、一般の人でも知っている様に、用心のため、かまれないように包帯を巻いて、口の中に手を入れて顎をはめようとする。私の行っている整体はそうではありません。顎が外れたら、両脇を持って口を再度アーンと開けて、顎が外れたらこれをギューッと寄せます。閉じるのではなく、グーッと開けると入るのです。ただこれだけ。骨を入れようとするから入らないのです。外さないと骨は入りません。
私たちのやっていることは一般的なものの考え方や、使い方とは少し違うかもしれないけれど、まだそういった分かっていない部分や常識とされていた事で違う事に少しでも気がつけば良いと思うのです。

――整体で色々な人を診られてきて、常識と違う事に気づく事も多いと思います。


井本邦昭氏: 私は体を直接手にとって診ているので、体が変わってきたのが分かります。昔は冷房病といって、冷房はいけないと長年言っていましたが、最近の様に異常気象からの暑さ対策など環境を自分で作らなければ、熱中症になってしまうのです。昔と比べると体が弱くなったというだけではなくて、体も環境も変わってきているので、冷房を上手に使うことが大事です。良いものは良い。それをうまく取り入れることが大事なのです。

環境がこれだけ変わると、呼吸器など、弱い部分を抱えている人は、順応するのが難しいかもしれませんね。呼吸器はとにかく大事です。それと、色々なものを摂るだけでなく、汗でも熱でもエネルギーでもいいのですが、いかに排せつするかという事の方が一番重要です。メディアでは、いかに栄養を摂るかということを中心に今だやっていますが、余計なものを捨てるのが上手くなることこそが、健康に繋がるのだと私は思います。
また、ちまたで信じられている「夜遅くても、食べたら3時間起きていなければいけない」などというのは、間違いだと思っています。食べたらすぐ寝ること。犬でも猫など動物は食べたらすぐに寝ますよね?遅くまで仕事をして帰ってきて夜食のように夕食を食べて、それから3時間起きていたりするから、次の日にまた疲れを持ち越す事になるのです。貝原益軒の養生訓も当時の人達には当てはまっていたかもしれませんが、今日のような環境や人達では無理だったり間違いになることも多いのです。

――整体の本も積極的に出版されていますね。


井本邦昭氏: それは一般の人たちにも今までとは違った物の見方、考え方という事に気づくことが出来ればと思い、その為に本を出すことになったのです。また、井本整体・人体力学を知りたいのだが教室に通われない遠方の方などにも伝えたいとの思いもあります。また、そのような意味で色々なものを発信する事は出来ても、もっと大切なことを手にとって知ってほしい部分はどうしても直接道場へ来て欲しいのです。

「自分の技」を身につけてほしい


――井本整体には、多くの整体師もその技を学びに集まっています。


井本邦昭氏: 1人ひとりを治すといっても、個人では限界がありますので、ここにいる生徒たちに最高の技術を身につけてほしいと思っています。ある意味、相撲部屋の親方(綿々と伝承される職人)と一緒なのかなと思いますが、色々なことにくじけずに、自分の技と心というものを身につけてほしいと思うのです。今は色々な情報がありますが、私のやっていることの原点は変わりません。ここに集う仲間たちも、自信を持って今後もやり続けてほしいです。そしていつの日にか、生徒たちにバトンタッチしなければなりません。
自分の技だけでなく心というものを身につけ井本整体の技と命に対する信条に自信をつけて世の中にどんどん出て、羽ばたいていくことが、私の今の願いです。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 井本邦昭

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