浅見ベートーベン

Profile

1947年、長野県生まれ。日本通訳養成所卒業後、明治大学商学部、コーネル大学に学ぶ。1965年日本IBM入社、2002年に退職。現在に至る。TOEIC TEST連続満点(990点)取得、英検1級、通訳案内業国家試験合格(英語)。 主な著書に『ビジネスパーソンのための英語イディオム辞典』(NHK出版)、『外資系の英語プレゼンテーション』(明日香出版)、『2週間で英語の読解スピードが3倍になる本』(アスク)、『ビジネス英会話パーフェクト・ブック』(ベレ出版)など。『新・直前に解く!TOEIC TEST模擬試験集』(明日香出版社)、『新・TOEIC TEST奪取模試』(アスク)等、TOEIC関連本も多数。

Book Information

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“Shoot anywhere you want and call it a target.”



日本IBM、筑波大学大学院講師を経て、英語研修サービス有限会社代表としてビジネス英語教育に携わる、浅見ベートーベンさん。趣味である野鳥鑑賞をもとにした本も執筆されています。底抜けのパワーと明るさで人気を博す浅見さんの想いを、ユーモアを交えたっぷりと伺ってきました。

赤羽育ちのやんちゃ坊主


――様々な形で英語教育に携わっています。


浅見ベートーベン氏: 私の古巣でもあるIBMの社員の方に、TOEICや英語のプレゼンテーションについてビジネス英語研修を実施しています。私も持っている通訳案内士の国家試験では、最近、TOEICが 840点以上(満点990)だと英語免除になりました。普通のTOEICでは発音が計られないので、英語免除されるような高得点取得者でも発音の問題を抱えています。やっぱり発音があまり良くないと、「次からあのガイドさんやめて」ということもあったりするそうで(笑)、ガイドさん向けに教えたりもしています。今でこそ発音などを教えていますが、私も苦労しました。

――(プロフィールに)生まれが長野で赤羽育ち、とありますね。


浅見ベートーベン氏: 父親はアメリカ人で、ケンタッキーと似ているということから旧軽井沢に土地と家を買いました。父は通信兵で、モールス信号をパイロットなどに教えていました。戦争の後半は、アメリカ軍のパイロットになったインド人やパキスタン人、フィリピン人にも教えていたそうです。戦争で勝ったら抑えるのは放送局と港。愛宕山を抑えて、カービン銃を持ちながら仕事をしていたそうです。父親は、かなり日本が好きで、富士山に二回登っています。アメリカに帰った後も、テネシーにあるリンカーンメモリアルユニバーシティで日本語をとったので、日本語で手紙が来ていました。

――では、浅見さんも英語が話せる優等生で……。


浅見ベートーベン氏: とんでもない、毎日喧嘩ですよ(笑)。外見はアメリカ人そのものだけど、実は日本語しかしゃべれなくて……(笑)。時代が時代でしたので、見た目のせいで全く知らない人に石をぶつけられたりもしました。私は昔から負けん気が強く「このやろう」という気持ちでずいぶんと無茶をしていました。逆上がりをやろうとして落ちてしまって、救急車で運ばれたこともあります。荒川でおぼれそうになって、水泳部長の“えいちゃん”に助けてもらったのが、小学5年の頃だったかな。

生きているのが不思議なくらい(笑)。外が大好きで、昆虫採集とか、塩だけ持っていって畑になっているキュウリを食べたり、ドジョウをとったり。読書といえば、『鉄腕アトム』や『イガグリくん』という柔道マンガや『矢車剣之助』『鉄人28号』など。『産経新聞』に連載していた山川惣治の『少年ケニヤ』など、マンガばかり読んでいました。男の子とは喧嘩しましたが、女の人たちはものすごく優しくしてくれました (笑)。

“英語の秘訣”を同級生から教わる


――野性な感じがしますね(笑)。


浅見ベートーベン氏: 割と勉強もしてたんですよ(笑)。中学の頃はクラスで二番ぐらいだったかな。三年になって西荻窪の学校に転校したのですが、そこが勉強ができる学校で、皆優秀な生徒ばかり。その頃の友人に英語習得の秘訣を教わりました。「辞書に書いてある順番まで、全部覚えるんだ」と。そういう友人に刺激を受けて、東海大付属高校に進んで、一生懸命勉強をしました。

叔父が本好きで、叔父の部屋は四畳半でしたが、そこには夏目漱石、芥川龍之介、森鴎外、幸田露伴など、日本の古典、小説がたくさんありました。それを読んで国語が好きになりまして、「国学院へ行こうかな」とも思いました。ちょうどその頃、東京オリンピックが近づいていて、「外人が来るから、英語がいいかな」ということで、中三から米軍の放送を聴き始めました。AMの810、Far East Network(現AFN、American Forces Network)を聴いていても、初めは天気予報しかわからなかったのが、“門前の小僧習わぬ経を読む”で(笑)。徐々にわかるようになりました。

――その甲斐あって、IBMに職を得て、明大の商学部にも進まれます。


浅見ベートーベン氏: IBMに就職していたので、夜学で通いました。IBMでは国際調達室というところで、日本で色々な部品を購入して、テストをした上で、海外のIBMの工場や研究所に送っていました。周りには外国人がたくさんいて、100人のうち20人ぐらいは外国人。朝から晩まで英語で話したり、時には一緒に出張したりしているうちに、だんだんと会話もできるようになりました。初めてのことばかりで、どうやっていいのかもわかりませんでしたが、みなさん、すごくイケイケだったので、面白かったですよ。

鳥が本を運んできてくれた



浅見ベートーベン氏: 本を最初に出すことになったのは二十代も終わりの頃です。『野鳥の観察』(浅見明博名で出版)を保育社から、カラーブックスで出したのですが、15万部ぐらいでしょうか、多くの方に読んで頂きました。私が当初出版社に持ち込んだのは、「相撲」と「ナイフ」に関するものでした。どれも売れないと断られ、残ったネタの中に野鳥に関するものがありました。持ち込んだその晩に、編集者から「鳥の本を書きますか?」と電話がかかって決まりました。

――こちらにも鳥の本をご用意頂いています。音がでますね。


浅見ベートーベン氏: これはアメリカのものですが、鳥の鳴き声も入っています。私が撮った、隼が突っ込むところの写真も載っています。こういう写真を撮るために、朝6、7時~午後5時ぐらいまで座っていることもあります。急降下の速度は300㎞超えるといわれていますので、それにあわせて重たい望遠レンズを振るのは、結構大変ですよ。

――このほど、Kindleで24冊目と25冊目となるBirds of Mt. Fuji新富士の鳥』が発売されました。


浅見ベートーベン氏: KindleのAnimals部門で第一位にランクされました。世界中の人に届くのは、とても嬉しいことです。鳥の話ばかりしてしまいましたが(笑)、実はそこから英語の本に結びつくのです。富士の五合目に奥庭荘というところがあって、ある時、そこで鳥を見ていたら、横に堀越さんという講談社の編集の方がいらっしゃいました。彼も鳥好きで、ビジネス英語の本についての不満を述べていたら、自分が書くことになりました。そうしてできた『場面別・ビジネスの英語 すぐ使える用例1000』もおかげさまで好評でした。そこから色んな英語教育の本を書くようになったんです。

――『ビジネスパーソンのための英語イディオム辞典』は、特に浅見さんの経験が詰まっているものになっていると思います。


浅見ベートーベン氏: 外資系で勤務した、30年間の現場の経験を詰め込んだものになりました。書くのにも4年かかりましたよ。例文が多ければ多いほど辞書としては使えるので、かなりの厚さとなりましたが、それでもずいぶん編集の人に削られました。辞書コーナーが広くない書店さんもあるので、これぐらいが限界かなと。今は、CASIOの電子辞書としても出ています。発音も確認できますし、便利ですね。私の職場は43畳あるのですが、高さ6mで、「本が落ちてきたら、あなた、死ぬわよ」と女房に言われています(笑)。野鳥関係の本や辞書だと一冊5㎏ぐらいのものもあるんです。危ないですよね。

執筆を支えるこだわりの文具たち


――文具に対するこだわりも強いとか。


浅見ベートーベン氏: 電子媒体は五台持っていて、電子辞書も同時通訳の人がやるようにずらーっと並べて使っています。日々の原稿は「ポメラ」というデジタルメモを使っていて、そこに日々の思ったことなどを打ち込んで、後でワープロに入れるのです。「閉じてパタン」の2秒で、セーブしてくれるので便利ですよ。今、世の中で一番書きやすいと思っているのが、「パーカーの5th ジェネレーションインジェニュイティ」です。私は色々なところから情報を集めるために、毎日A4で約20ページ書くのですが、これだと全然手が痛くなりません。

“Shoot anywhere you want and call it a target.”


――一冊の本には、様々な工夫が隠れていたのですね。


浅見ベートーベン氏: 他の本より必ず+α、何かいいことがある本にしたいという想いで書いています。余談ですが、この“+α”も実は間違った英語で、もとは未知数である+Xからきています。特にこういった英語教育の本になると、色々な情報をまとめただけ、という形になりがちですが、自分自身の経験や思いを入れない限り、届く本にはなりません。自分が実際に困ったりしたことなど、失敗談や経験を盛り込んで初めて、“ユニーク”さが生まれます。ビートルズのカバーをやっていても、ビートルズを超えることはありません。オリジナルなもので、読者がハラオチするもの。筑波大学で教えていても、「伝える」「届ける」ことについて、いろいろな課題が見えてきました。どんなに言うことが立派でも、学生が気持ちよく理解しなければダメです。

――間違い探しではなく、いかにモチベーションを上げるかが大事なのですね。


浅見ベートーベン氏: そうしてこれからの社会を生きる「英語」というツールをしっかり身につけてほしいと願っています。インターネットにおいては、コンテンツの75パーセントくらいは英語と言われています。日本語は4パーセントぐらい。英語のボキャブラリーがあれば、その75%に到達できるわけですよ。これだけ便利になったんだから、それを使わない手はないですよね。その得たツールを武器に、「+X」の世界へ挑戦してほしいですね。私の好きな英語の言葉に“Shoot anywhere you want and call it a target”というのがあります。「どこでもいいからぶっ放して、当たったところを的だと言え」というものです。これだと思うものをとにかくやってみて、当たればそれが的だと宣言できるわけです。自ら棚をゆすって、ボタモチを落して取らないといけません。

――浅見さんは今、どんな挑戦をされているのでしょう。


浅見ベートーベン氏: ずっとやってきた相撲に関するものを本にしたいと思っています。白鵬も32回目の優勝を果たしましたし、『白鵬の技の秘密』というものをNHKから出すことになっています。私が筑波で教えていた子の中には、中国、韓国、モンゴル、ロシア、スペイン、フランスなど色々な国の人がいますので、そういった言語でも出そうと思っています。国を代表するスポーツなのだから、色々な言語にした方がいいですよね。そうしないともったいない。そうそう、もう一つ大事な話を忘れていました(笑)。先ほどカバーしても、オリジナルを超えられないという話をしたばかりですが、島津亜矢さんは別格。誰の曲をカバーしても、彼女はうまいから、聞いていてすごく元気になります。彼女は30周年を迎えるのですが、私もファンクラブに入りました。毎日1時間ぐらい聴いていて、今はそれが活動力の源となっています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 浅見ベートーベン

この著者のタグ: 『英語』 『漫画』 『スポーツ』 『チャレンジ』 『海外』 『プレゼンテーション』 『コンピュータ』 『インターネット』 『こだわり』 『ビジネス』 『研究』 『モチベーション』 『新聞』 『日本語』 『現場』

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