目で見て、直接肌で触れた感動を伝えたい
――今まで、多くの本に「感動」を載せて伝えてきました。
櫻井寛氏: 一冊の本は、担当編集者の情熱で生まれると思います。担当の編集者が「こういう本を作りたい」と依頼が来て、それに対して僕が答えるところから始まります。今、週刊で「日経新聞」、「毎日小学生新聞」、「毎日のデジタル」、他に月刊誌を何本かやっていますが、仕事が多くて余裕がないときは出版の仕事はありがたいけれどなかなか気が進みません。そんなときは、うまい編集者にのせられて内堀、外堀と攻められて、結局書くことになります。そういう時、編集者の素晴らしさを感じますね。その後、幾度かの原稿のやり取りを経て、本になります。昔、原稿は手渡しで、フリーになった時まず買ったのは50ccのホンダ・ロードパル、通称「ラッタッタ」でした。「新潮社」、「講談社」、一番番遠いところで築地の「朝日新聞社」まで行っていました。あのころ、週刊誌では『aera』と『サンデー毎日』で仕事をしていて、その納品もバイクでしていましたよ。
――直接、顔を会わせる機会が多かったのですね。
櫻井寛氏: 今はメールやネットの時代で便利になったので、だいぶ少なくなりましたが、雑誌や本でも直接会うことは大切です。取材においても同じで、現地へ行かずにネットで情報収集は出来ますが、実際に自分の目で見て、においや音を肌で感じて写真に撮ったり、文章にすることで感動が伝わる。それは未知のものへの好奇心。それを自分の目で見て、その時の感動と一緒に写真に収めたいという、カメラマンの精神でしょうね。
――櫻井さんの好奇心は今どこに向かっていますか。
櫻井寛氏: 世界で鉄道のある国は約140カ国。そのうち旅客列車が走っている国が、120カ国です。僕は今90カ国廻りましたが、100カ国100冊が当面の目標です。現場に行くということが、一番大事。全く英語すら通じないところで、いかに飯を食うか、宿に泊まるか、交通機関を捕まえるか。窮地を切り抜けたことは、今まで何回もありますが、そうした熱気や感動をこれからも伝えていきたいと思います。
(聞き手:沖中幸太郎)
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