半歩先の知恵を書く
菅原裕子氏: 出版社に「菅原さん、本を書きましょう」と声をかけていただいたのです。でも、何を書けばいいのかわかりませんでした。独立したころ、講演の時にでも買っていただこうと思って作った、ハートフルコミュニケーションの小冊子を持っていたので、「これですか」と聞くと、「今やっていることを書きなさい」と言われたのです。初めてなので、本の書き方も分からず、不安でしたが、編集者に書いては見せて、直してもらって、という作業を繰り返してできあがりました。それから間もなくして、講談社現代新書から「コーチングの本を書きませんか」という話が来て、二冊目の『コーチングの技術』を書くことになったのです。
――本を書く時、どんなことを意識していますか。
菅原裕子氏: 大事なことは、人々が何を聞きたいか、どんな知恵を求めているかだと思います。私が学んできて思っていることをみんなが知れば、もっと色々なことが簡単にできると思うのですが、あまりに全部を書いても、みなさんが喜んでくださるかというと、そうでもない。半歩くらい先のことであれば、「これは面白い」「簡単に読めました」「やってみたいと思います」というような反応です。だから『子どもの心のコーチング』は、まさに半歩先の本だったので、たくさんの方に読んでいただけたのだと思います。
――半歩先というのはどういう感覚なのでしょう。
菅原裕子氏: 身近に感じるということでしょうか。読んだ人が「私もこう思っていたけど、言葉にするのは難しかった。それをこの人は言葉にしてくれている。ありがとう。私、やってみるわ」となるような感じが一番いいのかなと思います。
編集者に励まされて
――そういうふうに導いてくれるのが編集者ですね。
菅原裕子氏: そうですね。よく、言葉が難しいと言われます。私は仕事の世界で生きてきた人間なので、ビジネス用語を使ってしまいます。ビジネス用語は、聞く人にとって硬くて難しくて冷たい。『子どもの心のコーチング』とか、子育ての本にビジネス用語を使ってもね。だから、1冊の本を書くのにすごく時間がかかって、嫌になりますけど、編集者に励まされながら書いています。編集者は、読者が読みたがっているものを教えてくれたり、だからこういうことを書きましょうという指針を示してくれます。それに私の言いたいことを合わせれば、世の中に出せる。そういうアイデアをいただけます。間もなく、3月17日ころ、次の本が出る予定です。今回の本は、今まで私が書いてきた本から、色々なテーマをピックアップして、それぞれを深めていくような本です。この本も、編集者から「こういう本を作りましょう」というアイデアをいただいて実現しました。
著書一覧『 菅原裕子 』