3歩進んで、2歩下がる読書
――読み手としてはいかがでしょう。
菅原裕子氏: 色々ありますけれども、今は河合隼雄先生の本を読んでいます。分かりやすく書かれていますが、それを翻訳できるほどに理解しようとすると、やはり難しいです。理解して、自分の言葉で説明するために、あるフレーズを何度も何度も読みます。だから全然進みません。老子を読んでも、「だめだ、まだ私はこれを理解するに至っていない」と思います(笑)。通訳としては元を入れないと通訳ができないので、一生懸命吸収して、なんとか分かりやすくと考えて書いています。ですから、私の書いた本が「1時間で読めました」「2時間で読めました」と言われると、「ああ良かった」と思います。
電子書籍にも興味はありますが、まだあわてなくていいと思って。こうしてページをめくって読むのが好きなので。「こんな本もある」と発見があって、書店はいいですよね。でも、買ったのに読んでいないと罪悪感を感じるので、衝動買いには気を付けています(笑)。河合先生や老子の本のように、私の本棚にも「読めていないコーナー」があって、そこを見る度に対峙している感覚というか、「待っていろよ」と。そこが紙の本の良さかもしれません。
――仕事で読まれる本などには、書き込んだりするのですか。
菅原裕子氏: 私は書き込みができないたちなので、メモを取ります。本に関しては親から「教科書に書き込んではいけない。教科書はきれいに使いなさい」と教育を受けてきたものですから。父が教育者だったので、家には当時私には絶対読めないような本がたくさん並んでいました。その片隅に子どもたちが読める『世界少年少女文学全集』があって、夢中になって読みました。
――本はどんな存在ですか。
菅原裕子氏: 本は冒険です。考えられないほどの冒険が詰まっています。『世界少年少女文学全集』で、『十五少年漂流記』を読んで、自分が本当に島に行ったらどう暮らすか考えましたね。私の知らない世界を教えてくれます。
世の中に恩返しを
――知らない世界見せてくれる本、菅原さんはどんな想いを届けてくれるのでしょうか。
菅原裕子氏: まだまだコミュニケーションの世界は、理解されていないことが多く、よりたくさん「通訳」し、伝えたいと思っています。そのために、ハートフルコミュニケーションの本を、もっと書いていきたいと思っています。子どもの問題で悩んでいる親たちが多いので、その悩みが解決できるような分かりやすい本を書いていきたいですね。
また最近、本当に日本語の使える、賢い子どもたちを育てていかなければいけないと思っています。グローバル社会で英語が話せないと仕事にならないと言われていますが、まず母国語をしっかりと話せないと、英語も話せません。鍛えなければいけないのは、思考をつかさどる言語なのです。それをどうやって教えればきちんと伝わるかなと考えています。
『子どもの心のコーチング』が10万部20万部となった時に、「ハートフルコミュニケーション一つに絞ってやっていきますか」と聞かれたことがあります。私としては、ビジネスとハートフルコミュニケーションの両方を続けていきたいと思っています。世の中から、「もう要らないよ」と言っていただけるまで、企業や世の中のお役に立ちたいですね。「成功ではなく成長したい」と思っています。私自身の成長を、世の中に還元していきたいと思います。
(聞き手:沖中幸太郎)
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