父を助けるため 試行錯誤の日々がもたらしてくれたもの
須﨑恭彦氏: そんな節目、節目に厳しさと愛情を併せ持ったアドバイスをくれていた父が、大学院に入って4年目の4月1日に脳梗塞で倒れました。母から電話があったのですが、最初はエイプリールフールの悪い冗談かと思いました。ですが、いつもとは違う母のリアクションを感じて病院に行ってみると、父は半身不随になっていました。病院でまず言われたのは「職場復帰は諦めてください」ということ。「残された機能をどう活かすかということだけ考えてください」と言われました。
当時の私たちには「治そうとはしてもらえないんだ…」と感じ、それなら、自分たちでできることをやってみようと決心しました。大学にいると、どうしてもエビデンスの有無ばかりに焦点が合い、データがないから駄目だ…などと思っていたのですが、父親が倒れた時は、さすがになんでもいいからやってみようと思いました。そこで、いろいろ調べながら、担当医に「責任は問わないから、食事に関しては、こちらに主導権を握らせてくれ。一筆書いてもいいし、録音してもいい。訴えないと言っているのだから、お願いします。」と直談判しました。そうして、自分で調べた食事療法をおこなったのですが、高血圧、高脂血症は下がったものの、さすがに脳の機能回復は難しくて。夢破れて、肩を落として東京に戻りました。
その時に、「これだけ勉強したのだから、犬にやったら成功するのでは」という錯覚に陥り、ネット上で人間の食事療法のコミュニティーがあって、そこで希望者を募って実際にやってみたら、1頭目、2頭目と上手くいったのです。ただの勘違いだったのかもしれませんが、立て続けに成功してしまったので、勘違いが確信に変わってしまったのですね(笑)。お陰で、この道で生きていこうという決意ができました。
――父親のための試行錯誤が、今の道に繋がっていったのですね。
須﨑恭彦氏: ところがやはり、食事で改善しないケースもありました。体内の環境を整えることで改善に繋げるというアプローチなので、食材からの供給だけでは栄養素の不足を補えないこともあるわけです。そのような場合は他の方法を調べ、サプリメントを補給してみました。それで改善するケースもあるのですが、それでも改善しないことも出てきます。そうしたら次はハーブや漢方を取り入れてみよう、それで十分で無ければ鍼治療をやってみよう。それでもダメなら…と、治療法をチャート図のように作っていったのです。この様に、さまよい、試行錯誤しながら今日に至ります。