健全な自尊心を育む
――『この人と結婚していいの』(新潮文庫)は、20万部に。
石井希尚氏: おかげさまで、多くの人々に届きました。こうした活動を通して、ぼくもまわりも少しずつ、進化してきたように思います。音楽もゴスペル“福音”として,『HEAVENESE』につながっていきました。ぼくは自己否定的な音楽はあまり好きではありません。自己肯定できない限り、宗教も信仰も何の役にも立ちません。今の日本の若者たちはみな、危機的なアイデンティティー・クライシスに陥っています。他国では当然の「自らの国を誇りに思う」ということが、戦後教育体制を未だに引きずったこの国では、出来ていないのです。
「日本人であることに誇りを持つことが許されない」――こうした自己矛盾は人間の精神の崩壊を招きます。こんなに“豊かないい国”だと世界から思われているのに、自殺者が年間3万人を超えるのは、どれだけ精神が病んでいるかという証拠にほかなりません。この現状をなんとかして変えたいのです。自分の存在そのものに、健全な誇りとプライドを持つしかありません。「日本人」ということに絶対的な誇りとプライドを持つことができれば、「日本人だから頑張れる」という揺るぎのない自信につながります。
――その愛国心は他国の尊重につながる、と。
石井希尚氏: ぼくは偏狭な民族主義や差別、戦争には反対です。大切にしたい歴史・伝統の中にも見直されるべきこともあるし、ときには戦わなくてはいけないこともあるかと思います。自国や自分に誇りとプライドを持てない人は、他人にもそういったものを持つことができません。自国を愛することは、他国を犯すことではありません。むしろ、反戦の精神です。牧師であるぼくにとって、右も左も関係ありません。聖書という土台の上に立ち、保守とリベラル、民族を超えた世界への懸け橋となって、日本の魅力を発信し続けたいと思います。
(聞き手:沖中幸太郎)
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