「ばったり感」が、ワクワクを産む
本田哲也氏: 今でも本や映画は好きで、書店などは2~3時間、こもってしまいます。お目当てのものは、あらかじめネットで購入しますが、「本」との出会いは大切にしたいですね。
書店が本を購入するためだけの場所じゃ、もったいないですよ。
――戦略PR視点から見る、書店の役割とは。
本田哲也氏: やっぱり知的活動の源流としての出会いの場、ワクワク感じゃないでしょうか。セレンディピティは絶対必要で、過剰にターゲッティングされた合理的な世界を、読者は「面白い」とは思いません。
――本田さんの本にも「ばったり」が大事と。
本田哲也氏: 小難しく言うと偶発性や偶然性、これがないと面白くないですよね。情報の面白さというのは、それ自体がすごくいい作品だったり、クリエイティビティの高い広告だったりということもありますが、情報自体ではなくその情報との出会いにもあったりする。
そこが既定路線になったら、どんなにスーパークリエイターが作ったモノも、小説もとたんに面白くなくなってしまいます。やはり出会い方に、エキサイトメントがあって、それを助長するのが偶然の出会いだと思います。人の出会いと一緒で、「ご縁」が素敵。整然と並べられた商品を購入するよりも、雑然とした路地裏に何があるか分かんないみたいな「ばったり感」に楽しさを覚えるわけです。
――そんな、ばったり感と狙い撃ちで選ばれた(!?)本を、ご用意頂きました。
本田哲也氏: 『映画美術から学ぶ「世界」の作り方』と『HARD THINGS』です。前者はやはり書店で巡りあった本です。話題性で購入した『HARD THINGS』の方は、よくある経営者の本や、経営指南書に書いてある結果論ではなくて、もっと生々しい成功する過程、苦しさや、経営での苦難――まさに“HARD THINGS”が描かれています。読んでいると、胃が痛くなるんですけど(笑)、そこまで感じさせるリアリティが面白いですね。
戦略PRで世の中にインパクトを
――このほど、Jリーグのマーケティング委員に就任され、ますますたくさんの魅力をつなげていかれます。
本田哲也氏: 私たちの会社が手掛けている仕事は、まだまだ氷山の一角なんですね。自分の人生だけでは解決しきれないものをどこまでやれるか、最近考えていました。今回Jリーグのマーケティング委員を引き受けさせて頂いたのも、私がそこにチャレンジできる余裕を、他の社員が作ってくれるようになったおかげだと思っています。
もちろんこれからも、明日にでも明後日にでも新しい相談は持ち込まれてくるのですが、ひとつひとつワクワクしています。天職と感じている仕事を、プロフェッショナルとして全うしたい。持ち込まれる相談やクライアントに、規模の大小による優劣やプライオリティは基本ありません。ことの大小ではない、インパクトのある事柄を、これからも積極的に取り組んでいきたいと思います。
(聞き手:沖中幸太郎)
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