自己肯定感を持って、互いに支え合える世界を
――自己肯定の大切さを伝えられています。
明橋大二氏: 人は、他人から必要とされるということほど、支えになるものはありません。これは子どもだけではなく、大人にも同じことが言えます。自殺や “暴走老人”の問題も根底には「誰も自分を必要としてくれない」という思いがあります。そういった思いを持たないために、自己肯定感が必要なのです。お金があっても寂しい思いをしている人もいますし、逆にお金がなくても、すごく豊かな生き方をしている人もいます。たとえ学歴がなくても、人とのつながりの中で支え合って、幸せに生きている人はたくさんいます。『五体不満足』という本を書いた乙武さんも、自己肯定感を口にしています。大切なのは、今の状況を肯定的に捉え、認めることです。
――それでも心が折れそうになったりした時は。
明橋大二氏: それを保つのも、やっぱり人とのつながりだと私は思います。有名な精神科医の斎藤環さんは「人薬(ひとぐすり)」と言われています。 “生きる意欲”を支えていくものは、「あなたのことが大切だよ」とか「あなたがいないと困るよ」というような温かい言葉なのです。自分の辛さをわかってくれたり、自分のことを心配してくれている人の言葉が何よりの薬だし、それによって立ち直っていくこともできます。
精神科の薬は医者でないと処方できませんが、人薬は、どんな人でも処方できます。親から子どもへ、それから同僚同士で声をかけ合うこともできるし、お年寄りに対してもかけることができます。お互いに「あなたが大切だよ」と言い合えるようになれば、もっと生きやすい世の中になっていくと信じています。多くの感想が寄せられますが、これからも心の支えになれる本を書き続けたい、届けたいと思います。
今取り組んでいるのは、「輝ける子」の原稿をもとにして、その後書いたQ&Aなどを加えた本です。「輝ける子」を世に問うて、13年たちますが、子どもたちをめぐる状況は、まったく変わっていないどころか、さらに悪化しているのではないかとさえ思います。
主に小学生の子どもに関わる親や先生、地域の人に読んでもらいたいと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
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