コーチの世界のNo.1を目指す
谷将貴氏: コーチの仕事を始めたのは、21歳の時でした。当時、プロゴルファーになるためには、まず練習場やゴルフ場の研修生にならなければいけませんでした。アメリカからの帰国後、地元のHighland Centerという、中学のゴルフ部の練習場だったところへ所属しました。そこは内藤雄士さんや江連忠さんなど、蒼々たる方々がやっていた、プロ講師のパイオニアのスクールでした。彼らにスイングを褒めていただき、そこで働いていました。
週に4日か5日、1日6時間の勤務時間ぐらいしか働いていませんでしたが、同学年より多い給料に調子に乗っていたのかもしれません。ところが26歳の時、雑誌に載っていたプロゴルファーの賞金額を見てしまって、「自分こんな小さい世界で、何を調子に乗っているんだ。ゼロの数が違う。これはまずい。」と思いました。そして、「10カ年計画を立て、36歳まで休まずに毎日働こう。そうして20代で独立してこの世界でNo.1になるんだ」と心の中で決めて、行動に移しました。
26歳でHighland Centerを辞めた後、次の職場でぼくをしたって通ってくれたお客様が来てくれたことは一生忘れられません。ゴルフレッスンの時間はわずか40分。そのために、電車を乗り継いで来てくれたお客様に「来てよかった」と思っていただける時間を絶対に提供したいと思いました。自分のためだとなかなかやらないのですが、この人たちのためだったら頑張れる――お客様の存在が、ぼくの力になりました。
やまない挑戦の先にあるもの
――独自のスイング理論を数多くの本にまとめられています。
谷将貴氏: 始めの頃から一貫して、自分のノウハウを、少しでもゴルファーにわかってもらえればいいかなという想いで出して、いつの間にか100冊を超えました。「本のおかげで、スコア80を切りました」とか、「これだけ飛ぶようになりました」といった反響をいただくと、嬉しさと同時に一冊の本の力を感じます。紙面の制約の中で伝えていかなければいけないのは、難しくもありますが、ゴルファーたちの悩み解決の糸口になってくれればいいなと思っています。でも、「本で上手くなっちゃったら、うちのスクールの経営が成り立たないな」とか思ったりもしますけど(笑)。
“人を楽しませたい”というところが自分の核にあるんだと思います。自分の原点に立ち返ってみると、人を盛り上げたり楽しませたりすることが好きなのだとはっきりとわかりました。ぼくは、人を楽しませるために、ゴルフコーチという切り口で全力で取り組んでいます。
そんなぼくも36歳の時に軽い燃え尽き症候群になって、目標を失って、しばらくは本当に酷い状態でした。でも、完全独立してからは、ネガティブとか、ストレスなどとは無縁です。会社名でもあるMAJORcreateにもあるように、メジャー選手を作っていくことが、これからの目標であり、ぼくの役目だと思っています。日本一にはなったので、次は世界一に。やりたいことの半分も、まだ到達していません。挑戦をやめずに、これからも突っ走っていきたいですね。
(聞き手:沖中幸太郎)
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