読者の幸せにつながる本を届ける
作家、エッセイストのいつかさん。世界で経験し磨いた感性を活かし、様々なジャンルの本を世に送り出しています。「読者が元気になれる本を」という、いつかさんの執筆と本にまつわる想いを、歩みとともに伺ってきました。
隠れた魅力を世の中に発信する
――様々なメディアに、色々な切り口で発信されています。
いつか氏: 恋愛・結婚についてのエッセイや、ビジネスマンの成功と孤独に焦点をあてたビジネス書、また、旅が好きで今まで50カ国以上を旅しているのですが、旅行作家として原稿を頼まれることもあります。
よく作家は「先生」と呼ばれますが、私自身にそういう気持ちは全くありません。もともとコピーライターで、サービス業という意識が強いのです。コピーライティングや商品開発などを手がけてきたので、とにかく良い商品を数多くの消費者に伝えられたら、ということを考えてきました。
また、私が書くだけでなく、出版のプロデュースもしています。世の中の「面白い人」の、まだ知られていない魅力を、世の中にPRしてきました。これまでにプロデュースしてきた人たちが、本を書いたりメディアに登場するようになっています。
多感な時代とともに過ごした本
いつか氏: 私が通っていた高校はアメリカン・スクールのような校風で、自由な雰囲気の中でいろいろなものを吸収しました。原宿のホコ天(歩行者天国)でロックンローラーとローラースケートをして遊んでいた頃、雑誌の読者モデルとしてスカウトされ、『少年KING』『GALS LIFE&CITY』に出るようになったのが、社会との接点の始まりですね。
その後、親の仕事の都合で叔母のいるアメリカに渡り、ニューヨークへ行きました。
アメリカから日本へ帰国したばかりのジャズ・ミュージシャンの紹介で、ハービー・ハンコックや、クインシー・ジョーンズのバッグバンド宅にホームステイし、昼間はギャラリー、夜はライブハウスをめぐるなかで、多くのアーティストと出会い、感性を磨きました。当時は、マドンナがデビューしたての頃で、キース・へリングも生きていて、ストリート・パフォーマンスがまだ行われていた、とても面白い時代で、私もインスパイアされました。
帰国後はコピーライターとして、商品企画、ネーミング、インタビュー、広告・雑誌編集とマスコミの仕事を経験しました。
――いろいろな場所で経験を積み、感性を磨かれていますね。
いつか氏: さまざまな人、そして「本」という媒体で、世界が広がりました。中学の先生に薦められた『出家とその弟子』や、クラブDJの子にもらったロラン・バルトの『明るい部屋』は、いまだに忘れられない本です。色使いも素敵なグリーンで、素敵な本でしたね。
特定のジャンルにこだわっていません。山田詠美さんや村上龍さんの世界観が好きです。マルグリット・デュラスの『ラマン』や、ヘンリー・ミラーの本も好きですね。8番目の奥様のホキ徳田さんのピアノ・バーには、通わせていただいております。冒険小説としてはミヒャエル・エンデの『モモ』ですね。
私にとって「本」は、そして自分の何倍もの経験値を吸収することのできる、素晴らしいものです。必要なものだけを購入するのではなく、あらゆるジャンルを読むことで、思ってもみなかった出会いがあるのです。
一度書店に立ち寄ると、隅々までまわらないと気が済まないので、いつもヘトヘトになっています(笑)。また、書棚は社会を映す鏡でもあるので、どんなトピックが世の中で必要とされているのか、どんな人が活躍しているのか、そこを一通りマーケティングリサーチをしています。
経験を活かし 新たな挑戦で想いを届ける
いつか氏: コピーライターを経て作家になっているので、常に読み手の気持ちを考えた本づくりをおこなっています。「そっと肩を押すような、生きることを応援するものを届ける」それは最初の本、『別れたほうがイイ男 手放してはいけないイイ男』から、変わらない想いです。
逆に「本」を通じて、みなさんから元気をいただいています。SNSや、サイン会に来てくださる読者からも、大きな愛を感じています。そうした私の言葉を読みたい、聞きたいと思ってくださる方々を応援する、そしてその後の結果につなげる本を描き続けたいですね。
――行動につながる本を。
いつか氏: 昨年末に発売した『一流のサービスを受ける人になる方法』も、若い世代に読んでいただき、実際に街に出て、大人の遊びを体感していただきたいと思って書いた本です。サービスを「する側」の本は多いと思いますが、この本はそれを「受ける側」の視点で書いています。今すぐ動けるための外見上のアドバイスだけでなく、相手を尊重し感謝を持ってサービスをリクエストするなど、想いやスマートな心構えの部分についても書きました。また次回作は、9月15日発売の『モテ上司』(実業之日本社)。上司が部下をうまく活用する秘密の流儀を書いています。
――経験を活かし、新たな挑戦で広げる。
いつか氏: 私、写真を撮る時も、いまだに「真ん中に入ると魂が抜かれちゃうんじゃないか」なんて、明治の人間かと突っ込みたくなるぐらい、超アナログ人間なんです(笑)。周囲の最先端のデジタルな人たちの助けを借りながら、私自身は昭和のスタイルで、この世の中を見ていきたいと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 いつか 』