安田佳生

Profile

1965年大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。顧客企業への提案企画立案や自社マーケティング活動、商品開発を継続的におこない、新たな事業展開を牽引。広告戦略や人材採用の新たな試みは、まず自社を実験場として取り組み、顧客への提案商品へと体系化している。社長業のかたわら、外部団体主催・経営者向けセミナー講師、書籍の執筆、経営誌への寄稿、メールマガジンの発行などもおこなう。著書は『ぐっとくる?』、『検索は、するな。』、『千円札は拾うな。』(サンマーク出版)など多数。

Book Information

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―― 今回はお忙しいところありがとうございます。早速ですが、電子書籍はご利用されていますか。

安田佳生氏: いえ、そもそも電子書籍を買ったことがないのですが、あれは期限付きなのですか。それとも買った本は、自分のものになるのですか。

―― 両方あります。他にも買った後に、最新情報など新しく更新される場合追加で盛り込むことができるものもありますね。今のところ、電子書籍は特に利用されてないということですけれども、今後利用するご予定はありますか。また書籍に限らず、何か電子化し効率化を図るようなことはありますか。


安田佳生氏: 買ってみたいですね。ただ、iPad持ってないんです。iPhoneで読みますが少し辛いですね。電車に乗る時とか、(時間が)ギリギリで買えない時とかにいいですよね。新幹線の中でも購入できるのですよね、電子書籍なら。

―― そうですね、ネット環境さえあれば電子書籍ストアで買う分には問題はないかと思います。


安田佳生氏: 元の本は裁断するということは、破棄するのですか。

―― はい、破棄されます。


安田佳生氏: 持ち出すのであれば、漫画の方がいいですよね。小説であれば1冊持ち歩くことも大した苦労ではありませんが、漫画の場合は出張中読むとき等、10冊ぐらい持って行かないといけないので、これは電子書籍化した方が便利だなと思います。

―― やはり漫画はスラスラ読める分かさばってしまいますが、たくさん持つ訳にもいかないので漫画の需要も高いですね。


安田佳生氏: 漫画喫茶とかも、読むスペースを大きくして、あとは全部電子書籍化して好きなやつを読めるようにしたら、もっと流行ると思いますね。喫茶店もそういうことを取り上げたらいいと思います。

―― そうですね。ところで主に紙の本を読まれるということですが、月平均どのくらい読まれますか。


安田佳生氏: あまり読まないです。漫画以外であれば、大体月1、2冊、多く読んでも3冊ですね。

―― どういったジャンルの本を読まれますか。ビジネス本でしょうか。




安田佳生氏: 小説が圧倒的に多いですね。東野圭吾とか、村上春樹とか、伊坂幸太郎とか。

―― そうですか。ビジネス本をたくさん読まれているかと思いました。


安田佳生氏: 今は読まないですよ、自分では書きますけど。ビジネス本や、ハウツー本は、ノウハウとか答えとかを求めて読むのだと思いますが、基本的に答えなんて無いと思っているのです。営業力がつく方法とか、結局いろんな本を読んで自分がそれに触発されて考えるのが大事だと思います。その点、小説においても一緒だと思いますが、僕の場合は小説から何かひらめきますね。

―― ジャンルに拘らず、ひらめきを引き出せるものであれば良いといことですね。


安田佳生氏: そうですね。小阪裕司さんの本だけは読みますね。面白いので。読者に対してわかりやすく書くというサービス精神のある、作家だと思います。

―― 物語性のある文章を書かれているということですよね。


安田佳生氏: 読者がわかるかどうかですね。苦労して読まないと全部読破できなかったりするじゃないですか。ジャック・ウェルチの『わが経営』にしても上・下で買いましたけど、結局最初の何ページか読んで、やめてしまいましたし。やはり途中で読むのをやめるというのは、筆者の文章スキルの問題だと思います。

―― 伝えることが仕事の一つであれば、やはりそこで読まれるかどうかの差が出てくるかもしれないですね。


安田佳生氏: そうですよね。僕も短い文章をセットにして完結するようなものをたくさん集めようと思って、イラストと、文章の絵日記を書いています。長い文章を読解できる人が少なくなってきていますし。

―― 漫画がここまで世界的に広がった理由も、視覚的に伝えられる効果に依る所が大きいですよね。最近でも、企業のWebサイト上でも漫画を活用したりしていますね。漫画は結構読まれるのですか。


安田佳生氏: オールジャンル、読みますね。本当は、もし余裕があれば1年くらい漫画喫茶に入り浸りたいですね。漫画喫茶にある本を全部検索できるものが売っていれば、絶対買いますよ。そしたらいつでも読めるじゃないですか。

―― なるほど、まさしくそれが電子のメリットなんですね。では、新刊についてお伺いします。プレジデント社から出された『私、社長ではなくなりました。ワイキューブとの7435日』。ノンフィクションの物語のような、読んでいる私もドキドキして、あっという間に読み終えました。大体どのくらいの期間で書き上げられましたか?


安田佳生氏: 半年位ですね。同じペースで書きますね。書こうと思ったら1ヶ月で書けますよ。それしかやらなければ。その位が限界じゃないですか、1冊の本書くのには。

―― 7435日と長い期間でしたが、その長い記録を『書こう』と決めたのは大体いつ頃でしたか


安田佳生氏: 書かねばならないとは思っていました、会社が潰れた時に。今までずっとBtoBでやってきましたが、今後は一人で新しいジャンルの作家としてやっていこうと考えています。今まで色々なビジネス書にノウハウとか書いてきましたので、それを読んでくれた人への区切りと、自分の人生の区切りという意味で。ちょうど、プレジデント社さんからお話があったので。

―― 何かしたいと思ったら必ずする、何かをせずにはいられない、という内容がありましたが、今回に関してもそれが出発点になったのでしょうか。


安田佳生氏: そうですね、ある意味、責任であり、ある意味、自分勝手な本です。今までに書いた本は、自分なりに何かを伝えようと思って書いてきましたが、今回は実際20年で何があったかを書いただけなので読んで参考になる人もいるかもしれないですけど、全く役に立たないと感じる人は、いると思いますね。こういう生き方している人もいたのだな、バカな社長もいたもんだなと思ってくれれば、僕としてはそれで十分です。

―― 区切り、境目を迎えられた訳ですが心境はどのように変化しましたか。変わったこと変わらないこと、あると思いますが。


安田佳生氏: う~ん。(しばらく考えてから)基本的には一緒ですよ。自分の人生を通して、自分の疑問に思ったこととか感じたことを一個一個突き詰めながら、何らかの形で自分が得た知識なり経験を世の中に発信したいと思っています。それを株式会社という形のキャンバスみたいなものを使って表現していた訳です。自分が実験したいこと、やりたいことは大概やりました。だけど、会社は迷惑を掛けてしまうので。お客さんももちろんですが、中のいる社員も引っ張り回してしまうので。だから、ここから先は一人でやろうと思いました。ですが、やろうと思っていることは一緒ですね。ですので、一人でやろう!ということを決めたということでしょうか。変化としては。

―― 今まで一緒に頑張られてきた仲間と、今でも一緒に何かされていたりしますか。




安田佳生氏: そうですね、仲良いので『また会社作ってやりましょうよ』って言ってくれるのですが、そういう気はもうないですね。もう社長と社員という形でお付き合いするのは終わりにしたいということですね。

―― 今回の本には自身に対する『誤算』だとか『脱落』というような、ちょっとハッとするようなキーワードがありましたが、冷静にならないと、自分自身のことをそのように表せないと思うのですが。


安田佳生氏: 時間が経たないとわかんないですね。その時は正しいと思ってやるので。

―― 冷静に見つめられるようになったのは、やはり一呼吸置いたからでしょうか。


安田佳生氏: 出発が無くなったからでしょうね。終わったから、冷静になれるということです。まだ社長だったら書けないですね、この本は。終わって、もう一年近く経ちますから。民事再生して半年くらい経って、いろいろ失ったものとか、変わったこととか、失うであろうと思っていたが失わなかったものとか、いろんなものが明確になって、それで書けるようになったのでしょうね。

―― 話を電子書籍に戻します。今、実際タブレット型のもので本を読むことに抵抗感はありますか。『やはり紙の、めくる感覚がいいな』とかですね。


安田佳生氏: いや、全然ないですね。読めればいいと思います。それから購入する面倒臭さから、簡単になればそれでいいです。あとはやはり僕は漫画を読みたいのですが、iPadを持ち歩くのは面倒臭い感じはします。もっと薄くなって半分に折りたためたらいいなと思います。

―― 電子ペーパーですね、ペラペラの紙のような形で。未来を行き来する映画の中で、新聞の写真欄が変わったり動画になったりする、そういうシーンを思い出しました。そういう形のものになれば、大きく変わってくる可能性がありますね。


安田佳生氏: 本より軽くなれば、変わるでしょうね、外面は。

―― 本自体はもちろん紙も含め無くならないと思いますが。


安田佳生氏: ただ、今メインで電子書籍で読んでる人少ないですよね、まだ。



―― そうでしょうね、おそらく割合にすると、紙の方がまだ多いっていう状況になって、それこそ境目、過渡期にあると思います。


安田佳生氏: 僕も今まで書いた本、一応電子書籍にしましたが、マーケットがまだ整ってないっというか、読んでくれる人がいないので、99.9%が紙の本で売れましたね。

―― 電子書籍がもっともっと広まった時、それぞれ読み手と書き手、どういった変化が生じてくると思いますか。


安田佳生氏: 今でも電子書籍としてこれ作りたいなっていうものがありますが、あくまで僕の場合ですが、書籍を電子化するっていうよりは、電子書籍として読んでもらえるためにはどういう書き方した方がいいんだろうということは、考えると思います。普通の本であればタイトルとか、目次とかが売れるかどうかの決め手になる。そしてそれは、陳列されて販売されているので、目立つかどうかも重要です。しかし電子書籍の場合は、単発のページを、1ページを読んでみて面白いかどうか、それがすごく大事になってくると思います。

―― そういったことを意識した書き方に変化するわけですね。


安田佳生氏: 僕がもし作るのであればそうします。だから内容的に、どうしても簡潔化せざるを得ないです。薄くなるというか、漫画に近づくイメージでしょうか。逆に、紙の本にするには耐えられないというものが、(電子書籍として出すには)ちょうどいいかなという感じがします。それと電子書籍じゃないとこれは作品として成り立たないというものが、出てくるんじゃないですか。文章量の少ない、携帯小説なども本に、紙にできるのもあるんでしょうけど、紙にするのは耐えられないっていうのは一杯あると思うのですよ。でも携帯小説であれば十分というものが。逆に夏目漱石を携帯で読むのは、厳しい場合もありますからね。

―― それぞれに合った書き方が存在してきそうですね。また電子書籍の普及で、情報を発信しやすくなってプロとアマの垣根も、低くなるかもしれないですね。


安田佳生氏: 別の形のプロっていうことになるんじゃないですか?漫画を描くプロと、文章を書くプロと、音楽作るプロみたいなもので。



―― なるほど。電子書籍のプロですね。


安田佳生氏: 今は、まだ少ないから誰でも読んでくれますけど、当然書く人が増えたら、その中で読まれるものはそれなりのプロになるのではないでしょうか。

―― 読み手としてはどういった期待をされますか。


安田佳生氏: 僕は、採用の仕事をずっとやっていました。昔は就職は情報誌だったんですよ。紙だったのです。それがいち早くWeb化されて、検索できますよね。そうすると、昔みたいなパラパラっとめくっていたら面白そうな感じのものがあったというような偶然性がなくなるのではないかと思います。条件を入れて検索すると最終的に自分が知っている業種とか、知っているところまでしか行きつかない。本の場合も、本屋行ってたまたま歩いてたら、ちょっと手に取った本が自分の人生変えたりするという。電子化されると、そういう偶然性がたぶん無くなるのではないかという気がしていまして、それは非常に残念ですね。自分で本を購入する際、自分の知っている本を買うか、興味あるジャンルから探すかするので。本当はそうではないものが、結構人生に影響を与えると思うのですが。

―― それはありますね。偶然性、の概念が変化するのだと思います。今ですと何か買ったら、『あなたこういうのも好きじゃないですか?』というのを結局、同ジャンルの中から選んだりしますよね。それが、面白いプログラミングというかアルゴリズムで、全く関係のない反対のものも出てくれたらいいですね。偶然性とは言い難いところはありますが。


安田佳生氏: そこをうまくアレンジした検索機能を考えたら、すごくヒットするのではないでしょうか。それから偶然というのは、文字通りの偶然ではなくて、偶然の必然みたいなものですよ。人との出会いなんかもそうだと思います。

―― ちょっと雨の位置が1センチずれただけでも、いろんなことが変わって来ますよね理論上は。そこに人の足が乗ることによってこけるかもしれない、こけないかもしれない。そこに分岐点があって、こけていなかったら面接に間に合って受かったかもしれない。こけていたら、落ちていたかもしれない。しかし落ちたことによって・・・きりがないのですが(笑)。


安田佳生氏: そういうのから、成り立っていますよね、人の出会いも。例えば、なかなか彼氏のできない女の子で、しかしすごく大好きな人がいつか現れると思っている。そうじゃなくて今、知っている人の中で、なにかのきっかけがあってだんだん好きになっていくというのが、たぶん通常の恋愛であると思うのです。だから、何か理由があって本を読むんじゃなくて、たまたま読んだ本が自分にとってなくてはならない本になる、というようなものになると思います。

―― 人智を超えたところ、は欲しいですね。


安田佳生氏: 可能性は、雨が降るかどうかで無限大にある訳じゃないですか。でもその無限大の可能性だけの問題ではなくて、こけたということは運命なのですよ。それによって何を得るかっていうことではないでしょうか。こけないとしたらそれもまた運命ですしね。掴むかどうかですね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 安田佳生

この著者のタグ: 『漫画』 『生き方』 『可能性』 『紙』 『ノウハウ』 『マーケティング』 『ビジネス』 『新聞』 『ノンフィクション』 『生物学』 『人生』 『セミナー』 『経営者』 『プログラミング』 『メリット』 『書き方』

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