小宮一慶

Profile

1957年生まれ。京都大学法学部を卒業し、東京銀行(三菱東京UFJ銀行の前身の一つ)に入行。同行から派遣されてダートマス大学エイモスタック経営大学院でMBAを取得。本店でM&Aなどを担当した後、1991年、岡本行夫氏が代表を務める岡本アソシエイツに移籍し、同社の取締役に就任。1995年、現職。企業規模、業種を問わず、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、年100回以上の講演を行う。経営、会計・財務、経済、金融、仕事術から人生論まで多岐にわたるテーマの著書を発表。その数80冊以上、累計発行部数は220万部を超え、新聞・雑誌の執筆、テレビ出演も数多くこなす。近著は「こんな時代に会社を伸ばすたった一つの法則」

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個人の価値とは、どこに属しているかではなく、個人として何ができるか


――ご自著の中に子供が生まれて今までの自分とは違うようになってきたという箇所がありましたが、子供ができてどういったところが変わりましたか?


小宮一慶氏: 「結局自分って何だろう」と考えたんですよね。生物として子孫を残すという役割があるけれど、子供ができたということで、一応それを果たしたことになりますよね。じゃあ、大企業のサラリーマンをしていて、役割はあるけれど、自分がいなくても会社は回りますよね。それでいろいろなことを考え出すと、「自分しかできないことをやった方がいいんじゃない?」って考えるようになった。自分の能力、強みを活かせることをやろうと。

――考え方が変わったのはお子様が生まれたことがきっかけでしたか?


小宮一慶氏: 子供ができたのも一つのきっかけでしたよね。あとは、その前にアメリカに留学していたというのもきっかけだった。留学前は、いい学校出ていい会社に入ってそれに属しているのがステイタスだと思っていたけれど、向こうじゃそれって尊敬されないんですよね。別にいい会社にいるのは悪いことではないんだけれど、そこであなたは何をしているのかということが重要なんです。つまり団体としての尊敬はもちろんあるけれど、個のレベルまで落とし込まないと尊敬されないんですよ。

――その人の実績ということですか?


小宮一慶氏: 個人。全体でもいいというのは悪いことじゃないんですけれど、個人が大事ということですね。アメリカっていい意味でも悪い意味でも個人主義なんですよね。それは行ってみて気が付いた。アメリカから帰ってきてから「いい所に属していたらそれでいいか?」というところで、自分としては「物足りない」と思っていたというのもあります。銀行員は給料もいいし仕事も面白かったんですけれどね、何か自分でやってみたいなというのはありましたね。

――そんな中でいろいろな方たちと出会ってこられたんですね。


小宮一慶氏: 僕は結構運命論者なんですよ。だから全てのことは神様が決めていると思っている。出会って、お互いその出会いを活かせるか活かせないかということだと思うんですよね。だから縁を知って縁を活かすと言うじゃないですか。出会いや出来事を活かせるかどうかというのは、普段からいろんなことを考えているかとか、準備しているかということが大きいんじゃないでしょうか。

読書は安直に知識を得るものではない、読書が必要な本当の理由とは


――そういった準備する作業の一つとしての読書というのは重要ですか?


小宮一慶氏: いい本を読むというのはすごく大事ですよ。安直に知識を得るのではなくてね。知識に関して言えば、これだけネットが発達してくれば動画とか画像で得た方が早いと思うんですよ。そうじゃなくて、何度も何度も読み返して心に訴えかけるとか論理的思考力というのは、読書でしか得られないと思うんですね。「読書でしか得られない物とは何なのか」というのを良く考えた方がいいと思う。単なるノウハウだとかはビデオで見た方が分かりやすいと思うんですよね。

――想像力を鍛えるためにも読書は必要ですか?


小宮一慶氏: 文章というのはイメージ化しないといけないと思うんです。イメージでもらっちゃうと自分でイメージ化するという作業がもともとないんですよ。イメージはイメージの良いところがあるけれど、文章は自分の想像力を高めるという意味でも、そして難しいところでは論理的思考力を高められるという訓練だと思って読書するということですよね。

私が本を書く理由は、著作を通じて多くの人に役立つ喜び


――最後に2点お伺いしたいことがございます。今後やりたいなと思うことはなんですか?


小宮一慶氏: 本を100冊出したいですね。今85冊目まで出ているんですよ。もともと100冊という目標でやっていて、それは数年内に達成するんじゃないですかね。

――驚異的なスピードですよね。


小宮一慶氏: 書くことは好きだし、書くと形として残るでしょ。だから多くの人に喜んでもらえる可能性がある。それはとてもいいと思うんです。喋るのも嫌いじゃないんだけど、喋るのはその時限りじゃないですか。

――本だと、より多くの人に届けられますね。


小宮一慶氏: 例えば本を読んで喜んでくれた人がいて、「自分の人生が変わりました」とか、たまにお手紙を頂くのね。そうすると「その人に役立った」とすごく嬉しいですもんね。僕は経営コンサルタントだから経営の本もたくさん書いていて、その本を読んで「会社が良くなりました」と言ってくれる人も結構いるわけね。そうすると自分の存在意義というか、生きていて良かったなと思いますね。僕はたまたま物書きをしているので、自分の著作を通じて多くの人に喜んでもらえると大変ありがたいですよ。

読書は量より質、本は心と頭の糧


――最後に、小宮さんにとっての本、読書というのはずばりどういったものですか?


小宮一慶氏: 心と頭の糧ですよ。つまり心を豊かにする、頭を良くする、その両方の糧というのが本であり、読書ですね。さーっと本を読む人がいるけれどもったいないよね。僕はそんなにたくさん本を読まないんですよ、月に数冊ですよ、ちゃんと読むのは。その代わりきちんと読みます。何冊読んだかというより、どこまできっちり、深く読んだかが問題だと思うんですよ、深く読まないとね。

――そういう意味では、今月何冊読むという目標はあまり意味がないですか?


小宮一慶氏: 読まないより読んだほうがいいとは思いますが、私の場合には意味ないと思いますよね。それを競うのは勝手だけど、僕はそういう読み方をしないから、そういう読み方をするのはもったいないと思いますね。読んで自分の物にならないと意味ないですよ。自分の物になるというのは、読んだ内容を自分の言葉で喋れるということですよ。読んでわかったというのは、テレビを観て面白かったと言っているのと一緒なんですよ。そうではなくて、読んで自分の物になって、自分の言葉で喋れて、自分の生活とか人生に活かせないと意味がない。もっと言うとそういう本を読まないとだめなんですよ。テレビのニュースを見ているような本を読んでいたって仕方ないと思いますけどね。テレビ見た方が映像だってメッセージだって全然多いんだもの。さっきも言ったけれどイメージそのものをくれるから。そういうテレビのニュースを見ているのと同じような情報を得るだけの本も、もちろんあってもいいと思いますけれど、僕はそういう情報を得たいならテレビや画像、ネットで情報を得ますね。さっき言ったように、読書は心と頭の糧だから。イージーな時代だから余計に、「深く読んで、深く考える」といった読み方をした方が若い人には特にいいんじゃないかなと思います。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 小宮一慶

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