「できないこと」に挑戦し続け、固定観念をぶち壊す
午堂登紀雄さんは、不動産コンサルティング会社のプレミアム・インベストメント&パートナーズの代表取締役。ほかにも、FXに関する教育事業、出版コンサルティング事業等、幅広いビジネスに挑戦してきました。その失敗を恐れないチャレンジ精神の源の一つが数々の本との出会いだそうです。午堂さんに、本を自分の力にする読み方、執筆スタイル、出版業界の展望などをお聞きしました。
著作も企画書も、カフェで一気にアウトプット!
――お仕事の内容、またご自身の近況等をお聞かせいただけますか?
午堂登紀雄氏: 2年ほど前まで、30人位社員抱えた大きなオフィスで、色々なことをやりたいなと思って不動産の仲介の会社とか、スクールとか、それから通信販売もやっていましたが、そういう大所帯を抱えていると、身動きが取れないんですよね。「じゃあ、明日からちょっと海外へ行ってきます」みたいなことはできない。社員の目もありますからね。それで根っからの自由人の姿に戻ろうと思って、事業を分社化したんです。それぞれに社長をつけて、私はオーナーみたいな感じで今、割と自由になっています。
仕事もパソコン1台あれば、どこでもできるという環境にして、いわゆるノマドのような生活をして、昼間からふらふら、フリーターをやっているという感じですね。
――以前、毎日スターバックスで仕事されているとブログで拝見しましたが、今はどうされていますか?
午堂登紀雄氏: スタバにいると、すぐ顔と名前を覚えられる。注文しなくても、「ラテのグランデ入ります」とか店員さんがやってくれる(笑)。私は4、5時間ねばるので、さすがに恥ずかしいし、あんまり頻繁にいたら迷惑かなと思っていくつか転々としています。ドトールへ行ったり、パン屋さんのカフェに行ったり、散歩がてら立ち寄ったりという感じですね。
――執筆は、ほとんど外でされるのですか?
午堂登紀雄氏: 執筆は100%外ですね。家にいると、どうしてもネットサーフィンとかをしてしまって駄目なんですよ。生産性が下がる。カフェなら人の目があるじゃないですか。とりあえず寝ころがれないし。仕事の企画書とかも全部外で書いています。
――その場合、必要な資料はPCの中に保存されたり、クラウドに上げているのでしょうか?
午堂登紀雄氏: 大体、頭の中で練ったものをアウトプットするので、特に資料は必要なくて、基本的にパソコン1台で、クラウドサービスもあんまり使ってないですね。もちろんアウトプットする前にはインプットも必要で、項目出しとか、アイデアをジェネレーションするときに類書とか色々な本を読むので、そういうことは電車に乗っているときや、歩きながら、家で寝ころがりながら読んでいますね。色々な情報を集めて、それを一通りインプットして、頭の中でコネコネして、それをアウトプットする感じです。
人生の転機にはいつも「本」があった。
――インプットのお話が出ましたが、午堂さんにとって読書とはどのようなものでしょうか?また、今まで読んで影響を受けた本をお聞きかせ下さい。
午堂登紀雄氏: 昔、実はそんなに本は読んでいなかったんですよ。読み始めたのは、外資のコンサルタント会社に転職した29歳のときです。仕事の必要性に駆られて、1日に5冊10冊とか読むところからスタートですね。それで自分が知らなかった色々な世界や考え方があるんだなっていうことに気がついて、それから本を読むようになったんですね。その時一番衝撃的だったのは、板倉雄一郎さんの『社長失格』(日経BP社)っていう本で、それは彼がハイパーネットという会社を立ち上げて、倒産するまでの遍歴を書いたものなんですけれど、それにかなり衝撃を受けて、起業っていう選択肢ってあるんだな、っていうのを突きつけられました。それまでサラリーマンとしての生き方しかなかったので、キャリアの転機になった1冊ですね。投資をするようになったのは、ロバート・キヨサキさんの、最初の本じゃなくて『金持ち父さんの若くして豊かに引退する方法』(筑摩書房)という本を買って、やってみようと思ったのがきっかけでしたね。
――ターニングポイントにその本があったんですね。
午堂登紀雄氏: それと、今みたいに本がたくさん出せるようになったのは、情報のかみ砕き方や、解釈の仕方とかを、ある本から学んだんですよ。それは森達也さんの『世界が完全に思考停止する前に』(角川書店)っていう本。これにすごく衝撃を受けて、ああ、情報を読むっていうのはこういうことなんだっていうことを知って、多面的に情報を見られるようになってきたのが、多作ができるようになったきっかけかなと思いますね。
――読書スタイルについてお伺いします、本はご自宅や移動中に読まれるとのことですが、紙の本を持ち歩いているのでしょうか?電子書籍は利用されていますか?
午堂登紀雄氏: 今は紙の本だけですね。Kindleは持っていたけれど、売っちゃったんです。自分の本の読み方は、最初に「はじめに」と「あとがき」を読んで、それからまた、興味あるところを読んでいくっていうやり方なので、紙の方がパラパラめくりやすい。ただ、やっぱりかさばるのは問題だと思っていますね。先週カンボジアへ旅行に行ったんですけれど、本を20冊くらい持っていったら、もう重くてしょうがない。
――まず「はじめに」と「あとがき」を読むのはなぜでしょうか?
午堂登紀雄氏: 多くの著者が、「はじめに」の部分に、この本がどういう本で、どういうきっかけで書いたかという目的を書いているので、それを読めばどういうスタンスの著者なのかというのがなんとなくわかる。「あとがき」は、本文に入れられないけれども、自分の本音や、言い訳を書いていることが多いので、両方を読めば、なんとなくこの本はこういうことを書いているんだろうなというのが分かるので、単に本文の字面だけ読んで、「これはおかしい」ということが無くなるんですね。行間を読めるようになる。自分が書くときもやっぱりそうなんです。最初はなんでこの本を書くのかという目的から入って、で、最後は「色々なことが書いてあったと思いますけど」とか言い訳を書くわけですよ。
自分の本はどんな形であれ、読んでもらいたい。
――電子書籍といえば、午堂さんご自身もウェブサイトで電子書籍を販売されておりますけれども、反応というのはどうですか?
午堂登紀雄氏: 売れてないですよ、全然。1週間に1冊とかそんな感じですね。
――今は、午堂さんの読者の方はほとんど紙の本で読まれているということなのでしょうか?
午堂登紀雄氏: うん。そうかもしれないですね。というのは、私の書いているのがビジネス書なので、ビジネス書だとやっぱり、まだ市場的には難しいのかなって感じがしますね。例えば、辞書とか百科事典なんかは、既にもう電子化されていますよね。あと、絵本とか。やっぱり電子書籍になじみやすいものと、そうでないものがあるのかなって感じはしますけどね。例えば、料理のレシピ本なんかは、やっぱり電子の方が見やすいかもしれない。
――紙と電子、どちらかが無くなったり、廃れるということではないということでしょうか?
午堂登紀雄氏: 当然電子のシェアが上がってくるとは思うんですけど、やっぱり紙の本は紙の本のよさがあると思います。
――電子書籍は、個人で買った蔵書をスキャンして電子化するという形態もありますが、例えば午堂さんの本を電子化したいという読者がいらっしゃる場合、著書を裁断して、スキャンすることになりますが、それに抵抗は感じられますか?
午堂登紀雄氏: 私は感じませんね。たとえどんな形であれ、読んでくれることが大事なので。それが例えば古本屋で売っている本であっても、構わないと思っているんですよ。なぜかというと、古本でも取っ掛かりとして本を読んでもらって、面白いなと思って、別の本を買ってくれるかもしれないから。アーティストと同じですね。例えばただで自分のライブをYou Tubeにアップすると。それで、自分のCDを買ってくれればうれしいのと同じだと思うんですよ。ただ、頭に来るのは、図書館が税金を使って最新刊を仕入れる、これって税金使う意味は全くないんじゃないかと思うんですけどね。
著書一覧『 午堂登紀雄 』