新時代の「ゼネラリスト」として働き方を追求していく
株式会社エムズネットの代表取締役である三好康之さんは、企業のIT導入のためのコンサルティングや、システム開発に関する研修事業のほか、高いシェアを誇る情報処理技術者試験の教材や、システムエンジニアの働き方を提言する本を執筆しています。三好さんに起業のきっかけ、教材の制作秘話、提唱する「マルチタスク」な働き方などについて伺いました。
会社に所属しながら「副業」で起業した
――エムズネットの事業を含め、三好さんのお仕事の内容をお聞かせください。
三好康之氏: 僕は、今やっている仕事をきれいに3分の1ずつ分けています。1つ目が執筆、2つ目が一般企業向けにコンピューターをどうやって導入するかというITコンサルタント、3つ目がIT企業への研修事業です。リスク分散させることが最大の狙いなのですが、これにより、IT企業の最新情報や、お客様(コンピュータを利用する企業)のニーズを把握できる…、つまり、情報の鮮度を保つことができるという効果も狙っているんですね。。
――もともとはIT企業でシステムエンジニアをされていたそうですが、起業のきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
三好康之氏: 僕の経歴はちょっとややこしいんですけど、前の会社にいる時に創業しているんです。平成元年にIT企業にプログラマーとして入って、SEになって、その後、営業に志願していかせてもらったり、今話題になっているセキュリティーの部署を立ち上げたりしたのですが、営業をやっている時に、コンサルティングの仕事が増えてきたんです。それで「コンサルタントとして独立したいから会社を辞めたい」といったら、当時の上司から「ちょっと待ってほしい。会社に残る条件はあるか」と聞かれたので、「給料を倍にするか、副業を認めるか」という条件を出したんです。資格を取ったり、仕事もそこそこできていたので、わがままに育っていたんですね(笑)。それで、いろいろ社内で話し合ってもらって、最終的に「副業を認める」ということになったんです。
――社員としての仕事と、個人としての仕事の両立はできましたか?
三好康之氏: 土日にコンサルタントとして営業し出すと、お客さんが結構ついてくれました。ただ、月曜日から金曜日までの会社のお客さんに対して、土日コンサルティングに行ったりもしていたんですね。もちろん合法の範囲内ですよ。競業避止義務など、法律についてもきちんと調べて問題ない範囲でやっていましたし、上司にも逐一報告していたので。ただ、そういう事実を知らない営業の先輩から「どうなっているんだ」という話が出てきたこともあって、2、3年で回らなくなってきて、「さすがに潮時かな」と思うようになりました。それが、2001年です。ちょうどイチローが大リーグに行くというような話があって、そのニュースを聞いて、「僕も辞めよう」と思ったのを覚えています。
――先ほど3分の1ずつ業務内容を分散してお仕事をされているとおっしゃいましたが、それぞれどのようなスタイルで行っていますか?
三好康之氏: 執筆は家で、コンサルは大阪でしますね。研修は東京が主です。時間的な割合で言うと、平均的には、週7日のうち、自宅で作業が4日、大阪で外出1日、東京出張が2日でしょうか。東京は好きなのでもっと行きたいのですが、ホテルで泊まるのが嫌いなんです。お化けが怖いから(笑)。でも週に1-2回が良いですよね東京は。この頻度だったら、買い出しみたいな気分で東京に来れますし(笑)。あと、結構、自宅にいる時間が多いのですが、実は、未だに嫁さんと娘は、僕が何の仕事をやっているのか知らないんですよ。嫁さんはうすうす感づいているかもしれませんが、家では仕事の話は一切しないですからね。向こうも仕事の話はわからないし、面白くないからしません。収入は定期的に家に入れているので、それが滞らない限り一切干渉はないんです。僕に興味がないのかも(笑)。
ただね、興味深いのは、娘たちがほんといい子に育っているんですよ。今、中学2年生と小学5年生の姉妹がいるんですが、長女が小学校6年ぐらいからかな。ある日突然、「私もがんばる」って言い出して、お金を使わなくなったんですね。どうやら、僕が常に家にいるから、友達に「お父さん仕事してないんじゃないかな」っていわれたみたいで(笑)。さらに「お父さんに聞いたらあかんで、かわいそうだから」って口止めまでされていたそうです(笑)。それからは、欲しいものとか、わがままもいわなくなりましたよ。僕も調子に乗って、「お父さん何をしているの?」って聞かれると「どっかにええ仕事ないかな?」とか冗談をいっていたら、素直に育ちましたね(笑)。確かに不安になりますよね。学校行く時僕が見送って、帰ってきたら僕がいつも玄関まで「おかえり~」って迎えに行くんですから。
――今回のインタビューを娘さんが読んだらびっくりしますね。
三好康之氏: 最近ちょっとインターネットを使うようになって、僕の名前を検索したみたいで、「パパって社長やんね?」って聞かれるようになりました(笑)。不安を払いたいんでしょうね。まぁ、あまり安心させてもあれなんで、「まあまあ一応形だけはな」とかお茶を濁しています。他には「パパ、本を出しているの?」とかも聞いてきたりするようになりましたけど、「まあまあ、あれはどうにでもなるからな」っていって、そっちもごまかしています(笑)。
試験の教材は受からなければ意味がない
――そのような自由な働き方を含めて、三好さんの発想はどのように培われたのでしょうか。学生のころはどのような感じでしたか?
三好康之氏: 学生のころは、ちゃらんぽらんでしたね。今楽しければそれでいいっていう、よくある子供の考えです。ただペーパーテストとか勉強だけはできたんですよ。記憶力とか、要領が良かったんだと思います。高校の時も授業はほとんど聞いていません。授業を聞いてたら時間がもったいないって思っていたので。授業さぼって遊んでいるか、授業中に遊んでいるか、寝ていましたね。点数を取るだけだったら、試験前に、先生がどういうところを教えたらいいかということが書いてある「教科書ガイド」を読めば、試験に出すところがわかるので、それを数回読んだら点数は取れていました。その方が、自分の時間が有効に使えるんです。でも、それが今テキストを書く時のノウハウにもなっているんですから人生わからないもんですね。
――情報処理技術者の教材ですね。受験される方のシェアも高いと伺いましたが、どのくらいなのでしょうか?
三好康之氏: テキストはだいたい受験する人の7割ぐらいが使ってくれているようですね。評判がクチコミで広がっています。きちんと勉強した人には、内容が明らかに違うとわかってもらえるようです。嬉しいですね。
――教材を作る際に心がけていることはどういうことでしょうか?
三好康之氏: 試験の教材に何が求められているかというと、勉強のしやすさ、どうすれば受かるかというところだけなんです。受からなかったら何を書いていようが意味がないんですね。普通、本を出す際は、言葉とか表現に主眼が置かれていると思うんですが、受験参考書っていうのは、そこはちょっと違うんですね。具体的には、とにもかくにも、試験の分析に力を入れていますね。というのも、受験参考書のページ数は少ない方がいいんですよ。勉強時間は少ない方がいいのでね。しかし、その一方で網羅性も必要になる。だから、掲載する項目の取捨選択をするための分析が必要なんですね。…たとえばそうですね、情報処理技術者試験を作っているIPAという独立行政法人の財務諸表なんかにも目を通していますよ。そして、「今年は予算的に新規問題が作れないな」とかまで考えたりしています。要するに、効率よく勉強してほしいという願いを1冊に詰め込んでいるんです。
著書一覧『 三好康之 』