紫綬褒章では大竹しのぶさんと佐々木監督と一緒の受賞だった
――長い研究生活の中で、2011年に紫綬褒章を受章されましたね。そのときはどのようなお気持ちでしたか?
井堀利宏氏: いやぁ、よく分かんないですよね、紫綬褒章。あれはもちろん通知が来る前に内々にあるんですよ。候補っていうのは実際には決まっているんだけど。それで半年前に色々書類を出せと言われる。
――書類ですか。
井堀利宏氏: 業績も含めて色々と書類を出すんです。紫綬褒章は、ここの学部だとその前の年に吉川先生がもらったし、半年前に伊藤隆敏さんももらっていたんで、そんなにびっくりしなかった。ただあれは、オリンピックがあると金メダリストと一緒になるでしょう。だからそういう有名人のどなたと一緒になるのかなっていうのが楽しみでした(笑)。
あのときはたまたまナデシコジャパンの佐々木監督と大竹しのぶさん、その2人とご一緒させていただきましたね。皇居に行くんですけどね、集団で行くわけですから、特にそんなに緊張する様なシチュエーションじゃないですね。佐々木監督と2ショットの写真が撮れたのは良かったです。
参政権は20歳からではなく0歳からにせよ
――昨年末、衆院選もありましたが、若者はもっと選挙に参加するべきでしょうか?
井堀利宏氏: そうですね。もっと積極的に参加しないと日本はダメですよね。やっぱり高齢化が進んでいますしね。特に社会保障の痛みを伴う改革が先送りされると若い人が損をするんですよ。もう前から、年齢別選挙区とかね、若い人がそれなりに国会に発言力を持てる様な制度にした方が良いんじゃないかってことを言ってるんですけどね。あとは参政権を下げる。今20歳からだけど、もう0歳まで下げてもいいんじゃないかなと。子供区という選挙区を作っちゃったらどうかっていう話も最近しているんだけれど。
だから今回自民党が圧勝して、30代40代の政治家の人が集まったんだけど、その人は若いんだけれど、その人に投票した人はどっちかっていうと年寄りなんですよね。そこは問題ですね。若い政治家なんだけどね、だからと言って若い人のために身を切る改革ができるか。例えば老人の保険料の自己負担1割を2割に上げるって懸案になったんだけれど、それができるかっていうと、若い政治家でもそのバックには高齢者がついているから。だから若い人の利害を反映する様な、そういう政権になってほしいですよね。
――今回、結局若者は参加しなかったという結果にもなっていますが、とにかく参加することで大きく変わって行くんですね?
井堀利宏氏: そうですよね。だからまず投票に行かないとね。投票率が本当に低いので。学生はね、意欲のある人は多いですよ。ただどっちかって言うと東大の人はやっぱり官僚人志向が強いですね。特に財務省に就職していく人が多い。だから普通の人とちょっと違う。ただ官僚も良い面もあって、色々な情報をきちんと持ってちゃんとやるには、それなりのエリートの人も必要なんですよね。ただ、つまらないことに若い人が関係無いエネルギーを使うのはもったいない感じはしますよね。志は皆さん持っているのに、実際に省庁に入ってやる仕事というのは、どうでもいいことや微調整になってしまう。そこはやっぱり政治家が官僚をうまく使わないといけないと思います。
電子書籍について思うこと
――最後にお伺いしたいんですが、いわゆる電子書籍、もしくは電子データというものが時代をどんな風に変えていくとお考えでしょうか?
井堀利宏氏: それはもちろん、飛躍的に便利になりますよね。論文を探したり、あるいは本の一部を探して、それからコピーするとなると、本当に図書館に行ったりして大変ですけれど、電子化されると、自分のところのパソコンからすぐダウンロードができて、保存するのもデジタルでできるから、こんなにいっぱいの本とか、もう要らないわけですね。そういう意味では非常に、情報乖離の面でも役に立つし、色々な研究だけでなくて、色々な人の本や書籍、雑誌に対するアクセスも非常に良くなるので、良いことだとは思いますよね。
――今後そういった本、著作物、また研究活動を通じて、これからどんなことをまたされていきたいなという風に考えてらっしゃいますか?
井堀利宏氏: 今までと同じペースで、なるべく、微力ながら少しずつ前進して行きたいと思いますね。ただもうこの年になるとね、やっぱりアカデミックなジャーナルに論文を掲載するっていうのはしんどいので、そろそろ研究等をまとめて本にしたり、もうちょっと易しい本にするということを積極的にやっていきたいと思います。ただそこの問題はですね、やっぱり採算性の面で、本を出版するのは段々厳しくなってきていて。特にある程度専門性があるものは読者層が限られるので、易しくしちゃうと、面白い本なんだけど、面白い本っていうのは、誰でも書けるわけではない。そういうのにあった個性の人がいっぱい書いているから、なかなかそこに参入しづらい。だからEブックになると、そこのとこの出版の色々なコストが下がりますし、ある意味、自費出版的になるわけですね。電子化だとすぐできる様になりますよね。
そういう意味で、本も研究者としても、ある程度電子化されて発信出来る機会が出てくるというのは、色々な意味で良いんじゃないかなと思います。本をハードカバーで出すのは最近では、厳しい。私も専門書とかテキストブックを出しているんだけど、もうちょっと違ったスタイルの本っていうのはなかなか出しにくいですね。電子書籍や新しいかたちで、研究のもっと幅広いところを紹介する本が何か出せたらいいなと思いますね。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 井堀利宏 』