ヨガの本質を伝えるため、「枠組み」を超える
――最後に、今後ヨガの発展、普及のために構想していることがあればお教えください。
綿本彰氏: ヨガという名前の付かない、あるいは一般の人が考えるヨガの枠組みを超えたヨガを提供していきたいと思ってます。ヨガというと、体を動かすものというイメージがありますし、ヨガという名前が付くだけで、興味の外にあるものという風に思われる方も多いと思うんですね。でもヨガを本当に深めていくと、ヨガというのは決してポーズだけじゃない。ポーズは1つのツール、パイプ、チャネルであって、意欲的に、しかも自分だけのことを考えるのではなく柔軟に生きるというヨガが目指そうとしている「充実した生」は、必ずしもポーズだけで得られるものではないんです。
例えばある映画がすごく心に触れて、「よし、自分はこういう風に生きていくぞ」っていう気持ちになる。主人公の気持ちが伝わってきて、自分の心にも軸が通っているようになったりする。私にとって、というか本来のヨガにとっては、それこそが「ヨガ」なんです。だから映画であろうが物語であろうが、あるいは風景であったり、音楽であったり、そういう色々な素材がヨガを助け、ヨガが目指そうとしているところにつなげていってくれるものになりうると思っているんですね。だから私はヨガの枠組みを取り壊して、ヨガという名前を付けずにヨガを伝えたいと思ってます。
――電子媒体の双方向性は、そういった試みにもプラスになるでしょうか?
綿本彰氏: そうですね。例えば、好きな人に抱きついたら良い香りがした。その時にはどんな感じがするでしょうか。何かほわっとして、呼吸もゆったりしますよね。コンピューターに向かって原稿の締め切りに迫られている時の呼吸とは対極にあります。ですから、電子媒体で、男性なら女性、女性なら男性とかに読んでもらう朗読が付いていたりとか、ビジュアルも付けたりすれば、余計にリアルにイメージできて、ふさぎ込んでいたものがオープンになったりする。インタラクティブな媒体であれば、その人に合ったカスタマイズによって、より的確に、ものを投げかけたり、施したりすることができるんじゃないかなと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
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