執筆は土日に集中する、座った時が「執筆時間」
――執筆スタイルについてもお伺いしたいと思います。原稿を書かれる時にはパソコンをお使いですか?
谷原誠氏: パソコンは事務所にデスクトップが1台、家にノートブックが1台ありますが、基本執筆は土日です。締めきりが迫ってくると早朝や深夜の時間帯に書くのですが、土日に事務所にいれば事務所で書くし、土日に家にいれば家で書きます。場所は選ばないです。普段歩いている時にも本の構想を練ったりします。だから、座ったりするまとまった時間がある時が、執筆時間です。
――インプットをしたり、構想を練るのは移動時間や普段の生活の中でされるのですね。
谷原誠氏: パソコンがなかったとしても今ICレコーダーがある。だから文章がまとまった時にICレコーダーに吹き込んで、それを後で打ち込むこともあります。
――常に色々なことを考えていらっしゃるのですね。
谷原誠氏: ぼーっとしている時もありますが、考えないといけないことがたくさんありますので。
――仕事の資料などは、クラウドなどで同期などはされているのですか?
谷原誠氏: 支障がないものについてはそうしています。ただ、弁護士の仕事の資料は機密のものが多いので、なかなか同期できないのです。執筆の原稿などはEvernoteでどこでも同期できるようにしています。
版元に縛られない低コストの出版が電子書籍で実現する
――電子書籍の可能性についてもお伺いしたいと思います。電子書籍は、将来的にどんな可能性を秘めているとお考えでしょうか?
谷原誠氏: 電子書籍の1番の可能性として、出版社を通さずに書籍として低コストで世の中に流通ができることが1番大きいかなと思います。
今でも自費出版がありますけれど、それなりにコストが掛かりますね。無料のソーシャルメディアもありますが、それ以外に書籍というかたちで、誰でも世の中に自分の考えや知識を出版することができる。今、優れたコンテンツが必ず本になるわけではない。出版社はやはり売れるものでないと本にしてくれない。売れないけれど価値がある知識は世の中にいっぱいあると思います。それを自分で発表して本にすることができる。これが電子書籍の最大の魅力だと思います。
――誰でも発信者になれるというところに可能性があるのですね。
谷原誠氏: そうですね、どんな分野であっても発信者になれる。そして、印刷も物流もいりませんからコストが低く抑えられます。
――このような時代の出版社の役割や意義を、著者としてはどのようにとらえられますか?
谷原誠氏: 著者は自分の考えを持ち、それを発表する立場なので、そんなに世の中のニーズはわからない。そこで出版社、編集者という公正な立場の人がいて、世の中が必要としているニーズを調査し、かつ、公正な立場で編集した本というものを商品として出していただけるという意味では、やはり出版社も編集者も今後も決してなくなることはないだろうと思います。出版社が出す本というのは信用がありますね。
今後は弁護士としての「戦略論」も書いていきたい
――最後の質問ですが、今後の展望についてお伺いできればと思います。どんなことに今後チャレンジしていきたいと思われますか?
谷原誠氏: やっぱり出版という意味では、先ほどの2本の柱を今後も崩さず行くと思います。普段行っている業務の専門化が進んだら、それを本として出版していく。一般的なビジネス書としては、法律家以外の人たちに向けて、弁護士だからこそ伝えられることを伝えたい。今まで書いたことがないテーマで言うと、戦略的に物事を進めていく方法や、あるいは、紛争を解決するためのテクニックやスキル、といったものだと思います。弁護士が普段の業務で行っていることを、一般の人に紹介するような本を今後も書いていくと思います。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 谷原誠 』