佐藤尚之

Profile

1961年東京生まれ。1985 年電通入社。コピーライター、CM プランナーを長くつとめた後、ウェブ・プランナーを経て、クリエイティブ・ディレクター。2011 年 4月に電通を退社し、次世代ソリューションを提供する㈱ツナグを設立。広告の枠にはまらない、様々な仕事を手掛けている。東日本大震災後、民と官の連携プロジェクト「助けあいジャパン」を立ち上げ、情報支援活動に従事。活動が認められ、1年後異例の早さで公益社団法人の認可を受ける。現在は代表を若手に譲り会長として動いている。内閣府・復興庁との連携で、復興庁政策参与に。1995年より個人サイト「www.さとなお.com」を運営。約4700万アクセス(13年春現在)。ツイッターは「satonao310」フォロワー約7万人。フェイスブックは「satonao」フォロワー約17000人。

Book Information

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電子書籍はガジェットの発展に期待


――電子書籍は利用されていますか?


佐藤尚之氏: 漫画を読んでいますね。ずっと、たとえば『ONEPIECE』を時代の教養として読んでおかないといけないなと思っていた。やっぱりエヴァンゲリオンにしてもガンダムにしても、時代の教養として共通に知っておかないといけないものがある。昔だったら、『我が輩は猫である』みたいなものです。でも『ONEPIECE』を全巻、家の中に置くのは嫌で、かといって、マンガ喫茶に通うのも嫌だなと思っていたので、全部Kindleで買いました。

――読み心地はいかがですか?


佐藤尚之氏: 漫画は全然違和感ないです。文章については、今読んでいる位置がわからないというか、厚みの中のどの部分を読んでいるのかっていうのがいまいちわからないので慣れません。あとは、整理がしにくい。ワンピースだけで50巻くらい並ぶと、わかんなくなっちゃう。ちょっと整理できるようになってほしいです。

――ご自身の本が電子書籍で読まれることに、何か特別な感情はありますか?


佐藤尚之氏: 僕の、『明日の広告』とかは全部電子化されていて、読んでいただいてありがたいと思います。読まれる機会が増えますから、うれしいですね。

――電子書籍の可能性についてはどのように思われますか?


佐藤尚之氏: 実用書の場合は、更新ができますよね。状況がいろいろ変わる中で、直したい部分を直して手軽に新版が出せる可能性があるので、それはいいなと思います。そして、動画へのリンク、広告のサイトへのリンクもできる。その向こう側には、いわゆるソーシャルリーディングみたいな、みんなでしおりをつけあったり、誰がどんな線を引いたかがわかるとか、そういった新しい読み方がありますね。電子書籍は今の新書のように長くする必要がなくて、1章単位で買って読めばいい。CDがアルバム単位でも売っているけど、1曲単位でも売っているように、本の書き方も実用書に限っては変わってくる可能性があるなと思っています。長い本をずっと読むのって、電子書籍の場合はしんどいけど、10ページずつ30円位で売っていけば、パッパと読めるし、面白くなければ途中でやめればいい。そうなると、最初からわかりやすく全力で書かないといけないので、小説も実用書も書き方が少し変わるかもしれませんが。

――佐藤さんは文章を書かれる時に気をつけていることはありますか?


佐藤尚之氏: 僕が書いているエッセイとか、実用的な論説は、リズムとわかりやすさを大切にしています。テンポよく、サラッと読める文章にしたい。僕は一時期、ラジオCMをやっていたんですけど、ラジオだと読んだナレーションがそのまんま、その順番で頭に入ってこないといけないんです。文章だと読み返すというのがあってもいいかもしれないけど、ラジオって全部真っすぐに入ってこないと聞き逃してしまうんですね。だから、僕は文章においても、人が読んでそのまま頭に入るっていう書き方を心がけています。引っかかりがある文章がいい文章という場合もあって、途中でテクニック的に引っかかりをつけるのはあるかもしれませんけど、基本は読みやすく、わかりやすくというのを考えます。

――電子書籍が今後発展していくためには何が必要でしょうか?


佐藤尚之氏: ガジェットの発達ありきだと思います。まだ使いにくいと思う。1枚の紙のようなディスプレーで、折り曲げられる電子ペーパーみたいなものが、そのうち出ると思うんですけれども、まだ今はちょっと石版を持って歩いているみたいな感じになっている。電子書籍のいいところと紙のいいところの融合みたいな形態ができると、発展していくんじゃないでしょうか。でも、もうちょっと後の話だと思っています。

断絶する世代と世代をつなげるのが役目


――冒頭に新しいプロジェクトのヒントをいただきましたが、これからのお仕事のテーマのようなものがあればお聞かせください。


佐藤尚之氏: 世界はたぶん20代、30代が変えればいいと思う。今、産業革命以降の一番大きな革命が起こっているし、もうちょっと続くと思うんですけど、そこで50代は、過去の経験値と、過去の歴史を知っている者として、バックアップをすればいいと思っています。そのうえで、50代60代70代が幸せに生きられるような仕組み作りとか、若手と幸せを共有できるような仕組み作り、世代と世代をつなげる仕組み作りなどをちゃんとやりたい。このままだと、アナログ世代と、20代30代のデジタル世代が乖離したまま世の中が進んでしまう。世代と世代とが離れてしまう。50代で、デジタルをわりとよく知っているボクなんかがその間に入ってつなげられたらいいなと思っています。上の世代のこともわかるし、下の世代にもそんなに負けていないので。一人でできることなんて限られていますけど、そこら辺の立ち位置にはいるかなと思っています。具体的には、40代とか50代60代とかのニーズを、20代30代が扱っているデジタルテクノロジーに結びつけて、双方の幸せに関与したい、というモチベーションが今のアイデアの源泉になっているんです。若い世代と、50代60代をうまくつなげて、両方がハッピーになれば一番です。



――それが社会の問題の解決になっていくということですね。


佐藤尚之氏: 日本では、少子高齢化、災害も原発のことも、問題は山ほどありますけど、文句を言う筋合いはないぐらい幸せですよ。日本に生まれて超ラッキーです。こんなおだやかで、戦争もずっとなく、犯罪も少ないし、格差も少ない。餓死する人もいない。これ以上格差をなくしたいなら、共産主義になった方がいいくらいだと思う。もちろん改善点はあるでしょうが、基本はそんなに文句ないということが前提で、よりよくなるといいな、くらいに思っています。日本人が自虐的、否定的、幸せを感じない方向にあるので、なんとかみんなが幸せ感を感じられる方向に行ければいいなと夢想していますね。このまま戦争なんかが起こらずに行けばいいと思います。戦争を知っているのは、僕の親たちの世代ですから、あの辺の思いを若い世代につなぐことがソーシャルメディアの可能性としてあるかもしれない。昔だったら直接話を聞くか本を読むしかなかったけど、何かつなぐやり方があるかもしれないですよね。それも今ちょっと考えたいと思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 佐藤尚之

この著者のタグ: 『アイディア』 『コミュニケーション』 『インターネット』 『可能性』 『広告』 『コピーライター』 『シンプル』 『本質』

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