すがやみつる

Profile

1950年、静岡県生まれ。『仮面ライダー』のコミカライズで漫画家デビューし、以後、児童漫画を中心に活動。代表作は漫画『ゲームセンターあらし』およびそのキャラクターたちが登場する学習漫画『こんにちはマイコン』(共に小学館)など。この2作は共に小学館漫画賞を受賞した。「菅谷充」名義で小説も執筆。デビュー作『漆黒の独立航空隊』(有楽出版社)をはじめ、架空戦記、自動車レース、ミステリーなど、ジャンルは多岐にわたる。2013年、都精華大学マンガ学部教授に就任し、キャラクターデザインコースを担当。

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電子書籍のシステムに読み手の視点を


――電子書籍の可能性についてはどう思われますか?


すがやみつる氏: 僕は、電子書籍は漫画を読むためのものじゃないと思っています。少年ジャンプが二百数十円、コミックスが400円か500円で、漫画というメディアは安いから成り立っている。それを何万円もかかる端末を使って読むというのは、ちょっと違うと思う。活字だと、読む本と使う本の2種類あると思っていて、小説みたいにシーケンシャルにストーリーを読んでいく本と、辞書のように何度も繰り返しめくって検索していくものがある。検索型の本は電子が圧倒的に便利です。日本にはもともと電子辞書という素晴らしい電子書籍があります。あれこそが日本で成功した電子書籍の典型です。ただもちろん、さまざまな本に紙と電子、いろいろなエディション、バージョンがあっていいとも思っています。

――電子書籍が今後発展していくには何が必要でしょうか?


すがやみつる氏: 電子書籍はいろいろなところで言及されているんですが、口を出すのはほとんどビジネスの人たちで、ビジネスマンが読むような、「これを読むと何日でできる」みたいな本の話ばかり。しっかりした本読みの人たちの意見じゃない。本屋大賞のように、本読みの店員さんとかが、システム作りにかかわって意見を言っていくようなものができないとダメだと思います。

――現在本はどのように買われていますか?


すがやみつる氏: ほとんどAmazonです。僕はアメリカでAmazonができたとき、すぐに使い始めた。ダグラス・マッカーサーについて調べているときに、Amazonでマッカーサーのお父さんについての本を見つけて、日本では買えないのですぐ買ったんですけど、そこで「あなたにオススメの本があります」って出てきた。リコメンドですが、当時わからなくてビックリして、しかもそこに並べてられる本が、参考になりそうな、欲しい本ばっかりだった。これこそが、今はやりのビッグデータ、ITの一つの基盤です。僕はAmazonについては、そういうところから入っているからいい印象を持っています。ただ、ネタに困ったときはやっぱり本屋さんに行って、普段行かないような売り場を回っています。オンラインのリコメンドより、もっと広く見られますから。

――蔵書はかなり多いのではないですか?


すがやみつる氏: 機会があると古書市も行っているので、仕事場には本がたくさんあって、一昨年の震災で崩れました。あのとき仕事をしていたら後頭部辺りを重い本が直撃していたでしょう。それで古本屋さんに出して、だいぶ整理しているのですが、トラック何台分か整理したのがまた増えて、という感じです。処分した後に文庫本で買い直すこともある。スペースという意味では、電子化できるのはありがたい。自炊業者を訴えるだの何だのありましたが、僕は個人が買ったものをどう料理しようといいじゃないかと思っています。ただ、Yahoo!オークションで、裁断・自炊した本を売りに出したりしているのを見るのはやっぱりイヤです。



漫画にとって「オリジナル」とは?


――すがやさんは、著作権の問題についても積極的に発言されていますね。


すがやみつる氏: 著作権が著作者の死後50年が70年になるという話がありますが、僕はむしろ短くしてもいいと思っています。著作権を守るといった動きがあっても、僕は加わっていない。僕の『ゲームセンターあらし』は、いま『ぽこぽこ』というところで、タダで流していています。

――そのような試みをされることはどのような思いからですか?


すがやみつる氏: 日本のストーリー漫画は、基礎は手塚治虫先生が築いて、それを応用してできたものです。僕も、『ゲームセンターあらし』は『釘師サブやん』と『包丁人味平』という漫画を参考にしながら描いたと公言している。下敷きがあったり、当時はやっているものにも影響されて絵柄が変わったりストーリーも変わることも多い。そういうのを自分の100%オリジナルだっていうのには抵抗があります。
論文検索のGoogle Scholarには、『巨人の肩の上に立つ』という言葉が書いてあります。元はフランスの哲学者の言葉らしいですが、アイザック・ニュートンが自分の発見について、私がやっているのは今までの歴史の上に乗っかっているだけ、巨人の肩に立っただけ、と言ったそうです。研究は山ほどの論文をベースに積み重ねてこそ成り立つ。漫画にしても小説にしても、それは良い考えだと思っています。

――作家でそのようなお考えをお持ちの方は少ないのではないでしょうか?


すがやみつる氏: 僕のやっていることは書き手の立場からしたらラジカルかもしれないけど、何に影響されたかと言えばやっぱりコンピューターだと思います。パブリックドメインとか、クリエイティブコモンズの概念、あるいは海外のドネーションとか寄付の考え方に触れたこと、そもそもインターネット自体が研究者の人たちが利害を超えて作ったものです。例えば、漫画の絵を引用したら5000円払えという動きがありましたが、僕はいらないって言っています。引用されることによって次の新しいものが生まれて来る場合もありますから。

著書一覧『 すがやみつる

この著者のタグ: 『クリエイター』 『漫画』 『コミュニケーション』 『漫画家』 『教育』 『小説家』 『小説』 『絵』 『努力』

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