小浜逸郎

Profile

1947年、神奈川県生まれ。横浜国立大学工学部建築学科卒業。大学卒業後、母親が副収入のために経営していた塾を、兄とともに一家3人で経営するかたわら、同人誌『ておりあ』を主宰、評論活動を続ける。家族論、学校論、ジェンダー論を世に問い、著書などにおいては「批評家」の肩書きを用いることが多い。2008年から2012年度まで、横浜市教育委員を務めた。また、2001年から、知識人を講師として招く連続講座「人間学アカデミー」を主宰している。近著に『日本の七大思想家』(幻冬舎)、『生きることを考えるための24問』(洋泉社)、『人はひとりで生きていけるか』『新訳・歎異抄』(PHP研究所)など。

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電子化は時代の必然の流れ


――今日は電子書籍のお話もさせていただければと思います。電子書籍というものが登場しましたが、書き手としての思いを伺えますか?


小浜逸郎氏: 電子書籍は利用していないのですが、単に習慣の問題だと思います。私は、本を読む時書き込んだり線を引っぱったりする。今の電子書籍がそこまで対応しているのかと言うと、使っていないのでよくわからない。私の世代ですと、やはり紙の親しみや手触りが好きです。でも引っ越しで困るのは紙の本の処理です。捨てたくないし、ましてや売りたくない。

――読者が小浜さんの書籍を電子書籍化して読むことに関してはいかがでしょうか?


小浜逸郎氏: それは時代の流れで当然だと思います。私の本もちょくちょく電子契約の話は来ますが、日本の場合は出版事情が厳しいらしく、アメリカのようには普及しにくいと聞きます。発信していく側からしますと、ブログやネット社会がこれだけ一般化すると、ブログなどを通して発信していかざるをえないので、私も遅ればせながらブログを始めた。一方、出版社の方たちもその流れに何とかついていこうという風に少し焦っているようですが、そんなに動きが速くない感じがします。
紙と電子というのは、ある種の役割分担だと思います。今、世界は情報の洪水で交錯していて、何がより高い価値であるかということがわからなくなっている。その中でいろいろなものが淘汰されていって残る。それがやはり本だろうと私は思っています。

――電子書籍の未来については、どう思われますか?


小浜逸郎氏: 若い方と言っても、40代、30代、20代でまた全然違うのでしょうけれど、中堅の方で活躍している人たちを見ると、この時代のスピード感が好きじゃなくても、ついていかないといけないと考えているようですね。でも、どこかでゆっくり考える時間を欲しがっている。それは年を取っていても、若くてもあまり変わらないと思います。
私の期待なのですが、ただ流れに流されるということではなく、リズム、テンポの違った時間帯を確保していくことが大事だと思います。本にアナログ的に書き込んだり、あらぬ方に連想を膨らませたり、そういうことが大事だと思っています。表層部分と深層部分という言い方もありますが、その二重構造がちゃんとキープされていくことが、文化のあるべき姿です。

――どちらか一方だと育たないのですね。


心のあり方を若者も大切にしている



小浜逸郎氏: 多分、若い人たちもわかっていると思います。この間23歳で直木賞を受賞した朝井リョウさんの『何者』を読んだのですが、若者ながらに心のあり方を大切にするということが文章にちゃんと表れています。

――ITの便利さは駆使しつつも、向き合うべきところはゆっくりなテンポでということですね。


小浜逸郎氏: 文学ですからそういうところをきちんと掘り下げていこうという風になっています。

――電子書籍が台頭する出版界においても出版社の役割、仕事はどう変わっていくでしょうか?


小浜逸郎氏: 新しい流れに背を向けたらだめですし、どっぷり浸かってもだめ。バランスだと思います。「うちの社はこうしたものを出していきたいんだ」という意志や、個々の編集者が「私はこういう本を出したい」というポリシーをきちんと持つことが大事だと思います。それが優れた編集者とそうでもない編集者と分けていくポイントではないかと。昔は出版社のカラーがはっきりしていました。今はそういうメリハリがなくなってきていますね。

著書一覧『 小浜逸郎

この著者のタグ: 『大学教授』 『哲学』 『考え方』 『評論家』 『日本語』 『書き方』 『建築』 『テーマ』

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