電子書籍は本の不自由さを解決できる未知の可能性を持つ。
――教育に携わる立場として、電子書籍の可能性をどうお考えになりますか?
前野隆司氏: 非常に可能性があると思います。電子書籍は検索も便利ですし、そこに動画を加えたり、インタラクティブにするなど、本の不自由さを一気に解決できる。そういう意味では、教育でも、単なる授業だけではなくて、eラーニングやソーシャルリーディングなど、インタラクティブなことや多言語対応もできるようになった。今の紙の本と将来の電子書籍はノートとパソコンくらい違うと思います。今やもう、テレビもインタラクティブになろうとしていますし、将来の電子書籍はいろいろなことができるようになると思います。ニコニコ動画だと、いろいろな人のコメントが出てくる。あんな感じで、例えば電子書籍を見ている時に、ほかの人のリアルタイムのコメントが読めたら面白いと思います。
自分の考えが1000年後にでも正しいと実証されれば面白い。
――最後の質問になりますが、今後の展望をお伺いします。
前野隆司氏: 興味があるのは、日本の考えを世界に伝え、人類の平和に貢献するというテーマです。今は、幸せについての本を書いています。現在は宗教同士が争っていますが、宗教を統一する方法があるのではないか、などといったことに思索を巡らせたりもしています。あとは、自分が書いてきた本を、電子書籍で英語や中国語に翻訳すればもっと多くの人に読んでもらえるだろうとも思います。日本人の考え方の本質は「和」です。よく、日本人は考えがはっきりしないと言われますが、実はどんなものでも来てくださいと言う無限抱擁だと思っています。はっきりしない曖昧さをあえて良しとしているところがある。西洋には伝わりにくいのですが、そこを言葉で、論理で伝えてあげるという仕事をすれば、日本は世界平和に貢献することになるのではないかと思います。そういうことを、思索、研究して、本としても世界中に発信したいと思っています。
私は1000年後にも読まれる本を書きたいという心意気で書いてるつもりです。電子書籍では、100年前のマイナーな本も読めるわけです。将来、私の本が電子書籍になって読み継がれてたとえば1000年後に、「あの時前野隆司が言っていたことは正しかったな」と言われれば痛快だと思います。その場にはいられないのが残念ですけどね。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 前野隆司 』