コンサルタントは現代の「軍師」
――電子書籍については、どう思われますか?
福永雅文氏: 紙がデジタルデータになっているだけで同じだと思っています。電子媒体で読みたい人は読めばいいし、紙が好きな人は紙で読めばいい。要するに中身の問題なので、「中身が同じならどっちの方が使いやすいか」という程度の話です。電子書籍ならではの、紙の本にはないコンテンツが出てくると一挙に普及するのではないかと思います。
例えばスマホが爆発的に普及しましたが、あの普及に何が貢献したのかなと考えると、ゲームのような気がします。電車での移動中でも、スマホを見ている人はだいたいゲームをしている。スマホが欲しいのではなくて、移動中にゲームをしたいということなので、欲しいのは中身なのです。
私が、電子書籍において「もしそういうコンテンツが見られるのだったらいいな」というのは絶版本です。今、『欲望を創り出す戦略』という50年ほど前に出た本を読んでいますが、もう絶版しています。図書館で借りましたが、借りたものだと大事なところをノートにメモをしなくてはいけない。これが電子書籍であるのだったら買います。
――電子書籍の場合、絶版本が1つのコンテンツとなり得るでしょうか?
福永雅文氏: ある特殊な仕事をしている人からすると必要です。『欲望を創り出す戦略』は古典的名著であり、古いマーケッターなら全員が読んでいる本で、マーケティングリサーチの原点です。著者は「商品は機能だけじゃなくてイメージが大事」ということを戦前に世界で初めて言った人なのです。
ランチェスター戦略を体系化した田岡信夫先生の本も、亡くなって30年近いですから、ほぼ絶版です。それを全部電子書籍で見られると言ったら、私のところのグループの全員は、すぐ買うでしょう。それぐらい、ある特定の人には必要だけど、絶版になっている本があるのです。ただ、それほど量は出ないでしょうから、ビジネスモデルとして成り立つかどうかは分かりません。
――自分を戦国武将や軍師になぞらえるとしたら、こんな武将になりたい、こんな武将だなというのはありますか?
福永雅文氏: 原体験が織田信長にあるので圧倒的に信長が好きですが、「自分が」ということになると、信長は宇宙人的な、際立った特殊な人間という感じがしますので、私はもう少し普通かなと思います。コンサルタントは昔流に言うと「軍師」や「参謀」になると思います。ですから、そういう人に共感や親近感を覚えます。来年のNHK大河ドラマの主人公は黒田官兵衛なのですが、今はその黒田官兵衛を研究しています。戦国時代には竹中半兵衛、山本管助などほかにも有名な軍師がいますよね。そんな風にお客様から思っていただけるようになりたいなと思っています。
――今後の展望をお聞かせください。
福永雅文氏: 50歳となり、コンサルタントの生々しい現場で、切った張ったをやることができるのは何歳までかなということを考えるようになりました。50歳代のこれからの十年間をランチェスター戦略の実務体系を極め、集大成する期間と捉えています。その後は企業指導の第一線からは段階的に引いていくことになるでしょう。60歳代になったら第2の仕事、ライフワークである「歴史に学ぶ戦略経営」を段階的に増やしていければいいなと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
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