資料本は書店で高額のまとめ買い。出版業界の活性化を願う。
上田秀人氏: 駅前の書店がつぶれる時代というのはよくないと感じています。子どものころは会社や学校の帰りに書店に寄って、気になるものがあったら手に取るといった感じで、僕は学校の帰りには絶対に書店に寄っていました。大きな書店は増えて、何万冊といった本が置いてありますが、その代わりに駅前にあった文庫と雑誌しか扱っていないという書店さんが消えました。週刊誌を買いに、「ジャンプある?」などと寄れる書店がなくなったのは、本当に寂しいので、僕が年をとったら書店をやってみたいと思っています。
――今でも書店にはよく行かれますか?
上田秀人氏: なかなか時間を確保するのが大変なのですが、月に2回ぐらいは行きます。取材に行った先では地元の本が欲しいので必ず行きます。この間福岡に取材に行きまして、書店に2軒続けて行って、1軒で10万円分ぐらい買いました。先週の木曜日もジュンク堂さんへ行って、4万円分ぐらいまとめ買いをしました。資料本は初版の部数が少ないし、まず重版かからないので、1回逃すと手に入らない。作家ですから、必要経費として許されますし、業界が活性化させるためにも、子どもには、「エロ本であろうが何であろうが、お父さんが払ってあげる。だから本を買いなさい」と言っています。
――上田さんの本を手に取る基準を教えてください。
上田秀人氏: 書店さんの売りたい本が、客の目につくところに並べられていますので、そこは絶対に見ます。書店さんが売りたい本というのは同時に売れている本でもありますから、今の世の中の動きがそこに出るわけなので、買うとは限らないですが、絶対に確認します。今ならば『八重の桜』や、最近は黒田官兵衛の本が並んでいます。その次は、歴史本のコーナーを見てから自分の本のところに行って、「ああ減っているな」などと思いながら書店をまわります。
死ぬまで「作家」でいたい。
――今後の展望をお聞かせください。
上田秀人氏: 死ぬまで作家でいたいなと思っています。今はハムスターのようなもので、絶えずグルグルグルグル動いている感じです(笑)。60歳ぐらいまで書き続けて、それが終わったら自分の中で書きたいなと思っている作品もありますので、そういうことに時間を割こうかなと思っています。徳川家康の長男信康の話を書きたいと思っていますが、今は時間が取れないので、資料をそろえる程度です。彼の人生について、ゆっくりと時間をかけて徹底的に調べて、僕のライフワークとして、彼の21年という短い一生を書き上げたいと思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
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