楠木新

Profile

1954年、神戸新開地生まれ。京都大学法学部卒業後。生命保険会社に勤務し、人事・労務関係を中心に企画、営業、支社長等を経験。勤務のかたわら、ビジネスパーソン150人にロング・インタビューを重ねる。朝日新聞beに「こころの定年」を1年余り連載。関西大学で非常勤講師(「会社学」)を勤めた(~’11年)。執筆のほかに講演、セミナーにも取り組む。『会社が嫌いになったら読む本』『人事部は見ている。』『サラリーマンは、二度会社を辞める。』(以上、日経プレミアシリーズ)、『就活の勘違い』(朝日新聞出版社)、『ビジネスマン「うつ」からの脱出』(創元社)ほか、書籍多数。

Book Information

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将来は芸人の「生きざま」をルポしたい


――今後はどのような本を書きたいと考えていますか?


楠木新氏: 芸人さんの人物論、生きざまを書きたいと思っているんです。昔、支社長の時にも吉本興業さんのコンテストに企画案を提出したことがあります。しかし「お笑い好きなサラリーマン」くらいでは関西では書く機会を得ることはできません。競争が厳しいのです。
そこで、発信はしないが人数の多いサラリーマンの中で、つまり競争相手の少ない豊かな市場で、頭角を現してからお笑いの世界に横滑りするという作戦です。
「どんな作戦や!」と突っ込まれるかもしれませんが、50歳から書き始めたので、自分の持ち時間のことを考えると、長く取り組んだビジネスの世界から入るしか道はないのです。

本は、作り手と売り手に距離がある


――電子書籍はお使いになっていますか?


楠木新氏: 私自身にとっては非常に疎い分野です。日常はスマホも何も使っていません。携帯も持たなくていいならそれで済ませたいというIT音痴です。電子書籍は青空文庫で芥川龍之介の小説を読んだことがあるくらいです。ただ今回インタビューの話を頂いたので、大阪の印刷会社さんで本をスキャンして試しに読んでみました。
文字の大きさも調節できるので読みやすかったのですが、質量感みたいなものが足りない気がします。だからもう少し普及してからでいいかなと思っています。

――書店にはよく行かれるのですか?


楠木新氏: 会社からの帰り道にある紀伊國屋書店さんの梅田本店には、ほぼ毎日通っています。
自分の本が出版されると、どこに置かれているか、本の動きはどうだろうかと、常に見ています。執筆の際には、自分の本は、どの本とどの本の間に入るのかということを意識しながら書いています。たまに自分が書いた本の動きや購入層を書店員の方に聞くこともあります。

――書店を見ることで書き手としてどのようなことをお感じになりますか?


楠木新氏: 出版社さんと、売り手の書店員さんまでの距離が遠いなぁ、と言う感じです。企業でいうと、工場と営業の立場でしょうが、同じ商品なのに製造と販売の連携が薄いと思います。ワードで書いた私の原稿が、出版社さんでどのように書籍になって、書店の棚に置かれることになるのか、その工程をすべて知りたいという欲求があります。

――電子書籍によって本と人との関わり方は変わると思われますか?


楠木新氏: 電子書籍はほとんど読んだことがないのでよく分かりません。私の場合は、有名な人の本でなければ電子書籍は買わないでしょう。私は目指す本を買うために書店に行っても、その周辺の棚にある本を購入することが意外と多いのです。表紙や背表紙が潜在意識に突き刺さるという感じでしょうか。ですから、一般書籍と電子書籍は、コンテンツが同じでも自ずと一定の棲み分けがあるような気がします。

――今後の作品の展望などがあればお聞かせください。


楠木新氏: 組織と個人の関係や、組織での働き方の課題をずっと書いてきましたので、今後もそこに注力してやっていきます
私には、自分が何をしていいのか分からなくなった時に、サラリーマンから転身した方たちに、多くのヒントをいただき、助けてもらった経験があります。私にとっては師匠のような方々です。
落語家の師匠は、右も左も分からない内弟子に対して、三年の間、月謝も取らずに落語の稽古をつける。おまけに食事の面倒までみてお小遣いを渡すこともある。それでは一人前になった弟子は、どのようにして師匠に恩返しをするのか? 弟子は師匠と同じように弟子を取って後輩を育てることで師匠の恩に応えていくことになります。次の若い人に繋いでいくわけです。
その意味では、私はまだ何もお返しができていません。組織で働く人にとって、少しでも仕事や生活が潤うもの、ささやかでも「いい顔」になるためのヒントを書き続けるという責務を負っています。そう考えると、お笑いのことを書くのはもう少し先になりそうです。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 楠木新

この著者のタグ: 『組織』 『考え方』 『働き方』 『価値観』 『教育』 『サラリーマン』 『書店』

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