人生は1回限り、よりチャーミングに
――今後書かれる本など、活動の展望をお聞かせください。
赤池学氏: 今までも自然に学ぶものづくりの本を書いてきたんですけれど、これはものづくりだけではなくて、まちづくりや社会システム、もっというと国家や企業経営においても、生物に学べるイノベーション、生物をメンターにするフラッグシップが立てられると思っています。来春NHK出版から『生物に学ぶイノベーション』という本を出版します。
それと、今僕は大正時代の研究をしたいと思っています。今の日本の状況は、個人的に大正時代とすごく酷似しているなと感じています。大正デモクラシーで国民が浮かれている間に粛々と国家財政は破綻して、軍国化に進んできたわけですよね。原発以降の国の対応を見るとその思いがますます深まっています。マスコミも国家と結託して、正しい情報を流さない。世界に向けて「放射能を管理しています」って大嘘をついちゃう首相もいるわけです。メディアの情報統制を国が行っている状況も、極めて大正時代に近いんです。大正時代を反面教師にする提言本を出版することによって、これからの日本のデザインに対して多くの人々が共感する提起ができるんじゃないかと思っています。
――最後に、様々な問題の解決に取り組んでいく赤池さんの原動力をお聞かせください。
赤池学氏: これはもう、妻に教えられましたが、「人生は1回限りなので、チャーミングなことをやれるだけやるしかない」ということです。考え尽くせば解決策は生まれてきます。社会の課題を自分で見つけて、解決策を考えていくプロセス自体も楽しいし、実際それが形になればお客さんと一緒に大喜びできる。いいものを作れば社会とか周りの方が褒めてくれるんですから、こんな楽しいことはないですよね。
「仕事」と「お仕事」というのがあって、「お仕事」は生きるため、金を稼ぐためにやらなくてはならないけど、「仕事」はお金を二の次にして、もっと尊厳性のある、誇れる仕事をやるということです。クリエイターという立場で言うと、世の中になかったものを世界で初めて作るという、これはうれしいことです。そして、ある技術をいろんな領域にどう展開しようかというのは1人の脳みそからひねり出せないので、知恵を持った人達とワーキング・トゥギャザーするしかない。その協働のプロセスも楽しい。飲みを交えて「ああしたらいい、こうしたらしい」ということをいろんなスペシャリスト達と語り合うことは、人生の限りない潤いにつながることですからね。
(聞き手:沖中幸太郎)
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