松田忠徳

Profile

1949年、北海道洞爺湖温泉生まれ。文学博士、医学博士。現在、札幌国際大学観光部教授(温泉学、観光学)、モンゴル国立医科大学教授(温泉医学)。旅行作家。日本で初めて温泉を学問として捉え『温泉学』という分野を切り開いた。「温泉は生きている」という概念のもと「源泉かけ流し」を提唱し、その普及、及び理論の構築に務め、全国の温泉地で「源泉かけ流し宣言」ムーブメントを主唱、指導してきた。著書に『これは、温泉ではない』(光文社新書)、『温泉教授の湯治力』(祥伝社新書)、『江戸の温泉学』(新潮社)、『温泉力』(ちくま文庫)、『一度は泊まってみたい癒しの温泉宿』(PHP新書)、『温泉手張』(東京書籍)、最新刊に、『温泉教授の健康ゼミナール』(双葉新書)等、約140冊ある。

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モンゴル、中国、伝統医学をたどる


――モンゴルをはじめとする、各国の温泉を研究されていますね。


松田忠徳氏: 普通は、東京や大阪にある大学のモンゴル語の教授が呼ばれるのですが、私は35年前からモンゴルには招待されてきました。モンゴルは日本で誰が一番意欲的か、研究しているか、きちんと情報を集めている。先生や先輩には申し訳ないなと思いながら、「さすが私の選んだモンゴルだ」と思っています(笑)。
今モンゴルで温泉研究所を作るという話もあるし、上海の名門、復旦大学に40坪もの私の研究室もできました。この書庫より広いわけです。今中国も豊かになってきて、糖尿病などが急増しつつあるので、予防医学の研究をしてほしいということでした。リゾート地として有名な海南島に世界最大級の健康回復センターを作ることも、私の大きなミッションです。中国の内蒙古で、中国初の本格的な温泉病院を作れる高レベルのお湯を見つけました。9月のことです。

――アジア諸国には温泉がたくさんあるのでしょうか?


松田忠徳氏: アジアの国々には温泉資源が多いです。日本の他にも中国、東南アジア、台湾も多い。モンゴルだって温泉病院が13カ所あり、アジアで唯一、温泉に80%医療保険がきく国です。ですから近い将来、世界の温泉研究や温泉医療、療養の中心をアジアに持ってきたいと考えています。ヨーロッパ、ドイツ、特に日本は薬を使用し過ぎで、それはアジアの人々を健康にするとは思えません。一時的に病気は治すかもしれないけど健康にはしない。ただ、「なぜ温泉がきくのか」のきちんとしたエビデンスをこれまで出してこなかったので、そのデータを作る作業を私は西洋医学の手法で中国とかモンゴルの病院に協力してもらってやっている最中です。日本でもようやく昨年から2か所の温泉地で入浴モニターを使った医学的検証を開始し、大変な成果が出ており、近く発表できると思います。



公的医療保険に温泉の適用を



松田忠徳氏: 私の死ぬまでの目標は、温泉で医療保険がきくようにすることです。日本のかつての湯治という習慣のお陰で、小さい国で、きゃしゃな体の日本人がここまでこられたと私は理解しています。でも一方で、温泉に医療保険がきくようになるのは、日本がアジアの中では最後の国かなと思っていたりもします。日本は内からは変わらない国なのです。申し訳ないけど、私は日本の政府には余り興味がありません。一般の人たち、温泉を愛する人たちに向けて訴えていきたい。女性は86歳で世界一長寿なんて言われていますが、実は健康寿命は73歳で、13年間寝たきりか介護を受けて世界一なんです。男性は、平均寿命は79.9歳ですが、健康寿命はたった70歳で、9年から10年介護を受けています。要するにお金の力で世界一の長寿の座を得ている。日本は最も温泉が多く、最も温泉と親しんでいる国のひとつです。それを有効に使わないで、金の力で寿命だけを伸ばすなんて文明的な国のやることじゃない。

――健康寿命を重視した医療の研究はどこまで進んでいるのでしょうか。


松田忠徳氏: アメリカは現代医療の最先端の国なのですが、同時に代替医療のトップランナーでもあります。がんで死ぬ人が減っています。例えば「腹七分目」という言葉を研究して、70%食べれば長寿遺伝子にスイッチが入るなど、研究が進んでいます。昔から伝わって来ていることの多くは科学的なんです。例えばアジアの伝統医学の考え方とヨーロッパの対症療法(現代医療)を両方組み合わせるのが世界の潮流です。日本は現代医学しかやっていないので、温泉を医療、保養にも使うようもっていきたいと考えています。日本のお医者さんは栄養学すらも勉強していませんが、アメリカでは必修になっています。日本では職業別平均寿命は発表になっていないのですが、多分医者は一般に思われているより短い方だと思います。お医者さんは病気を治す専門家であって、健康の専門家ではないんです。
日本だけで考えるより、アジアで考えた方が早い。そして政府よりも小さな自治体の方が早い。大分県の長湯温泉のある竹田市の温泉を十何年来指導してきているのですが、竹田市が市独自の温泉保険制度をやろうとしたところ、国に待ったをかけられて、目下、実証実験をやっているんです。まず自治体単位でやること、アジアの他の国がやることが日本を動かすことになると考えています。あと10年、後期高齢者になる75になるまでに決着をつけたいと思っています。75を過ぎたら、『日本温泉史』という、100年後にも古書店で求められる様な本を残す作業に入りたい。この2つが目下の私の夢です。

著書一覧『 松田忠徳

この著者のタグ: 『考え方』 『歴史』 『日本』 『健康』 『研究』 『速読』 『温泉』

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