いかに読みやすいか
――電子書籍に期待することや、可能性についてはどのようにお考えでしょうか?
桂木栄一氏: やはり若い人は電子書籍を読むと思います。イモトアヤコさんとお仕事で暫く一緒にいた時に思ったんですが、今の若い人は電子書籍の漫画なども普通に読みますよね。イモトさんの場合は3年間でだいたい80カ国も行っているので、本や漫画はほとんど電子で読んでいるようです。ご自身の本も「すぐ電子にしてほしい」と言われました。イモトさんの例は極端ですが(笑)どう考えても電子の方向へ進むと思います。検索性という部分ももちろんありますが、私はやっぱり一番は、いかに読みやすいかということだと思っています。Kindleなどは読み心地も相当本に近く、目も疲れないと言われていますが、まだまだ紙の方が絶対見やすいと思いますし、『dancyu』を作っている方は「料理の写真なんかは、紙で見た方がいい」と言っています。でも写真なども、技術的に紙と遜色がなくなれば電子でも問題ないと思います。
――電子書籍の普及により出版の垣根が低くなっていますが、電子化の時代における、出版社、編集者の役割はどのようなところにあると思いますか?
桂木栄一氏: あまり紙だ、電子だ、などとこだわらないで、良いものを届けるということが大事だと思います。あるいは、その特性によって上手く使い分ける。今、プレジデントでは、紙と電子が同時に作られることも多いですし、ネットで「PRESIDENT Online」というサイトをやっています。本の一部を出して、コラボレーションなどもしています。雑誌や新聞といった古いメディアだけでやっていくのには限界があるのかもしれません。
欲しいと思っているものを、タイムリーに届けること
――1回限りの勝負の中ででき上がっていく本。その本を作る側として、編集者としての桂木さんの使命とは、どのようなものだと思われていますか?
桂木栄一氏: 他のビジネスと一緒で、顧客に届くものを上手くくみ取って、いかにリーズナブルに出せるかということではないでしょうか。10年後、100年後に残したいという本を作ることも大事なことと思いますが、やっぱりビジネスなので、常に顧客の読みたいものを出し続けることが大切と思っています。
――今後、どのような展望を描かれていますか?
桂木栄一氏: 顧客に一番近いところに編集者はいるべきなので、そのためにも製販一体体制を維持するということがやっぱり大事。顧客から遠いところに行ってしまったら、おそらくヒットも生まれないし、成功しないんじゃないかと思います。いわゆるベストセラーの著者は、読者に近づいている人が多いのです。例えば今、ホリエモンの『ゼロ』がものすごく売れてますが、彼は書店回りをよくしています。名古屋でも札幌でも彼のサインを見かけました。彼や彼を支えるチームの動き方はとても参考になります。もう「作りっぱなし」「売りっぱなし」はやめにして、製版一体でヒットをとばせる組織にしたいですね。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 桂木栄一 』