本はいつも側にあり、支えてくれた
――本を書くきっかけは何だったのでしょうか?
藤井孝一氏: 僕自身、学生の頃、子どもの頃からずっと、本に助けられた、支えられたという思いがありました。いつも本は側にあったんです。当然、社会人になれば色々迷いとか悩みがあり、上司や先輩に相談するように、色々な本を読んでヒントをもらうという習慣をずっと続けていたんです。
――本の力をひしひしと感じていたのですね。
藤井孝一氏: そうですね、もう本当に習慣になっていました。通勤に片道1時間ぐらい掛かったので、そこで必ず行き帰りは本を読み、空き時間や隙間時間にも本を読んでいたんです。仕事に関する勉強系の本であったり、息抜きの本だったり。サラリーマンになってからは主にビジネス書を読んでいて、いわゆる経営書とか、ドラッカー、コトラーなどを読んでいました。
――お薦めの本はありますか?
藤井孝一氏: 古い本で僕が一番影響を受けたのは、『企業参謀』という本です。これは最近復刊されていますが、もともとは大前研一さんが30の時に書いた本です。『企業参謀』は何度も読み返しました。一番役に立った本で、コンサルタントになろうと思ったのもこの本がきっかけでした。
――読書経験や読書で学んだことは、講演など色々なところに活かされているのでしょうか?
藤井孝一氏: いつも学んでいないと、同じ知識で本を書いたりお話をしていても、飽きられてしまうので、インプットは欠かせないかなと思います。また、本はインプットですが、私自身はインプットというよりは、得たもの以上にアウトプットをして、自分の身にしてきたし、お金にも変えてきた、いわば仕事にしてきました。その辺のノウハウを文庫の書き下ろしで書いた本が、『読書は「アウトプット」が99%-その1冊にもっと「付加価値」をつける読み方 』という、この本なんです。
読者が「回収」できる本を書く
――読書というとインプットが重要だと思いがちですが、読書の際は、常にアウトプットを意識されているということですね。
藤井孝一氏: 僕はビジネス書を読んで、忘れてしまったり、難しいことを読んでも生かせなかったりすることが多かったんです。例えば、サラリーマンの頃だとカルロス・ゴーンさんの本。でも、営業の末端にいる人間がカルロス・ゴーンさんの本を読んで何に生かせるかというと、実はそのまま生かせることは少ないんですよね。でも1つでも法則を探すというか役立てようということで、まず要約をして、気が付いたところを書き出していったんです。僕は本を1冊読むと必ずそういうことをやっていたんです。それをメルマガにして配信したというのが、14、5年前から始めて、今も続けている書評のメルマガの始まりなんです。
――ただ読むだけじゃなく、消化してアウトプットされていたのですね。
藤井孝一氏: アウトプットの必要性を非常に感じていたんです。だけど、サラリーマンの自分にできることといったら、職場に生かすというのが一番なんですが、それはできなかったので書評も書いて配信するという方法にたどりつきました。毎日毎日、本を読んでは、アウトプットをするということを繰り返していたんです。
――1冊目の本『週末起業』は、どのような経緯で本になったのですか?
藤井孝一氏: メールマガジンを出していた方の紹介です。メルマガを発信したからこそ、新たなステージでの発信ができたんです。
書評のメルマガをやっている人がいるんだねということで、「何か本を書いてみないか」という話になったんです。アウトプットしていたので、「こいつ書けるんだな」というか、書きたいと思う意思があるなとか、なかなか面白いことを言うなと目に留まったのか、出版社から声が掛かったという感じです。
――アウトプットしたことから色々な方と出会ったり、本が生まれたのですね
藤井孝一氏: 「学んでよかったね」だと、本当に「よかったね」で終わってしまうので、多分回収できないと思うんです。1000円、2000円でも本は安いと言っても、月に10冊も読めば結構な出資になりますよね。だから、それ以上のものを回収したいという思いが強かった。そのためにはアウトプットしないと回収できないと気付いたんです。職場で生かすというのもアウトプットの仕方で、それで多少、上司に評価されボーナスが増えるとか、昇進して昇給するといったことでもいいんですが、もうちょっと手っ取り早く回収するために、書評を書くという方法をとりました。当時は、ネット書店が登場したばかりで、書評を書いている人がいなかったんです。だから、そこに書くと原稿料をくれたりしました。そんな風に、最初はお小遣い感覚ではじめました。
ひと月の本代に5万円ぐらい使っていたので、本を買うために稼がなきゃという切実な思いもありました。
――藤井さんの書く本というのも、皆さんがどこかで回収できるような本を、という思いが念頭にあるのでしょうか?
藤井孝一氏: そうですね。読んで「良かったです」と言われるのが一番辛くて、「読んで、やってみて、上手くいきました」という風につながっていってほしいんです。僕の書いているものって、感動したり心を震わせたりするようなことが書いてあるわけではないので、最後にはもう本のことなんか忘れられちゃってもいいとすら思っています。
――あくまで窓口だということですね。
藤井孝一氏: 僕の本が、その人の人生を少しでも豊かにするきっかけになればいいと思って書いています。
著書一覧『 藤井孝一 』