書店は出会いの場
――電子書籍に対して可能性をお感じになることはありますか?
藤井孝一氏: もちろん可能性は感じていますし、どんどんこれから伸びていくメディアだという風に思っています。ただ私自身は、正直言うと、まだ紙で読む方が便利なんです。読みやすさとか手触りとか、そういった部分でも、紙が好きなんです。ですから紙で読むんですが、電子書籍で非常に助かっている部分は、読んだ本の置き場所が必要ないというところ。僕は、読んだら切ってスキャンして、データに取り込んでいるんです。
電子化すると検索もできるので、そこは大きいんですよね。検索して、例えば「週末起業」という言葉を検索した時にパッと関連する書籍が出てきたら、すごく便利じゃないですか。
あと、旅行や長期出張の時に、何冊も持ち歩かなくてすむというのも良いですよね。紙の本の良さもあるし、電子の良さもある。だから使い分け次第だと思います。
――Amazonなど、ネット上で本を手に入れる方法がスタンダードになりつつありますが、今でも書店にはよく行かれますか?
藤井孝一氏: 毎日行っています。書店に行って本を買うのとネットで本を買うのとでは全く別の行為ですね。Amazonは、モリで一突きという様な、「狙い撃ち」といった感じですよね。でも書店はブラウズというか、出会いがあります。書店の場合は、例えば趣味の本など、全然読む気もなかった本を買って帰ったりしますが、そういう思いがけない本との出会いがあるのがいいですよね。ビジネス書は、基本的にどれもこれも大体知っているんですが、それ以外のホビー系や旅行系の本などは、本屋でふと手に取って、それがきっかけでのめり込んでいったということも結構あります。
――今後普及していくと予想されている電子書籍において、出版社や編集者の役割についてはどう思われますか?
藤井孝一氏: ますます重要になるんじゃないかと思います。電子書籍の登場で、本は誰でも出せる時代になりつつありますが、誰にでも本が読まれるかというとそんなことはないのです。読み手の目を持ちながら書ける人はいいんですが、読み手からのアドバイスみたいなものも必要ですよね。編集者は著者からすると読み手代表だし、読み手代表と書き手代表ということで、ちょうど橋渡し役じゃないですか。そういう機能ってどんなものでも必要だと思うんです。例えばメルマガやブログって書き手がダイレクトに読み手に伝えるメディアですが、殆ど読まれないですよね。そこには第三者の目だったり、プロの目だったり、そういう客観的な視点は必要になってくると思います。それはやっぱり編集者の仕事じゃないかなと思います。
多分、素人が書いてそのまま出版したって誰も読まない。プロが編集したものが結果的に残るんじゃないかなと思います。
――著作も含めて、今後の展望をお聞かせ下さい。
藤井孝一氏: 週末起業のアドバイスをしてきて、会社を辞めずに起業しようという人たちをお手伝いし始めて10年が経ちました。その中から、かなりの人たちが起業家になりましたので、これからは起業支援も力を入れてやっていきたいと思っています。起業家が活躍したり、反対に苦しんだりというのもあるので、彼らと一緒にまた成長できるような起業教育みたいなものや、起業の場のようなものの提供というのを引き続きやっていきたいなという風に思っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 藤井孝一 』