大久保一彦

Profile

1965年、神奈川県生まれ。飲食店チェーン数社に勤務したのち、「とんかつ新宿さぼてん」を展開する株式会社グリーンハウスに入社、同店の多店舗化を成功させる。また、数多くの不振店舗を蘇生させ、業界内外にその名を知られるようになる。97年の独立後は、上場企業や大手企業の商品開発や業態開発を行う。 ベストセラーとなった『誰も言わなかった! 飲食店成功の秘密』(フォレスト出版)をはじめ、『飲食店の「見える化」経営』(共著。日本能率協会マネジメントセンター)、『善の循環経営』(商業界)、『アンケートの作り方・活かし方』(PHPビジネス新書)など著書多数。

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ビザがおりず、国内の外食産業へ


――「食」に携わっているわけですが、そもそも「食」というものに小さい頃から興味があったのですか?


大久保一彦氏: 僕の親戚の多くが飲食店をやっていたんです。だから逆に僕は、飲食店やサービス業をやりたくなかったんです。高度成長期だったから、ステイタス性のある仕事に就く方が子どもの頃はいいと思うじゃないですか。例えば医者とか弁護士とか、大手企業に勤めるとか。若いうちはみんなそういう風に思うのではないでしょうか。僕はなんとか法学部に入れたのですが、親が病気になってしまったんです。それで仕方がないので、大学のお世話になって、縁故採用で東京地方裁判所に勤めることになったわけです。親がお金を払えないんだったら、夜間でも通信でもそういうので学校を維持した方がいいんじゃないかということで、東京地方裁判所で事務官として訴訟記録をチェックする部署に行きました。

――裁判所に入ってみて、いかがでしたか?


大久保一彦氏: 離婚訴訟など色々なことを目の当たりにして、「これは自分のやりたい仕事だったのか?」という風に思いました。そんな時、親戚の知り合いから「海外のレストランでちょうど人を募集しているから行ってみたら」と言われ、それでロンドンのレストランをやっている日本人の会社に入ろうと思ったんです。ところがビザが下りなかったので、仕方なく国内の外食産業に入ったんです。

――以前とは全く違う職種に入ったわけですが、どのようなお気持ちでしたか?


大久保一彦氏: 子どもの頃からよく料理もしていたので、基本的には、食べ物屋という職になんら抵抗というのはありませんでした。自分にとっては楽だし、当時はバブルの時代になっていたので公務員よりも年収は高かったんです。親が病気だったこともあり、収入面でも良かったと思っていましたね。

外部スタッフとしてコンサルティングを始める


――仕事をする際、どのような姿勢で取り組まれますか?


大久保一彦氏: 僕には「面白そうだ」ということで動く面があります。「これは楽しそうだな」「面白いな」とか、「収入になるな」と思った時、僕は流れにまかせて動くタイプです。

――面白そうな流れに自らもっていくといった感じでしょうか。


大久保一彦氏: 運命というか、そういう流れってあるじゃないですか。だからそこに逆らわないでやっていった方が良いと思います。
何回か転職して入った会社では、コンサルティングの部署で仕事をしていたのですが、コンサルティングはものすごい売り手市場だったので、顧問料などが、タイムチャージで「1分いくら」という世界でした。だから逆に言うと、お金のある企業とか目的が明確にある企業じゃないとコンサルティングって出せない状況だったんです。そういう中で「独立してやらない?」と言う人が出てくるわけです。例えば業者さんの紹介であったり、たまたま仕事関連で知り合った人だったり。例えばショッピングセンターの説明会に行けば名刺交換をして世間話をするじゃないですか。それで引き抜かれて社員になるという方法もあるのですが、要は顧問という形で1社から、例えば年収1000万とかもらうとお互いにリスクがあるわけです。だけどこれを月30万円ずつ3社ぐらいに分けると、相互にかかるリスクがものすごく減るんです。

――そう考えたことが、独立するきっかけになったのでしょうか?


大久保一彦氏: 行ってみたらひどい会社という場合もあるじゃないですか。だからそれを外部スタッフとしてコンサルティングをするというのもあるなと気が付きました。どう考えても今より収入も増えるし、仕事も面白そうだしということで僕の上司に相談したら、「独立できるんだったら早く独立した方がいい」と言って下さったんです。

――常に仕事を楽しんでいらっしゃるように感じます。


大久保一彦氏: 商売をやっているから、大変なこともたまにあります。今は社員を使っていないので資金繰りもそんなに心配することはないし、自分の食いぶちを稼げばいいのですが、例えば社員を雇っていると、固定費はそれなりになって次の月にちょっと仕事が入らないとダメだなと思っていても、ちゃんと大きな仕事が入るんですよ。本当に不思議なんですが、何度もそういう幸運なことがありました。これはちょっと社員の子を違う方向に持っていってあげた方がいいかなということで、学校の手伝いなどの依頼があった時にみんなそっちへ連れて行っちゃったんです。

――目の前のことを一生懸命やる、頑張る、でも楽しんでやるという所までいくことは、なかなか難しいようにも感じます。


大久保一彦氏: たぶん自分の将来があって、将来に向いてないといけなくて。それともう1つはお金が尽きるといけないから、お金を増やすということを仕事に落とし込むといいんですよね。それは利益「率」という意味ではなく、お金が増えているか増えてないかです。例えばお客さんと接した時に、次回またお客さんが来ればお金は増えるわけじゃないですか。来なければまたお金を使って今度お客さんを集めなきゃいけない。残念ながら、周りの状況を見ると、後者に陥りがちなので、接客1つにしてもやっぱり精度を上げないといけない、と思います。そういう仕事のスタイルをしていくことが僕のやってきた仕事なんでしょうね。だから今、なんで僕が現場にいた時に売り上げをものすごく上げたのかなと考えると、やっぱりそれを実践していたからだと思うんです。

著書一覧『 大久保一彦

この著者のタグ: 『コンサルタント』 『コンサルティング』 『食』 『世代』 『飲食店』 『ランチェスター』

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