料理本のジレンマからの解放
――電子書籍において、編集者の役割は重要だと思われますか?
浅倉ユキ氏: 編集者が入らない電子書籍は、ブログとの差異が難しいですよね。編集者の手が入るか入らないかでは、製品としての完成度が違うような気が私はします。電子書籍では動画を入れたりできるので、料理本としてはすごく魅力があります。材料はどこで買えるのかといった質問がきたりもしますので、リンクを貼って外部サイトで購入できるようになると、読者としては便利だと思います。
――料理本は実生活と密接に繋がっているので、リンクできるのは便利ですね。
浅倉ユキ氏: 本当は全行程を見せたいなと思う料理があっても、レシピ本の場合は4カット位までというような決まりがあるんです。でも電子書籍なら、動画にしたりコマ送りにしたりできるので、そういった縛りがなくなりますよね。あと、たくさん写真を載せたいけれどその結果1枚1枚の写真が小さな写真ばかりになってしまうと、参考にならないというジレンマがあります。電子書籍の場合は写真を拡大できるので、小さな写真になることは気にしなくてもいいから良いですよね。
――書き手として、本の魅力とはどのようなところにあると思われますか?
浅倉ユキ氏: 私は本に期待するのは「浅く広く」という部分なんです。自分が一生懸命考えたアイディアをたくさんの人たちにお伝えしたいと考えても、料理教室で1度に教えられる人数は限られています。例えば1回の人数が50人で、週休2日で教えても月に1000人位。直に教えるのは「狭く深く」の世界ですが、書籍の場合は、深くは教えられないですが、アイディアとしては、ある程度はきちんと伝えることができる。1度に10000人などという、多くの人と接点を持てるというのは、やっぱりすごいことだと思います。
重要なのはゴールを最初に決めること
――本を作る際に、気を付けていることはありますか?
浅倉ユキ氏: 去年は家事やセルフカウンセリングの本を出させていただきましたが、言っていることは全部同じなのかなと自分の中では思っているんです。共通するのは、ゴール意識。まずは、「家庭料理のゴールはどこなのか」というところを決めなければいけないと私は思っています。私の準備しているゴールは、「ヘルシーで、家族がきちんと食べて、簡単である」ということ。家庭料理はこの3つが揃っていれば別に料理のレパートリーが多くなくてもいいのです。その3つが揃っていて、かつ皆が作ろうと思えるような工程や材料であるレシピを私は考え続けています。目指しているゴールによって必要な本も変わってくると思うので、先にゴールを決めないと本も選びようがないですよね。
――手帳術に関しての本も出版されていますね。
浅倉ユキ氏: 手帳術に関しても同様で「どうなったら自分は最高にハッピーになるのか」ということの答えがない人は、目の前のことを一生懸命やっても幸せにならないのだと私は思っています。必死で走って顔を上げたらゴールとは全然違うところにいる可能性もあるので、今日のゴール、今月のゴールというものを定めて、それに至る道を付箋で繋げていって、剥がしていけば終わる。「全てを自分の意図した通りに進めるために手帳がある」という風に考えると本当に楽なんです。料理も手帳も家事も、理想形は何かということを問うところから全部始まっているコンテンツなのです。
――まず大事なのは、ゴール意識なんですね。
浅倉ユキ氏: 主婦業は、毎日朝起きてから夜寝るまで走り続けているという感じだと思うんです。男性と比べて女性の主婦業などは、ゴール意識があまり叩きこまれてないというか、プロジェクトに終わりがないんです。ご飯作りはエンドレスですし、子育ても20歳で本当に終わるわけでもありません。それに「手をかけて育てれば良い子になる」といったセオリー通りにいくわけでもありません。だからゴールを見失いやすい部分があると思うんです。仕事はゴールにおいてのみ言えば、分かりやすい節目があって、1個1個終わったら解放感、達成感が得やすいものですよね。それに対して生活においてはゴールがはっきりしていない。だからこそ、料理だったらこういうのがゴールとか、夫婦関係だったらこういうのがゴールといったように、1つ1つ決めていったほうがいいと私は思うのです。
――今年はどのようなことに力を入れたいと思われていますか?
浅倉ユキ氏: 書籍に限らず、生活がちょっとでも楽しくなる方法を、もっと色々な形で届けていきたいと思っています。去年の年末から今年の初めにかけては、手帳術をビジネス向けに展開することをすごく意識していました。でも、今までやってきた女性に対する支援に関して、もっとやれることがあるなという風にも思っているので、そちらの方にも改めて力を入れていきたいですね。あと、手帳術のインストラクターを各県に1人位配置できたら良いなということも考えています。
家族が楽しめているというのが私にとっては唯一無二のゴールなので、頑張っているということはあまり関係がないんです。家事ができてなくても「ごめん、できてない」と笑って済ますことのできる環境があれば頑張る必要もない。その辺を男性、女性共に見失ってしまいがちです。うちの父には「出世しなくてもいいから残業を一切しない」というポリシーがあって、いつも早く家に帰ってきていました。本人さえ幸せなら、外からの評価なんて関係ないんです。家庭に関しては「楽しい」ということが根本的なものなのだということを、思い出してほしいと私は願っています。
(聞き手:沖中幸太郎)
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