深尾光洋

Profile

1951年、岐阜県生まれ。京都大学工学部卒業後、日本銀行入行。米国ミシガン大学に留学し1981年に経済学博士(Ph.D)を取得。その後、経済企画庁 調査局、OECD(経済協力開発機構)金融財政政策課エコノミスト、日本銀行調査統計局参事などを経て現職。専門は国際金融論、金融論、コーポレート・ガバナンス。 著書に『財政破綻は回避できるか』『国際金融論講義』『中国経済のマクロ分析 高成長は持続可能か』(日本経済新聞出版社)、『メガバンクと巨大生保が破綻する日』(講談社プラスアルファ文庫)、など多数。『為替レートと金融市場』(東洋経済新報社)では日経・経済図書文化賞を受賞した。

Book Information

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難しいものを分かりやすく


――本について、書き手としてどのような想いで執筆されていますか。


深尾光洋氏: 本は「勉強ノート」です。ある分野が分からない時は、自分で分かるようにノートして書きためますよね。それをまとめたものが「本」。私の博士論文は為替レートの決定理論ですが、留学する前には日銀の営業局で外国銀行のディーラーと毎日のように話をしていまして、円高を防ぐために外為市場への介入や様々な規制をやるのですが全然効かないわけです。一体、為替の需給はどうなっているのか。納得できる論文が無かったので、米国留学中に考え勉強した結果をまとめました。

それが、『為替レートと金融市場』という日経賞を取った本です。既存の文献で分かっていない経済現象を分かるように説明して書けば、学問の業績になるわけです。

――それを一般に向けて書く場合、どんなところに気を配っていますか?


深尾光洋氏: なるべく分かりやすくと思っていますが、同時にクオリティも維持しなければいけませんので、それをどうするかです。そういう時にはやはり編集者の役割が大きいですね。編集者というのは、きちんと書かせるというか、借金取りみたいなもので(笑)執筆者にプレッシャーをうまくかける技術はあると思いますね。期日管理というか。原稿に関して言えば、分かりやすくするために編集者からのコメントがたくさん入ることもあります。そうした場合は、当然のことですから直します。難しいことを難しく書くのは簡単ですから。

――電子化時代の、出版社や編集者の役割はいかがでしょう。


深尾光洋氏: ネットに書いてあるものが玉石混淆で、それを吟味、峻別できる人が少ないことは問題ですよね。デマみたいなものがいっぱいありますので。私もFacebookのアカウントは持っていますがTwitterはしていません。ツイートは短すぎて、非常にリスクがあると思います。どんな物事にも「こういう場合はこうだけど、別の場合はこうだ」というものが多いですから。一方的に「これはだめです」という話はない。きちんと説明するには、最低でも1ページか2ページの文章はいると思います。

――先生の想いは、今後どのような形で伝えていかれるのでしょう。


深尾光洋氏: 日本経済だけではなく世界の経済がどう動いていくのか、出来るだけ理解して、これまで出ていない分野があればコラムや本を書いていきたいと思っています。実は、私も学生にものすごく教えられることがあります。私のゼミの怖いところは卒論がA4プリントで60枚以上。それを卒業の年のクリスマスイブまでに提出する(笑)。学生には年末はゆっくり過ごしていただこうと思いまして(笑)。

中国人の留学生が中国の土地所有問題について歴史も含めて詳細に書いてくれるなど、読むと、面白いものがいっぱいあるわけです。卒論のうちの3分の1ぐらいは私から見ても大変面白いものがありますので、かなり自分の勉強になります。そうして、学生たちと新しい発見をしていきたいですね。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 深尾光洋

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