自らの興味と世の中への貢献の接点を探る
中東・イスラーム研究における第一人者である歴史学者の山内昌之さん。多数の企業の顧問を務められると同時に、精力的に研究執筆されています。大著『中東国際関係史研究』を出版し、トルコでの取材を終えたばかりの山内先生に、歴史学者への歩み、「いかに貢献できるか」という学者の本分、執筆、編集者への想いについて伺ってきました。
自らの目で見て、考える
――トルコから帰ってきたばかりですね。
山内昌之氏: 執筆を終えた後に2週間行きました。そのうち1週間は丸々山の中に入っていました。執筆する際には、史料研究も大事ですが、その背景について、自らの目で見ておくことも欠かせないことで、書いた後に行ってきたという次第です。
――その史料も含め、こちらにはたくさんの本があります。
山内昌之氏: 長い研究生活でたまった本は自宅にも収まりきらず、家と仕事場にそれぞれ分散して置いています。どこにどの本があるのか把握するのは、大量の書籍を持たざるをえない人間の一番の難点。なかなか苦労しますよ(笑)。探したはずが見つからないので、新たに買うこともあります。2~3000円の本なら、まだあきらめもつくのですが、10万円近いようなシリーズの本もあり参っています。どう探してもなかったから改めて買った本が出てきたので、この部屋には同じ本が2セットあります。こういうことが起こりうるわけです。
自分の好きな本は、大体どこにあるか分かるのですが、仕事上必要である史料的な本の場合、整理が悪いと困りますね。電子媒体などがさらに発展していけば、こういった問題に対して大きな助けになるのではないでしょうか。
――電子媒体は検索の手助けや、場所の解決になると。
山内昌之氏: その可能性は大きいと思います。また私の場合、端末一台で古今東西の書物が随時持ち歩けるという利用価値は絶大です。例えばプルタルコスの『モラリア』とか、モンテーニュの『エセー』とかを入れておこうと。自分の手元に置いておきたい、常に読みたいと思う本が多いですね。
私の連れ合いは電子書籍を大いに利用しており、小説などは大体、電子書籍で読むそうです。私はまだアナログで(笑)、活字は紙で読みたいという気持ちは、やっぱりありますよね。
――研究書以外には古典を好まれるのですね。
山内昌之氏: 研究のために読むトルコ関連の書物やロシア語に関する史料や文献と違って、一読者として、楽しみながら日本や西洋の古典を読んでいます。