より多くの人に発信するために
――その成功や失敗という経験を生かして、本にまとめられています。
山崎啓支氏: このままでは「心が病んでしまう」という人を見て、助けないわけにはいかない、そういう気持ちでNLPに携わっていますが、色々な理由でセミナーに来られない人にも、そのエッセンスだけでも学んでいただければと思い、本という媒体に託し発信しています。それは、生きた証として、人生という放物線に座標を打つような作業だと思っています。その時その時に命を懸けて伝えた思いを、もの凄いエネルギーで残しているような感じです。私のセミナーに来た人が、大きな変化を体験し、それで救われた人が大勢います…私はいつもその場の直感を大切にしてセミナーを行っているため、常に新しい方法を生み出しています。また、私自身が大きく変化していくので、かつての受講生を大きく変化させた方法ですら扱わなくなっていきます。しかし、ある時に人間を大きく変化させた方法を、未来において必要としている人がいると思うのです。それを書き留めておくことで、それを必要とする人がいつの時代でも学べるような形にしておきたいと思うのです。
電子書籍もその一つです。どんどん広がっていくといいと思います。本を作るのは本当に大変なので、著者としては、絶版になるのは寂しいのです。電子書籍はずっと残るので、今は手にしない子供たちが、大人になった時に、手に取って読むことができます。それから本というのは、その時期その時期にしか書けないものがあります。私の場合は『願いがかなうNLP』で、今はもう書けないと思います。私自身も変化して重要になるテーマも違ってくるので、その当時の情熱的な表現、文章も今書けるかどうか分かりませんから。
――その時々の想い、情熱を託すのですね。
山崎啓支氏: その際一緒に本作りをしていく編集者のアドバイスはありがたいですよね。編集者が手綱を締めてくれるから、マッチした内容の本が書けます。著者は、自分の書きたいことやこだわりがあると思うのですが、編集者はあえてそこに苦言を呈して、上手に信頼関係を築きながらうまく修正して、本にしてくれていると感じています。文面が一般の読者に受け入れられるかどうかをチェックしてもらうのですが、そういうところは編集者のほうが優れていると感じています。意見が違ってくるときには説明して理解してもらうように務めますが、基本的には、編集者の言うことに従います。NLPのラポール(信頼関係)、ミラーリング(相手と動作・しぐさを合わせること)などを感じていますね。私が編集者を尊重すると、私も尊重されるのです。編集者と著者が良い関係にあって、協力しあう時に奇跡的な良い作品が生まれると思っています。
「観念の箱」を開けてみよう
――これからどのような気持ちを記されていくのでしょう。
山崎啓支氏: 私は、人間一人一人に「根本的変化」を実現していきたいと思っています。人間というのは、狭い箱(=牢獄)の中でとても不自由な思いをして生きています。その箱(=牢獄)は、「~べき」とか「〜ければならない」という、自分で作った観念の箱なのです。例えば、赤い色眼鏡を掛けることを認識して世界を覗けば「自分は赤い色眼鏡を掛けているから、赤い世界が見えている」と気づけますが、自分で作った観念の箱の中では、どうしてそう見えるのかということ自体わからないのです。
「自分は自由に生きている」と思っていても、実際にはとても不自由なのです。それでも、箱の中で心地よく生きるようになるための技術(能力開発技法・心理療法など)はたくさんあります。私は、それによる変化を「修正的変化」と呼んでいます。その箱(=牢獄)の中の壁紙の色を変えたり、ソファーを買ってみたりですね。
でも、箱(=牢獄)にいる限りにおいては、根本的に不自由なのは変わりません。本当にその牢獄から出られるような「根本的変化」を経るには、今の自分をある程度手放していく必要があります。痛みも伴いますが、そうしないと根本的に幸せにはなれません。今は、苦しみの上でのちょっとした幸せでしかない。私は、今日お話ししたような自分の経験から、「根本的に幸せな状態は誰でも実現できる可能性がある」と思っています。それを実現できる方法を、これからも機会を得るごとに、多くの人々に伝えていきたいと思います。
(聞き手:沖中幸太郎)
著書一覧『 山崎啓支 』