森俊憲

Profile

1971年生まれ、福岡県出身。 大学卒業後、京セラ株式会社及びVodafone、ソフトバンクモバイルにて携帯電話の商品開発・プロダクトマネージャーを務める。会社員として働きながら、学生時にトレーニングで培った体を維持するために確立させたノウハウを世に広めるべく独立し、2007年株式会社ボディクエスト設立。自らの実体験に基づきメソッド開発したオンライン方式のパーソナルトレーニングプログラムにて、これまでに7,500名以上への個別カウンセリングやパーソナルトレーニング指導を行う。 著書に『へやトレ2週間即効プログラム』(主婦の友社)、「筋トレを続ける技術」(池田書店)など。

Book Information

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トレーニングの裾野を広げる



森俊憲氏: ある日、出版関係の人と顔見知りになることができました。「本の原稿は二冊分、あります。売れる自信もあります」と、商業出版まで応援してくれるコンサルティングをやっている方に相談しました。2010年の6月には『読む筋トレ』と、三笠書房の『30代から始める「タフな体」のつくり方』が、ほぼ同時に出ました。編集の際、読み手に伝わりやすくなるためにストーリーの論理構築のアドバイスをもらいました。そうすると、「少し流れを変えるだけで、こんなにわかりやすくなるのか」と驚いたのを覚えています。

――編集次第で本も変わると。


森俊憲氏: ええ。すごく、新鮮でした。結構、反響があって、「読後の高揚感がすごい」とか、「もう、いてもたってもいられなくなる」といようなことを言ってくれる人も多かったですね。筋トレをやりたくなると思わせるだけのモチベーションを、言葉によって色々な人が獲得できたというのは嬉しかったですし、その想いを伝える文章の素晴らしさを感じました。その『読む筋トレ』が売れて、『へやトレ』のシリーズなどへとつながっていきました。



――どういう思いで、本を届けていますか。


森俊憲氏: 日本のビジネスマンは、自分の健康を第一に考えるというよりは、会社に対して貢献することを優先している人が多いように感じます。運動不足の人も多いですよね。でもやっぱり“体が資本”なので、体が健康で強くないと良い仕事もできません。体が強くなれば自己像も強化されて、“やればできる”という感覚もどんどん強くなる。そうすると、仕事の成果も変わってくると思うのです。

“フィットネス先進国の視察”ということで、アメリカにも定期的に行っていますが、印象的だったのがシカゴのビジネスの中心地、日本でいうと大手町の真ん中といった場所にあったジム。たまたまそのジムを訪れたのが、ランチタイムでした。日本でそういう時間にジムに行く人は、「午後からの仕事もあるし、軽くね」という感じかもしれませんが、そこはジムもスタジオフロアも自転車も、全部うまっていました。皆さん自分を追い込んでガッツリやっていたので驚きましたし、正直「勝てねえな」とも思いましたよ(笑)。

――筋トレに対する意識差がありますね(耳が痛いです)。その中で森さんの役割とは。


森俊憲氏: もっとトレーニングの裾野を広げたいですね。筋トレに対する意識は、日本ではまだまだ薄いです。「究極的に効率を求めるメニューを考えよう」と考えると、その答えはやっぱり筋トレに行き着きます。筋トレによって自分の体組成、体重、体脂肪、筋肉量が維持できるのです。総合フィットネスクラブに行くと、ランニングマシーンや自転車マシーンで頑張る人が多く、フリーウェイト(バーベルやダンベルなどの器具)を使う人は減ってきています。危険だからという理由で、置いていないというジムもありますね。それぞれのスポーツクラブの考え方もあるし、エリアマーケティングの結果そうなっているのかもしれません。年配者が多い地域でも、よく見受けられるスタイルです。日本のジムも、個性が出てきました。しかし、まだ自分の体のマネジメントに関して、体重で見ている人も多いんです。

――数値だけでは分からない問題も多くありそうですね。


森俊憲氏: そうなのです。身長と体重のバランスでBMIという数値が出てきますが、筋肉の方が脂肪よりも重いので、私はBMIならば“肥満”ということになります。BMIや体重ではわからないことも多いから、もし数値で管理するなら最低限、体脂肪を見てほしいです。もっと言うなら、“見た目”を考えてほしいのです。シルエット、体つき、それから表情を人は見るので、結局は何のためのトレーニングなのかといえば、“見た目”のため。1キロの筋肉と脂肪があったら、脂肪の方が体積が1.2倍ぐらい大きいから、同じ身長であっても、体つきが全く違ったりもします。「40になった今でも、体重は20代の頃と変わっていません。だから何の問題もありません」という風に言う人も多いかもしれませんが、実際には中身は変わっているので、実は“隠れ肥満”の人もたくさんいます。

――それはすごく危険ですね。


森俊憲氏: ええ。私が今、期待しているのが、“Fitbit” などのライフトラッカーです。これはライフログを測るツールで、歩数や睡眠など、体重などの数値だけでは分からないことが見えてきます。運動につながるような活動量が確保できているかどうかとか、睡眠はコンスタントに取れているかとか、まずは自分の行動と客観的なログデータをきちんと把握できるということが重要なんです。短いスパンではわかりにくいかもしれませんが、これが1週間とか半年、1年となっていくと、その傾向がつかめると思います。

またデータをトレーナーと共有できることも大きな魅力です。「最近、頑張っていますね」とか、「ちょっとさぼっていませんか」などと声をかけたりもできます。日々の活動を担当トレーナーが見てくれて、アドバイスをくれるようになると、モチベーションも上がります。オンラインの場合、特にこういったデータの共有は大きな可能性を秘めていると思います。

筋トレとの新たなタッチポイントで新たな価値を



森俊憲氏: 放っておくと、筋肉はどんどん減ってしまいます。体重は変わらないけれど体つきが変わっているのは、筋肉量が減っているから。筋肉が減ると基礎代謝が下がります。だから、体重を維持するのが目的だったとしても、減る分の筋肉を維持するために、やはり筋トレは不可欠なのです。色々あるチョイスの中の一つとして、家の中でもできる体重をおもりにした“自重の筋トレ”を提案しています。あくまでも、自分のやっているサービスのベースは、「自分だったら、どうしてもらいたいか」ということ。色々なやり方もあると思いますが、私は基本的に叱ったり、怒ったりせずに褒めるようにしています。ただ最近は、楽をして痩せようという人がだんだんと減ってきたようにも思います。これはすごく良い傾向ですね。

――今年出た『へやトレスタートBOOK』などもありますし、タッチポイントが、色々な形で広がっていきそうですね。


森俊憲氏: そうですね。今まで『へやトレ』で紹介した全ての動画がPCやタブレット、スマホで見ることができるようになっています。色々と見やすいように工夫してこういうスタイルにしました。中身は今まで出したものを惜しみなく網羅して、税別599円(笑)。これは、読者が使いやすいというところを重視しました。こういうもので、新たな接点が作れるかもしれませんね。

私が携わっている健康を応援するサービスやコンテンツやソフトというものは、色々なことにつながっています。例えば生命保険の場合ですと、病気や死亡時の保障だけでなく、加入者の病気を防ぐ生活習慣を提案したりできます。食品会社の場合も、食品と運動の効果的な組み合わせを提案できます。ボディクエストが多方面の分野と結びつくことによって、さらに大きな価値を生み出せると思っています。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 森俊憲

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