人の可能性を伸ばす 真の人材育成を
組織や人材の開発、人事制度などのコンサルティングを行なう株式会社Indigo Blueの代表を務める柴田励司さん。「成長」をキーワードに、次世代リーダー育成のための「柴田塾」など、実践力をつける“場”を提供しています。「周りの人を幸せにしたい」その想いの原点を辿ってみました。
未来を描く 新たな取り組み
――Indigo Blueの他にも、様々な活動に取り組まれています。
柴田励司氏: はい。東証マザーズに上場しているパスという会社のCEOをやっています。全ての仕事は自分の中でつながっています。一貫してあるのは人が成長する、育っていく“場”を作りたいという想いです。人材育成は「70:20:10」で、70%の影響を与えるものが経験。20が上司や仲間など、誰とするか、仲間ですね。そして、10というのが研修です。人材育成=研修というイメージが強いのですが、本来一番大切なのは経験で、それをやる場所が “場”です。Indigo Blueでは、そういった“場”を疑似的に体験してもらう活動をしています。代表的なものがOrganization Theater(OT)というプログラムです。
OTでは、プロの役者が扮する登場人物と、1日から3日間のロールプレイをやってもらいます。この“場”は修羅場の疑似体験です。参加者にはその経験を通じて、不測事態が発生したときの動き方、自分の心のもちように気づいてもらいます。
今の日本のように経済的に成熟すると、仕組みが整うので、その仕組みをいかにきちんとするかという仕事になりがちで、白地に字を書いたり絵を描いたりしていくという仕事が、とても少ないのです。塗り絵のように「あらかじめ線が引いてあるところを、きれいに塗れ」という仕事だけでは、新たなものは生まれません。仕組みも大切ですが、新たな取り組みをしないと未来は描けません。パスを通じて、こうした“場”を提供していきたいと思っています。
本から学んだ「成長」
――柴田さんから「新しい」「楽しい」というキーワードが浮かんできます。
柴田励司氏: ガキ大将ではなかったものの、昔から、新しい遊びを考えては、周りの人を巻き込んで何かやっていましたね。ただ、すぐに飽きてやらなくなってしまうので、評判は悪かったかもしれません(笑)。
小さいころ、近所にジョンというとても吠える犬がいたので、みんなで懲らしめようとしたところ、いざ対峙した瞬間、一緒にいた友人はみんなクモの子を散らすように逃げてしまい、ジョンとぼくの1対1のタイマンになってしまって大敗(笑)。それで15針ぐらい縫いました。ほかにも、「大車輪ができるようになった」とまわりに嘘をついたら、大勢の人が見に来てしまい、仕方なく挑戦したものの結局失敗してけがをしたりと、そういうことがたくさんあって、おそらく小学生のあいだに、70針ほど縫っていると思います。
――ご両親大変だったんじゃないですか(笑)。
柴田励司氏: その手のことは枚挙にいとまがなかったからか、あまりガミガミ言われませんでした。でも、結構大変だったんじゃないかな(笑)。家がそれほど豊かな方ではなかったので、母が働いていたのと、一人っ子だと過保護になってしまうからと、わざと鍵っ子にされていました。そういったこともあって、やんちゃな割には本もずいぶん読んでいました。自然と本が知識など、何かを知りたいと思った時の窓口になっていました。図書館にもよく通っていたので、身近な存在でした。
その頃、バイブルになった本に出会います。当時、バレーボール全日本男子の監督だった松平康隆さんが書いた『負けてたまるか!』という本です。ちょうどぼくたちは、ミュンヘンオリンピック世代で、男子バレーボール全盛の時代で、とてもインパクトがありました。代表を14人から12人に絞らなければいけない話や、選手一人ひとりを見て指導の仕方を変えていること。それから、良かれと思ったらすぐにマネするというようなことが書かれていました。これが全部、自分のベースになりましたね。