秋津学

Profile

アットホームで実践的な株チャート研究会『積乱雲』を主宰し、幾多の黒帯投資家を輩出してきた株投資ナビゲーター。海外のカリスマトレーダーについて造詣が深い投資ジャーナリストでもある。元英国ロー・スクール客員フェロー(Ph.D.)。 著書に『株価チャート練習帳』(東洋経済新報社)を始め、『「雲と線」私だけの株・FX教科書』(毎日新聞社)、『「移動平均線」満足度99%の株売買術』『大きく稼ぐトレーダーは「ブレーク法」を使う』(東京イーブックス)などがある。

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妻の素人視点が役に立った


――そんなふうにしてはぐくみ培われた知見が「株」という分野で発揮されることになったのは。


秋津学氏: 最初はやはり学者として「教育」という観点からのスタートでした。英書もずいぶん読んだし、論文も書いたところで、それを役に立てたいと考えました。しかしフリーランスでどこまで出来るか、誰に何をどこでどんな方法で教えられるか。そこでテキスト、読者の根幹となる教科書を作ろうと思ったのです。フリーランスの立場や学問トピックでいくら良質な教育を提供したところで、人々は興味を持たないことは、アマゾンで関連本の動きや傾向を見ると、およそ検討がつきました。考えあぐねたあげくに、妻に聞いてみたところ次のような答えが返ってきました。

「あなたが読者から反響を受けたもので、もっとも熱狂的な読者がいたトピックて何? その読者を対象にした教科書を書いてみたらいいと思う」

妻が話し終わる前に、私は答えを浮かべていました。それは「株投資の教科書」を書くと言うことでした。株本の処女作『株で毎日を優雅に暮らす法』は掲示板をつかった株投資家の学びの場から生まれた本でした。「積乱雲」の初期の形態を備えており、現在3年半になる「積乱雲」はその反省点を解決し、学びの要素を強くした掲示板で実験を続けています。

――東洋経済新報社で出された『勝率8.5割を目指す株価チャート練習帳』以下三部作はベストセラーになりましたね。


秋津学氏: 取次店ビジネス部門で年間ベスト10位以内にランクされたほどでした。実は売り物となった、チャートを読者に見せて「買いか、売りか、様子見か」の視覚的な設問形式は、今はどの株本にも真似られていますが、アイディアを出してくれたのは妻でした。「なぜ、売る、買う、休む、ということがわかるの」という単純な質問がきっかけだったのです。



お陰様で大好評を得て、三部作後『勝率9割を目指す 株価チャート練習帳』、『「雲と線」私だけの株・FX教科書』と続いていきました。最近はキンドルで『「移動平均線」満足度99%の株売買術』を出しましたが、読者に受け入れられているようです。キンドルなどの電子ブックは、株教科書作りをする著者の私にかなりの有利性があります。

例えば①読者の要望がダイレクトに電子書籍に生かせる、②取材編集記者経験を丸ごと使える、③企画から出版まで無駄がなく早い、④改訂がしやすい、⑤原稿枚数・分量の制限がない、⑥図表の多用が気にならない、⑦企画がすぐ実現、⑧紙本では出版が難しい上級者向けの本を出せる、⑨著者が進歩したら本も進歩する、⑩読者が読みたいエッセンスだけの本も作れる、などと、まさに私が求めてきた自由な世界で本を出版できると言えると思います。

――本のタイトルにも“変化”が見られますね。


秋津学氏: タイトルの変化は進化の証でもあると思っています(笑)。「雲と線」という詩的な表現をタイトルにつけることを試みたのも、一目均衡表の従来の読み方を超えて、創意工夫をプラスしたかったのです。その結果「秋津式8の法則」を編み出せました。やはりチャートの読み方を進化させたいものですから。

どの株教科書づくりにおいても、素人である妻が「なぜチャートではこういう現象が起きるの?」などと非常に素朴な質問を投げかけてくれます。その影響で、私のキーワード思考が刺激されて、新しい読み方の発見や知恵の断片や株価の動きのイメージが浮かび上がります。そして私はそうした偶然的な果実を会員にできるだけ提供しています。現在抱いている私の最大の関心は、金融経済の指数・指標や情報をいかに利用すれば、明日、1か月後、そして1年後の相場の姿を予見できるか、です。言葉を換えれば、今日の新聞に未来の記事を書いておきたいのです。

どこまで書けるか分からないですけれど、投資家心理、出来高エネルギー、チャートパターンの形状など流動的な因子を利用しつつ、「本丸」に迫っていくつもりです。株式売買は人間であるトレーダーの意思決定から、時代はシステムトレードに向かってダイナミズムを展開させているようですので、その中にヒントはあると思います。

読者から与えられた「役割」で進化する



秋津学氏: 物事が起こる前にその事を見通す予見がどこまで可能なのか。このテーマは将来に渡ってずっと研究していきたい。経済金融社会を分析してこの国の先行きが見えるなら、これはライフワークですね。

株式相場のダイナミズムが私の心に響く以上、新しいものは書けると思います。使命という表現は大げさでしょうが、良いことを持続すれば役割は増殖すると思います。良い本を出せば、読者に評価してもらえる相乗効果が生まれるでしょう。役割は評価によって作られるはずです。これからもチャレンジを重ね、進化し、そこで得た成果を本に書いて伝えていき、読者から与えられた「役割」で貢献したいと思います。それが、私が求める自由の先にある願いかも知れません。

(聞き手:沖中幸太郎)

著書一覧『 秋津学

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