枝廣淳子

Profile

1962年生まれ、京都府出身。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。2年間の米国生活をきっかけに29才から英語の勉強をはじめ、同時通訳者・翻訳者・環境ジャーナリストとなる。環境問題に関する国内外の動き、新しい経済や社会のあり方、幸福度、レジリエンス(しなやかな強さ)を高めるための考え方や事例等、伝えることで変化を創り、つながりと対話で、しなやかに強く幸せな未来の共創をめざす。著訳書に『不都合な真実』(ランダムハウス講談社)、『レジリエンスとは何か―何があっても折れないこころ、暮らし、地域、社会をつくる』(東洋経済新報社)、『世界はシステムで動く』(英治出版)など。

Book Information

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挑戦を重ねて 繋がる問題意識



枝廣淳子氏: 教養課程では、色々な心の動きを解明できる一つのフレームである心理学と出会い、その面白さを感じました。3年時には教育心理を選び「カウンセラーになろう」と臨床心理を学びました。当時カウンセラーになるには、修士もしくは博士に進むのがセオリーでしたが、大学で理論を学んだだけの人間に、社会の苦しみが理解できるのか、解決できるのか。私はしだいに大きな疑問を感じるようになりました。修士までは進みましたが、修士2年の秋に、一度社会に出ることにしました。

院卒で、女性で、学生結婚という状態の私を採用してくれたのが、サンマークという会社でした。幼児用教材の訪問販売の営業職の募集に応募したのですが、私は開発部で採用されました。しかし、採用担当の役員の方が異動になり、社会人のスタートは訪問販売の営業から始まりました。地図と名簿を渡されて、訪問販売につなげるためのアンケートをとりにまわりました。

つらいことも多く心が折れそうになりましたが、すごく勉強になりました。4年後の29歳の時に、夫の留学でアメリカに行くことになり、退職しなければならなくなりましたが、懇意にしていただいた部長から「アメリカ支局長」に任命され、現地の新聞や雑誌を見て、日本関係の情報をレポートする仕事を頂きました。苦手だった英語も克服しながら、レポートを毎月提出していたことが、のちの同時通訳者という仕事に繋がります。

それまで、英語は大の苦手でしたが「一生、英語コンプレックスを引きずるのもしんどいから、2年間頑張ってみよう。どうせやるんだったら、同時通訳者を目指そう」と決心をしました。
当初は、英語のスピードの速さに驚きましたが、聴覚障害者向けのキャプションを活用して、リスニングを鍛えました。最初は“Clinton(クリントン)”という固有名詞しかわからなかったのが、だんだんとわかるようになってきました。

帰国後に、通訳の仕事を始めました。通訳者には一定の仕事場はなく、コンピューターの会議から政府間交渉まで様々でした。その中でも特に興味深かったのが、環境会議の通訳の仕事です。環境問題は、人間の私利私欲で起こる一方で、その問題解決には「人類のため、未来世代のため」と考える人たちがいます。そうした人間の善悪がせめぎ合うことに興味を覚えました。

環境問題の通訳をするようになったのは、当時愛読していた『地球白書』の版元であるワールドウォッチ研究所に直接、ボランティアの押し売りとも言えるハガキを駄目元で出したことがきっかけでした。ハガキを出したのも忘れかけていた頃、「レスター・ブラウン(アメリカの思想家、環境活動家)の来日にあわせて、アテンドをやってくれないか」と連絡がきたんです。環境の通訳をメーンにするようになったのは、そこからですね。

通訳は、ただ訳すだけでなく、その分野について勉強する必要があります。当時は、温暖化問題に入る前で、“Global warming(グローバルウォーミング)”という言葉を、日本語で何と訳すか、環境省の担当者と相談したりもしていました。



こうして、通訳で色々と見聞きしたことや、それについて調べたことを、「自分ひとりにとどめておくのはもったいない!」とメーリングリストで流すようになりました。当初18人に「時々情報を送信します」と始まったこの活動も「最初、時々って言ったのに、毎日くるじゃん」というクレームも頂くまでになり (笑)、次第に読者も増え、新聞から寄稿を依頼されたりと、活動が広がってきました。

――挑戦を重ねられます。


枝廣淳子氏: そこから出版にも繋がってきます。最初のメールニュースをまとめた本は、出版社の方がたまたまメールを読んでいらしたのがきっかけです。本ならば、自分の寿命よりも長い間、読んでもらえるだろうと思いました。環境問題にあまり興味のない人に、この問題の大切さをわかってほしいという想いで書きましたが、評判を得たのは環境問題に関心のある方からでした。

著書一覧『 枝廣淳子

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