戸根勤

Profile

1985年、「イーサネット?何それ」という時代に精力的にLAN構築などのネットワークについて学び、業務効率化のためのLAN環境をソフトウエア技術者ながら構築。その後ネットワーク業界に転進。外資系ネットワーク機器メーカーや国内ネットワーク・インテグレータで、製品開発や技術コンサルティングなどを経験。その間、会社勤務の傍ら講演や執筆活動を行っていたが、1998年に独立。コンピュータネットワーク関連分野を中心に執筆活動を行っている。代表作は初心者向けにネットワークのテクノロジーをわかりやすく解説した入門書「ネットワークはなぜつながるのか」

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なにかを学ぶときは、絶対に「省略」してはいけない



インターネットなどで当たり前のように使われている「ネットワーク」のしくみ。その全体像を、「ブラウザにURLを入力してから、サーバーがWebページの情報を返信してくるまでの過程を順番に追っていく」というユニークな構成で解説したベストセラー著書『ネットワークはなぜつながるのか』の著者である戸根勤さん。1986年にネットワークの仕事を始め、1997年に独立。現在、著作執筆のほか、講演活動などもおこない、ネットワークについて説明し続けてきた戸根さんに、本にまつわるお話を伺いました。

物事を学ぶときは、まず全体像から入れ!


――戸根さんは、「ネットワーク」に関する著書を多数出版されていますが、現在のお仕事、取り組みについて簡単にお伺いできますか。


戸根勤氏: どちらかというと書く仕事は今あまり活発じゃないですね。以前はけっこう書いていましたけど。今はそれよりも企業主催のセミナーや社内研修で講師をやったり、個別のネットワークの技術的なコンサルティングをしたりすることが多いですね。

――ご著書『ネットワークはなぜつながるのか』は、若手のエンジニアの方のバイブルになっておりますが、この本を書かれた経緯を教えて下さい。




戸根勤氏: その本を書いたのは、もう10年ぐらい前なのですが、当時、ネットワークの全体の動きを説明するというか解説する本はほとんどなくて。でも、ネットワークって、実はいろいろと階層に分かれていて、それぞれの段階においての技術の解説書はあるんです。

でも、「ネットワーク全部がどうまとまって、システムとしてどう機能しているのか」という全体を説明するものがない時代だったんですね。そこで、「そこを上手く説明してあげることは、実はすごく大切な事なんじゃないかな」と思って書きました。読者には新人のネットワークエンジニアの方を想定しています。いわゆる、エンジニアの卵みたいな人たちですね。

ただ、かなり専門的な内容ではあるので、ネットワークの知識がある人が読むとわかりやすいと思うんですが、ネットワークの知識が全くない人が読むと、相当しんどいかもしれませんね(笑)。

初心者は、専門用語を使って物事を覚えると失敗する


――実際に読んでみたんですけれども、世にある技術書の中ではとても分かりやすい言葉で書かれているように感じました。その辺りも気を使っていらっしゃいましたか。


戸根勤氏: 読んだ人が分からないとだめですからね。何事も、一つ一つ積み上げていかないとうまく積み上がらないんですよね。でも、その「ひとつ」を本当に真面目にやるのは、すごく大変な訳ですよ。人間って「自分が分かっていることは相手も分かっている」って思ってしまいがちなんですよね。だから、知らず知らずのうちに、説明でも話を端折っちゃうわけなんです。それに加えて、「この本は何ページに収めなくちゃいけない」とか、「何日で仕上げなくちゃいけない」とかいう問題もありますよね。そうすると、やっぱりいろいろ省略してしまうわけです。だから、そうならないように、ひたすら几帳面に、丁寧に、抜かさずに積み上げていくという事を心掛ける。相手がこちらの言いたいことが分かるように書くには、多分、この作業を徹底するのに尽きるんじゃないかしら。

――ただでさえ難解な構造について、これまた難しい専門用語で説明されると、専門用語を理解するのに必死になってしまって、肝心の中身のほうはまったく理解できないままで終わってしまいますもんね。


戸根勤氏: 「専門用語を使う」という行為は、まさに「省略」なんですよ。専門用語が分かっている相手なら省略してもOKだけど、そうじゃない相手には用語を使って端折っちゃだめなんですよ。

――たしかに、自分が理解していない言葉で覚えてしまうと、単に理解した気にはなるけれども、実際は理解していないことが多いですからね。


戸根勤氏: それからもう一つ重要なことは、説明するときは、表面上だけじゃダメなんです。これも当たり前のことなんですけど、説明する人が表面的にしかその物事を理解してなかったら、他人に教えるときも表面的な説明しかできませんよね。たとえば、ネットワークって階層的な構造なんですけど、それを端に「階層的な構造になっています」と説明するだけじゃだめ。「何で階層になっているのか」とか、その背景、目的とか、もっと総合的な全体像を伝えないといけない。

表面的なもので終わっちゃうと、単に「知っている」っていうレベルで終わっちゃうじゃないですか。それって、結局分かったようで分かってないんですよね。

知識はどうして大事かというと、本当はそれを使う場面が大事なわけですよ。技術者だったら「自分の知識を使って何か物を作る」とか、「壊れたものを直す」とか、そういうことしますよね。そういう場面で活かせない知識は、持っていても意味ないんじゃないかと思うんです。自分の技術に活かせる知識を身につけるには、ちゃんとした理解が必要だし、教える側は、それを説明しなくちゃしないといけないと思うんですよ。

著書一覧『 戸根勤

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