どんな仕事でも一番大切にしているのは「受け手の感情を考えること」
――戸根さんのように執筆や講演をおこなっている方は、「相手に情報を与える」ということを意識していらっしゃるわけですね。ちなみに、そうした点において、戸根さんが、普段から気を付けていることを教えて下さい。
戸根勤氏: うーん、どういう答えが面白いかな(笑)。……うん。そうなんですよ。結局、こんな風に「どういう答えが面白いかな」といったことは、よく考えていますね。
話し手がいると、聞き手がいるわけじゃないですか。そして、書き手がいれば、読み手がいるわけです。会社の仕事でも、売る人と買う人がいる。そうするとやっぱり、「受け手がどういう風に受け取るか」というのを意識しながら、仕事をしてますよね。これも、思いつきで言っていますけれども(笑)。
結局、自分が何をやるかということは、やっぱり「相手がどういう風にそれを受けるか」ということは、すごく重要。特に仕事の場合は余計にね。金を稼ぐためには。それには対価のお金を払ってもらわないといけないのでね。
――戸根さんは、いまフリーランスでお仕事をされているわけですが、いかがですか?
戸根勤氏: 大変なことはもちろんありますね。自分で金勘定をちゃんとしなくちゃいけないとか、自分で税金の計算までしなくちゃいけないとか。会社でも金勘定はありますけど、でも、自分と会社の場合では、その切実さが違うんですよ。当たり前のことですけど。
それから、自分で全部やらなきゃいけないとか、仕事だけじゃなくて家事までしなきゃいけないとか(笑)。大変なこともあるかもしれませんけど、そんなに悲観的に考えないで、まあ、楽しんでやればいいんじゃないですかね。
――もし嫌な事をやっていても、楽しくなるような動機づけをすると変わりますか。
戸根勤氏: たとえば、ゲームをやってて難しい局面にさしかかったときに、そこをどうやって突破するかって考える。そういうのって楽しくありません? まあ、自分自身が難しい局面に立たされたときには、そんな風にはいかないかもしれませんけど、そういう楽しみ方ができるといいですよね。
人生の野望は「自分に合ったフロンティアを探すこと」
――読書から、仕事、人生、生き方といった流れになりましたが、最後に、今後の野望を趣味の範囲も含め教えていただいてよろしいですか。
戸根勤氏: 野望ですか?あんまり野望ないですよ、そんなもの(笑)。
うーん。そうですね…。昔、僕がネットワークの仕事を始めた頃。もうずいぶん前ですね、80年代の中ぐらいですか。その頃って情報システムの作り方が今と全然違いましてね。ネットワークなんて無かったんですよ。だから、その当時は「ネットワークで既存の情報システムみたいなものをひっくり返してやろう」といった野望はありました。現実に、ひっくり返ったんですけれどもね。それって結構エキサイティングな話で、面白かったわけですよ。世の中がどんどん変わっていくわけですからね。
ただ、すでに僕らはそういう感覚を持っていますから、今の時代に野望って言われても「ない」という感じを受けるんですよね。
――すでに、フロンティアがなくなってしまいましたか。
戸根勤氏: まあ、比較の問題かもしれませんね。僕らの若い頃といまの時代の。ただ、フロンティアが出てきても育ちにくい環境っていう面もあるんじゃないかしら。特に気になるのは経済面ですね。やっぱり経済的な部分からの後押しがないと、いくら良い技術でも上手くいきませんからね。
フロンティアがなさそうに感じるときには、フロンディアを探すしかない。これからは、これから発展していく分野をいかに見つけるかっていうことが重要なんでしょうね。だから、「そういうフロンティアを見つけることが野望」ってことにしておいてくださいよ。
(聞き手:沖中幸太郎)
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